友人でガイド仲間のシィネード(Sinéad)は、世界のマイノリティーの研究家。
ガイド業の他に、移民の通訳や、大学や講座でのレクチャーなどもしばしば行っています。
今日は、私たちも数年前に受講したナショナル・ツアーガイド養成コースで、シィネードが「トラベラーズ(travellers)」について講義をするというので、私も聴講の許可をいただき参加させてもらいました。

レクチャーの終わりに、受講者からの質問を受けるシィネード
「トラベラーズ」というのは、アイルランドにおける社会的マイノリティー集団。
アイルランド国内に約25000人いる他、かつての移民により英国やアメリカ(サウス・カロライナ、テキサスなどに多い)にもそのコミュニティーを広げています。
定住しない(キャンピングカーでの移動生活)、独自の言語を持つ(アイルランド語から派生したと言われる)、いとこ同士など近親間での結婚が多い、男の子は特に12歳くらいで学校をやめる…など独自のライフスタイルを保持する興味深い人たちですが、同時に、現代の一般的な社会生活に適合しない面も多いため、なかなか理解されにくい人たちでもあります。
本日のシィネードのレクチャーでは、スライドで彼らの写真を見せてくれたり、言語的特長、シィネードが彼らと交流しながら聞いて作り上げた家系図、トラベラーズの著名人、トラベラーズが出てくる映画やドラマ…などなど、さまざまな角度からガイディングに役立つような興味深いインフォメーションが披露されました。
中でも大変興味深かったのが、トラベラーズの発祥について。
一般的に信じられているのは、「1840年代のアイルランドの大飢饉の際に家や職を失い、屑物拾いをしながら移動してまわるようになった」という話。「ティンカーズ(tinkers=ブリキ集めの人々、渡り職人)」と呼ばれることもある彼らの呼び名はそこから来た、というのが定説となっています。
ところが、アイルランドでは錫は産出されませんから、ブリキ缶というのは当時は高級品。それが屑としてゴミにされていたという事実はなかったのです。
また、大飢饉以前の1800年代初めには、すでにアメリカにトラベラーズのコミュニティーが存在していました。ということは、彼らの発祥は飢饉の時ではなく、それ以前にさかのぼるということに…。
それでは発祥はいつなのか、彼らの民族的オリジンはどこにあるのか、ということになりますが、それについては記録がないので確かなことはわからないそう。
ただ、ロマの人々(ジプシー)の発祥が1400年代頃であり、彼らと文化的に影響しあっていることを考え合わせると、アイルランドのトラベラーズもその頃に同様の経緯で発祥したのかもしれない、とのことです。
私もお世話になったツアーガイド養成コースの担当教官の特別な計らいで、飛び入り参加させてもらった今回のレクチャー。
かれこれ6年ほど前になりますが、私もシィネードも週に3回ここの教室へ通って、公認ガイド試験の勉強に励んでいたものでした。その時に苦楽を共にした仲間とは、今でも仲良し。本当にいい経験でした。
今年のナショナル・ツアーガイドの最終試験は2週間後だそうで、受講者の皆さんは真剣そのもの。皆さん晴れて合格して、今度はツアー中にお会いできますように!
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