
この写真は、
中世ダブリンの見張り塔のひとつ、イゾルデ塔(Isolde's Tower)の基壇部分を上から見下ろしたもの。
昨日のパットとのウォーキング・ツアーで、普段は鍵のかかっているゲートを開けてもらい、見ることが出来たものです。
中世のダブリンは城塞都市でした。城壁の長さは3キロにも及び、31もの塔&城門があったそうです。18世紀、街の近代化に伴い取り払われ、現在はクライスト・チャーチ大聖堂の西側などにほんのちょっぴり残るのみ。
この塔は、1993年、アパートメントの建築工事中に発見されました。
13世紀半ばに建てられた見張りの塔で、リフィーを見晴らす北東の角に位置していたものです。

(史跡横の壁に描かれた図。白線が城壁、
イゾルデ塔は右上角の二重丸)
塔の壁の厚みはなんと3.9メートル!それだけ、町の防衛上、重要な位置にあったことがうかがえます。
現在、上から見下ろすことになるのは、
塔が建てられて700年経つうちに、地面の高さが約3メートルほど高くなってしまったため。クライスト・チャーチ大聖堂など中世からの建物が、しばしば現在の道路から低い位置にあるのはそのためです。
私はイゾルデ塔という名前から、この塔のことが以前から気になっていました。
イゾルデとは、アーサー王伝説にも出てくる『トリスタンとイゾルデ』(ワーグナーのオペラでも有名)で、コーンウォールのマーク王に嫁いでいったアイルランドのお姫様!マーク王との政略結婚がイヤだったイゾルデ姫、
コーンウォールへの船旅に同行したトリスタンに恋の媚薬を飲ませ、メロメロに…もともとトリスタンのことが好きだったらしいですが、現在にもこんな媚薬があったらな~と思わずにはいられない話です。
しかし、この2人の場合は禁断の恋。トリスタンは王の甥であり、さらにイゾルデの元婚約者を殺した人物…とまさにどろ沼。最後は2人とも、愛ゆえに息絶えてしまうのです。はあ~。
この伝説は、
『ディミッドとグローニャ』とか
『悲しみのディドラ』といった悲恋をテーマとしたアイルランド神話が元になっているといわれています。恋の媚薬が登場するところは前者に似ていますし、2人とも死んでしまうところは後者に似ている、といった具合です。
イゾルデ姫は、アイルランド南西部のウェックスフォードからコーンウォールにお嫁に行ったとされていますが、もしやこのダブリンのイゾルデ塔も何か関係しているのでは…と以前から気になっていた質問をパットにしてみたところ
「塔の名の由来は不明」だそうです。がっくり…。イゾルデ姫がこの塔に幽閉されていた…とか何とか、ロマンチックな答えを期待してたのに(よく考えてみれば時代が違うのですが)~。
パットいわく、
トリスタンはダブリン出身(!?)かもしれないそうですから、将来アパートメントを建設してたら、トリスタン塔な~んていうのが発掘されたりして!
イゾルデ塔は、近い将来、修復して再建の予定とのこと。上に建てられたアパートは壊してしまうんでしょうかね~。
それまでは通常ゲートから除くのみですが、イゾルデ姫を偲んで見てみようという方、場所は…
Temple Bar西側のEssex Street Westからリフィー川へ抜ける細い路地Exchange Streetへ入り、すぐ右側です~。
- 関連記事
-
コメント