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グラスネヴィン墓地めぐりツアー

ガイド仲間のシィネード(Sinéad)と、グラスネヴィン墓地(Glasnevin Cemetery)の見学ツアーに参加してみました。
グラスネヴィン墓地は、120エーカー(48ヘクタール)という広大な敷地に150万人が埋葬されているという国を代表する大規模な墓地で、19世紀初頭以降のアイルランドの歴史上の人物が数多く埋葬されています。

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グラスネヴィンのランドマークとも言えるのが、アイルランド・カトリック解放の父ダニエル・オコンネル(Daniel O'Connell, 1775–1847)の墓所。ラウンドタワーを模したもので、高さ54メートル、8年間を費やして完成(オリジナルのラウンドタワーは通常25~30メートルほどですから、それよりずっと高い!)

上述のオコンネルによる解放令(1829年)以前のアイルランドには、カトリック教徒のための正式な墓地はありませんでした。
多額のお金を支払えばプロテスタントの墓地へ入ることが出来ましたが、それが出来る人はほとんどおらず、町の西端のブリーズ・エーカー(Bully's Acre…キルメイナム刑務所とMOMAの間)と呼ばれる場所に埋葬するより他なかったのです。

1832年、オコンネルの功績により、カトリック教徒のための初の共同墓地として造られたグラスネヴィン墓地。正式にはプロスペクト墓地(Prospect Cemetary)といい、典型的なビクトリア様式のガーデン・セメタリーです。
それまでは教会の敷地を墓地とするケースが主流でしたが、この時代からこのような庭園風の共同墓地が造られようになり、その流行にのっとたものでした。

墓地ツアーのガイドは、グラスネヴィン専属の歴史家として知られるシェーン・マックトーマス(Shane MacThomais)さん。
19世紀に盛んであったケルティック・リバイバルの影響が見られる墓石を、詳細に説明してくださっています。

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ユーモアを交えた詳細なガイドぶりで、グラスネヴィンの歴史はもちろんのこと、墓地の中の偉人たちのことを活き活きと語ってくれます!

ツアーでは、オコンネルの霊廟内へも入ることが出来ます。

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この中にオコンネル自身と10人以上の子孫たちの棺が…

そして、歴史上の偉人たちの墓所が次々に登場。

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オコンネル以降のアイルランド解放運動の立役者、チャールズ・スチュワート・パーネル(Charles Stewart Parnell, 1846-1891)のシンプルな墓石。パーネルのウィックロウの地所アボンデイル・ハウス(Avondale House, Co. Wicklow)から運ばれた花崗岩とのこと。葬儀には12万人が参列したそうです

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アイルランド独立運動の指導者であり、初代ティーショック、のちにはアイルランド大統領となったエイモン・デ・ヴァレラ(Éamon de Valera, 1882-1975)の墓所

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こちらはアイルランド人が敬愛する不良(?)作家ブレンダン・ビーハン(Brendan Behan, 1923–1964)の墓所。墓石には穴があいていますが、ここにはビーハンの像があり、盗まれてしまったそうです

ツアーはさらに、墓地の奥の方の古い墓石群が崩れかけているエリアへ。

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墓石が沈んだり倒れたりして、大変なことに…

グラスネヴィン墓地は、現在政府の支援により、大々的な修復工事の真っ最中。
さらに2012年の完成を目指して、ビジター・センターを建設中。将来的に、観光収入により墓地の維持を行っていく計画だとのこと。
来たる2016年のイースター蜂起100周年を目指して、大きなプロジェクトが進められているようです。

墓地めぐりをしながら、当時のお葬式の風習など、さまざまな興味深い話をしてくれたガイドのシェーン。
例えば、死亡率が高かったのは1~7歳と30~40歳で、1930年代に国民健康保険制度が出来るまでは一般の人々はろくな治療を受けることが出来ず、今だったら薬局の薬で治療できるようなことで簡単に命を落としていたこと。
1930年代までは、女性はお葬式へは参列しなかったこと。
ダブリンでは今も遺体は午前中に墓地へ運び、正午までに埋葬を終わらせる慣わしがあるが、それはグラスネヴィンへ遺体を運ぶ途中に墓堀り人たちがパブでひと休みしてそのまま酔っ払ってしまい、翌朝墓地のゲートに棺がそのままになっていた…という事件がきっかけとなって定められたきまりであること…など。

そして、墓地を囲う塀にはいくつかの見張り塔が残っていますが、墓泥棒を見張るためのものだったそうです。

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ツアーもそろそろ終わりに近づき、墓地めぐりのハイライトへ。
グラスネヴィンいちばん人気の、マイケル・コリンズ(Michael Collins, 1890-1922)の墓所です。

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アイルランド独立の際の代表者であり、それに続く内戦のさなかに若くして暗殺された英雄コリンズ。今でも花を手向ける人々が絶えません…!(ちなみに後ろの工事中のものが、建設中のビジターセンター)

亡くなって80年以上も経つというのに、この人気はスゴイ…。毎週お花を持ってくるファンも含め、花を捧げにくるのはほとんどが女性とのこと。
バレンタイン・デーには、毎年真っ赤なバラの花でいっぱいになるそうです…!

