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6ネイションズ、グランドスラム達成!

この週末アイルランドは大変な興奮の渦につつまれ、いまだ覚めやらず…といった雰囲気。
土曜日にウェールズで行われたラグビーのシックス・ネイションズ(Six Nations Championship=六カ国対抗)2009決勝戦で、アイルランドは強豪ウェールズを見事に破り優勝、61年ぶりのグランドスラム(全勝優勝)を果たしたのです!

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優勝杯をかかげるキャプテン・ブライアン・オドリスコル(Brian O'Doriscoll)と選手たち。写真向かって右はメアリー・マッカリース大統領、その横で拍手しているのは英国のウィリアム王子です(RBS 6 Nations Official Websiteより←試合のハイライトもこちらで見られます!)

個人的にもイベントフルだったこの週末。北アイルランドにいたので試合はベルファーストで観たのですが、翌日曜日は早々にダブリンに戻り、シティーセンターで開かれた選手たちのウェルカミング・イベントへ駆けつけました。
マンションハウス(Mansion House、ダブリン市長公邸)前に特設ステージが設置され、優勝杯を持って帰って来る選手たちをひと目見ようと、全国からかけつけた人々でドーソン・ストリート(Dawson Street)はあふれんばかり。

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この日の参加者約2万人!1,5時間前に行ったにもかかわらず、すでにステージ近くはいっぱいで、背の低い私にはステージの端っこが見えただけだけでした…

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ほんの数十メートル先に選手たちがいるというのに声しか聞こえず、かろうじて大画面に映る姿が見えたのみ。それでもみな大興奮で、緑の旗が一面に舞う光景は、まるでセント・パトリックス・デーがもう一度やってきたみたいでした!

ここ数年、あともう一歩のところで王座を奪われてばかりだったアイリッシュ・ラグビー。
もはや小さな勝利ではなく、歴史に残る大勝利を誰もが待ち望んでいただけに、選手たちのプレシャーはそれはそれは大きなものだったことと思います。
それを跳ねのけてこのほどの勝利を持ち帰った彼らの「強さ」、肉体的なスタミナはもちろんのこと、精神の強さには、ただただ感激するばかり。シックス・ネイションズの中でも、群を抜いていたと思います。

それにしてもすごかった、土曜日の試合…。今思い返しても、心臓がドキドキしてきます。
本当にハラハラし通しで、ほっと出来たのは、セカンド・ハーフが始まってすぐ、アイルランドが2つのトライを立て続けに決めたときくらい。オドリスコルのタッチダウンに続き、つかみかかろうとする敵陣を振り切って駆け抜けたトミー・ボウ(Tommy Bowe)の見事なトライ。このまだあどけないような顔の25歳が突風のごとく疾走する姿は、本当に気持ち良かった!
ファースト・ハーフはまったく点を取れなかったアイルランドですが、これで一気にウェールズに差をつけ14-6に。

ところがそれから、終盤に向けて波乱が。ウェールズにペナルティーを3回も取られ、1点差まで追い上げられしまうのです。
残り10分となり、アイルランドの秘密兵器、私のお気に入りのピーター・ストリンガー(Peter Stringer)も登場。小さい身体ですばしっこくタックルしては敵のボール運びを必死に止め、彼のおかげで少なくとも2回はウェールズのトライを防げたと思います。
ところがこのまま逃げ切れるか…と思いきや、終了間際でウェールズのドロップ・ゴールが決まり、まさかの逆転…。この時点でスコアは15-14、アイルランドに残された時間はなんとたったの5分ほど!

普通だったら、これで逆転されて終わり…となりそうなものですが、おそらく、私も含めてファンも選手も、アイルランドの勝利をはじめから確信していたような気がします。
ここで負けたら、悲願のグランドスラムもトリプル・クラウンも逃してしまうという大ピンチ。選手のプレッシャーを思うと、観ているこちらも心臓が爆発しそうでしたが、選手たちはまったくあきらめておらず、ここぞとばかりにアイルランドの底力を大爆発させるところがさすが。
ひとつのミスも許されない…といった緊迫した空気の中、じりじりとゴールににじり寄り、ついに残り時間2分、我らがヒーロー、ローナン・オガラ(Ronan O'Gara)へボールが回ったとたん、彼の力強いドロップ・キックが弧を描いてゴールを超えたのでした。(ちなみにローナンにボールをパスしたのは、ストリンガー!)

まさにジェットコースターのような展開。17-15となり、アイルランドの勝利は決まったようなもの…と思いきや、なんとここでもう一回ピンチが。勝利した今となってはこれが試合をよりドラマチックにしてくれたと思えるのですが、そのときは本当に恐ろしかった…。
もう終了のホイッスルが鳴る…というようなときに、まさかのペナルティーでウェールズにチャンスが回り、もしやこのキックで試合終了か…と一瞬絶望的に。が、逆転優勝を目指すウェールズの願いもむなしく、わずかにゴールに届かず、勝利の女神はアイルランドに微笑んでくれたのでした。

この最後の最後でミスをしてペナルティーを取られてしまったパディ・ウォレス(Paddy Wallece)という選手は、「もしウェールズの勝利で試合が終わっていたなら、移民するより他なかったでしょう」と今日の新聞で言われていましたが、本人も昨日のインタヴューで、「(もしあれで負けていたら)自分を撃ち殺してました」とコメントしていました。
誰よりも彼にとっては、本当に恐怖の一瞬だったことでしょう。この人のためにも、勝ってよかった。

今回のグランドスラム達成を宿願していた人のひとりが、前回のグランドスラムを達成した1948年チームの生き残り8人の内のひとり、ジャック・カイル(Jack Kyle)さん(83歳)。
この日ウェールズのスタジアムで観戦されていたカイルさんの姿は試合の要所要所で映し出され、かたずを呑んで見つめるその様子がなんとも印象的でした。選手たちはもちろんですが、この方も感無量だったことでしょう。

さらにシックス・ネイションズのグランドスラム達成のその日、アイルランドにはもうひとつの世界的なタイトルがもたらされました。
その日ダブリンでは、世界ボクシング協会(WBA)のスーパーバンタム級タイトルマッチが行われており、24歳ダブリン出身のバーナード・ダン(Barnard Dunne)が世界チャンピオンの座についたのです。

アイルランドの歴史に残る素晴らしい2つの勝利。
一夜明けた昨晩も、近所のパブではお祭り騒ぎがまだ続いており、誰もが素晴らしい週末だったね、と口々に話しながら本当に嬉しそうにしていました。

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本日のIrish Timesに付いてきた付録ポスター。本当にドラマチックな試合で、今夜もTVでハイライトを観てはまた涙してしまいました…

※シックス・ネイションズ2009関連の過去ブロググランドスラム達成まで…あと1週間!/6ネイションズ、アイルランド絶好調!

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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