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ジョイスの「ダブリン」とフィル・ライノットの「ダブリン」

明日から始まるTVロケは、ジェイムズ・ジョイス(James Joyce)がらみ。
ジョイスの作品はいずれもダブリンが舞台になっており、ダブリンに実在する地名、ストリート、お店、パブなどが、それこそダブリンの観光ガイドであるかのように、詳細に描かれています。

そんなジョイスの歩いた(もしくはジョイス作品の登場人物たちが歩いた)ダブリンを撮影するのですが…、ひとつ困ったことは、現在のダブリンは、ジョイスの時代とは100年という時間差があるということ!

例えば、『ダブリンの市民』の中の『イーヴリン』に出てくる「北埠頭の駅(North Wall Station)」。
ここから列車に乗るシーンを撮影出来れば・・・とのディレクターさんのご希望だったのですが、この路線は1922年に旅客サービスを停止、その後、貨物列車のみ走っていましたが、それも2005年に停止。
(それに代わるものが、現Dockland Stationですが、オリジナルの場所ではありません。)
当時の駅舎は今も残されていますが、このエリアは1980年代後半よりドックランド開発地域として新開発が進めらてきた地域なので、ジョイスの時代とはかなり雰囲気が異なることでしょう。

中には、一度なくなったけれど、ちょっと姿を変えて復活したモノもあり。
同じく『ダブリンの市民』の中の『出遭い』というお話で、少年が渡し舟に乗ってリフィー川を渡るシーンがあるのですが、これなら、100年前と似た体験が出来るかも!
昔ながらのリフィー・フェリーは1986年に姿を消していますが、昨年から新しく登場した黄色いボートのリフィー・フェリー(過去ブログをご参照ください)があるので、これに乗るところを撮影しましょう~、と話がまとまったのでした。

それにしても、昔のフェリーってどんな舟?当時の港湾の様子はどんな風だったの?…と気になりますよね。
そうしたら、なんと、意外なところに見つけました!

実は今日、携帯電話の調子がずっと悪かったので、新しいのを買ったんですね。
早速、音楽をダウンロードして、着信音をフィル・ライノットの「Old Town」にしてウキウキ。そうしたら、はっ!とひらめいたのです。
そう、この「Old Town」とはダブリンのことなのですが、フィルがダブリンの街をあちこち歩きながらこの曲を歌う有名なVTRがあって、その中に、昔のリフィー・フェリーが登場しているではありませんか。
ご興味があればぜひご覧下さい。ダブリン通ならお馴染みの景色が次々に出てきて、曲の後半、フィルがフェリーに乗ってリフィー川を渡っていくのです。



「Old Town」は1982年の曲。するとこのフェリーとて、ジョイス時代のものと同じものかどうかわかりませんが、ドックランドの開発が顕著になったのはほんのここ10年位程のことなので、それを考えると、少なくとも今よりは何もかもがジョイスの頃に近いはず。
そして、フィルの乗るフェリーの背景にちらりと見える街や港湾の様子の、なんとまあ今と違うことか…!ジョイス作品の面影の残る「ダブリン」としては、ケルティック・タイガー直前の、このフィル・ライノット時代がほぼ最後だったかもしれません。
フィルの歌った「Old Town」そのものが、今や「Old Town」になってしまったんですね。

20世紀初頭のジョイス、70~80年代のフィル・ライノット、そして今のダブリンはやっぱり『Once』…でしょうか。
どの「観光ガイド」を参照してダブリンを歩くかによって、見えてくる時代が違います。
自分が普段生きているのとは違った時代の「ガイド」を見ながら、ダブリンでタイム・スリップしてみるのも面白いかもしれませんね!

joyceandmobile
「Dubliners」と「Old Town」の着メロ電話。明日からのロケに必須なもの2つ

※『ダブリンの市民』は岩波文庫(結城英雄・訳)を参照しました。
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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