そしてコリンズといえばこの人、コリンズの死によって引き離されてしまった婚約者のキティ・キアナン(Kitty Kiernan, 1892 –1945)。
なんとこの2人の墓所は目と鼻の先、ほんの数メートルの距離なのです。

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映画『マイケル・コリンズ』ではジュリア・ロバーツが演じていましたね。ちなみに、コリンズの友人ハリー・ボーランド(Harry Boland, 1887–1922)もグラスネヴィンに墓所があります

グラスネヴィン墓地の興味深い点は、生前に結ばれなかった同志、敵味方に分かれて戦った同士でさえも、その区別なく、すぐご近所に眠っていたりすること。
それこそ歩いていると、あっ、この人が…!と今はダブリンの街中で銅像になっている人などにポコポコ行き当たりますが、墓所はエリアによって値段の差があるものの、それ以外の理由でのエリア分けは全くないため、歴史上の著名人も、一般人も、左翼も右翼も、首相も政治犯も…みな同じセメタリー内にいる点がとってもユニーク。
天国でコリンズとデ・ヴァレラは一体どんな会話をしているのかしら…などと、ついつい思い巡らしてしまいます。

そんな想像をたくましくして歩いていると、「死人に口なし」とは言うものの、このグラスネヴィン墓地に限っては、アイルランド人たちの雄弁な語りが今もひしひしと聞こえてくるかのようですね。

グラスネヴィン墓地ツアー(Tour of Glasnevin Cemetary
Finglas Road, Dublin 11.
Tel: 01-8301133
毎週水・金 14:30~/料金:8ユーロ
行き方:シティーセンターより13、19、19Aのバス(O'Connell Streetより)、40、40aのバス(Parnell Streetより)

☆2009年イースターには、特別無料ツアーが行われます!☆
2009年4月12日(日)・13日(月・祝) 11:00、12:00、14:00、15:00

コメント

ジョイスの『ユリシーズ』にプロスペクト墓地として出てくる所ですね。行ったことがないので興味津々。オコンネル、パーネル、コリンズのお墓があるくらいしか知りませんでしたが、150万人も埋葬されているとはすごい規模ですね。
ナオコさんのページから「グラスネヴィン墓地ツアー」に飛んでみたら、墓地マップが出てきて面白い。クリックすると有名人のお墓の場所が示されましたが、オコンネルとデ・ヴァレラのお墓がすぐ近くにあることが分かりました。
コリンズとキティ・キアナンのお墓がすぐ近いと聞いて、なんだか一安心です。

シャーさんへ

そう、『ユリシーズ』6章に出てくるその墓地です!
墓地マップ、面白いですよね。墓地なのにこんな呼び方はおかしいですが、ある意味「生きた博物館」のようです。

初めまして。グラスネヴィンを検索していて、こちらを見つけました。
初のコメントなのに、不躾かと思うのですが質問があります。

私は、アイルランド出身のBoyzoneのファンです。先月、メンバーのStephenが亡くなったことは、今でもショックです。機会を見つけて、ダブリンを訪れて、彼らのゆかりの地めぐりができたらと思っています。

もし、Stephenのお墓があるなら、そこへも行きたいと思うのですが、私が知っているのは、グラスネヴィンで彼が火葬された、というところまでです。グラスネヴィンに、彼のお墓はあるのでしょうか?
日本の感覚だと、火葬後、お墓に納骨をして、お墓参りをするという風になるかと思うのですが、アイルランドの慣習はそれとは違いますか?
ご存知でしたら、教えていただけると嬉しいです。ネットで検索しても、全然わからないのです…。

半年以上も前の記事にコメントを付けてしまい、申し訳ありません。

Stephenのお墓について

サキさん、コメントありがとうございます。

取り急ぎ、ネット検索してみました。おっしゃるように、グラスネヴィンで火葬された…というところまでで、お墓はどこにあるのか?ということはどこにも触れられていないようですね。
…が、こちらのサイトによると、遺灰はパートナーのアンドリューがロンドンに持ち帰った…と書かれています。

http://www.celebrity-mania.com/news/view/00010346.html

アイルランドでは通常は土葬なので、すぐに墓地に埋葬されるのが普通ですが、彼の場合は事情が違うようですね。
土葬の場合は、亡くなってから一年後に墓石を立てる習慣があるようです。もしかしたら、Stephenのお墓もまだ出来ていないのかも?

もしも、さらに詳しいことがわかったら、ブログでお知らせするようにしますね!

ありがとうございます

早速のお返事&検索までして頂いて、ありがとうございます!本当に嬉しいです。

今のところ、彼のお墓はなさそうな感じですね…。
1年後に墓石をたてるとは、やっぱり国によってずいぶん習慣が違いますね。
もし情報が耳に入りましたら、教えてください。よろしくお願い致します。
自分でも、引き続きチェックしてみます。

どうもありがとうございました!これからも、ブログ楽しみにしています。

Re: ありがとうございます

こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします!

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プロフィール

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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。
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