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ローレンス・スターンとアンソニー・トロロプ(ティペラリー旅行9)

先日ご紹介したクロンメルの町の、文学コネクションについて補足情報です。

毎年9月にLiterary Weekendが開催されているクロンメルは、さまざまな文学者ゆかりの地として知る人ぞ知る町。中でもよく知られているのは、ローレンス・スターン(Lawrence Sterne, 1713-68)と、アンソニー・トロロプ(Anthnoy Trollope, 1815-82)の2人のイギリス人作家でしょう。

sterneplate
(ウェスト・ゲートにはめ込まれていたスターンの碑)

ローレンス・スターンに関しては、この著名な作家の生誕地がクロンメルというのは、ただの偶然。イギリス人将校であった父親の駐屯地がクロンメルだった時に、そこでスターンが生まれたというだけのことで、イギリスで教育を受け暮らしたスターンにとって、その後の人生とクロンメルは何の関係もありません。

私たちがこの旅行に行っているとき、ダブリンのIFI『A Cock and Bull Story』という映画が上演されていました。折りしもそれが、スターンの人生と彼の著作『トリストラム・シャンディ(Tristram Shandy)』をテーマにしたもの。旅行前に見に行こうとシュネードが誘ってくれたのですが、予定が合わず私は見に行けませでした。

一瞬、カクテルの名前か何かかと思ってしまった『トリストラム・シャンディ』という作品、私が文学部の学生だった頃に耳にしたことがあるようなないような…。
「どんな作品なの?」という私の質問に、博学のシュネードやジョンが「う~ん、xxに○○で△で□」というような難しすぎる説明をしてくれ、余計に混乱。唯一、端的に答えてくれたのがジェリー。
「ナオコ、あれは18世紀の『ユリシーズ』みたいなもんだよ」
じゃあ、私の手に負える作品ではなさそう~。どうやら翻訳があるようなので、日本語で読んだ方が早そうです。

いちおう生誕地であるクロンメルのシュア川沿いに、こんなモニュメントを発見。
この穴の空いているところをのぞいてみると…

sternemonument


じゃ~ん、ローレンス・スターンの顔が見える仕掛け!

sterneface


一方、もう一人のクロンメルゆかりの作家アンソニー・トロロプにとっては、ここクロンメルは彼の人生の転機となった場所彼が文筆活動を始めた場所なのです。

ロンドンの郵便局員だった若きアンソニー・トロロプは、26歳でアイルランドに赴任、以後17年間アイルランドにとどまりました。バナハー(Banagher)の小さな郵便局勤めをした後、結婚してクロンメルへ。
ここで忘れてならないのが、19世紀の郵便王ビアンコーニ(Bianconi)の存在。この人、当時需要が高まっていた駅馬車&ハイヤー・ビジネスで富を築き、アイルランドに帰化したイタリア人。クロンメルを拠点に郵便業務も専売しておりました。(関連写真はこちらのブログ)トロロプがクロンメルに住んだ1840年代というのは、まさにビアンコーニ印の郵便馬車がアイルランド各地を走り回っていた頃。郵便の需要が高まる中、トロロプはのちに検査官に昇格、巡回郵便検査官(って何する人?)として、エジプトやアメリカへビジネス・トリップをするまでになります。時代の波に乗り、19世紀のビジネスマンになっていったのです。

さて、イギリスにいた頃のトロロプは、図体ばかりがデカく、暗く冴えない性格だったようです。ところがアイルランドに来て性格も明るくなり、アウトドア派に一転。キツネ狩りが大好きで、アイルランドの田舎を満喫したようです。

クロンメルでは、余暇に狩りをし、精力的に小説を書き(トロロプが機械的なほど毎日決まった量を書き続けたことは有名)、さらに2人の男の子に恵まれたトロロプ。まだ郵便検査官としても作家としても駆け出しの時期ではありましたが、幸せな時期をクロンメルで過ごしたようです。

1847年、トロロプ32歳の時に出版された処女小説『The Macdermots of Ballycloran』は、アイルランドに題材をとったもの。シュネードも、ジョンも、ジェリーも、デミアンも、読んだことがあるそうです。さすが。

トロロプが住んだ家は、メイン・ストリートに面した現在薬局となっている建物…と前夜にローカルの歴史家の女性から情報を入手したものの、特定できませんでした。残念。

ローレンス・スターンもアンソニー・トロロプも、日本では大学の研究レベルで取り上げられるような作家で、あまり一般的ではないかもしれませんね。トロロプ作品に関しては、数少ない和訳はほぼ絶版のようですし。
仕事もキャンセルになったことだし、頑張って原書で挑戦してみようかな~。

★ガイドたちのティペラリー研修旅行
1.オタクなガイドたちの研修旅行
2.アイリッシュ・サイダーの故郷へ
3.聖パトリックの泉
4.ヒツジに注意!
5.クロンメルのミネラ・ホテル
6.ケア城とスイス・コテージ
7.ヒツジ・チーズの農場へ
8.ハチミツの草原クロンメルを歩く


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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。
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