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『ONCE』主演の2人・グレンとマルケタに会う

昨日の監督のインタビューに続いて、今日は『ONCE』の主演のお2人、グレン・ハンサード(Glen Hansard)とチェコ人のマルケタ・イルグロヴァ(Marketa Irglova)にお会いしました。

glenmarketa
終始仲良しさんのお2人。映画撮影後、私生活ではカップルに~

ギターを背中にしょって現れたグレンは、映画の中そのまま。(映画に出てくる例の穴の空いたギターです!)
一方、プラハのハイスクールを卒業したばかりの若干19歳のマルケタは、映画で見るよりボーイッシュな印象。ごく普通の堅実なお嬢さんで、街で見かけても、まず彼女とはわからないでしょう。

写真撮影に続いて、たっぷり2時間のインタビュー。
もともとこの映画は、キリアン・マーフィーが主演する予定でした。
キリアンの相手役として、音楽の出来るチェコ人の女の子を探していた監督のジョンに、マルケタを紹介したのがグレン。グレンとマルケタは、長い間、マルケタの家族ぐるみの友人関係でした。
プラハの普通の高校生だったマルケタに、「キリアンと映画に出ない?」と電話をかけたグレン。話はとんとん拍子に決まったものの、今度は制作費の削減などの問題が持ち上がり、結局、キリアンは役を降りることに。

ダブリンのバスカーの物語ということで、バスキング歴の長いグレンから、さまざまなエピソードを聞いて脚本を書いていたジョン。
では、いっそのこと、グレン本人にその役をしてもらったら…?ということになり、グレン本人の意思とは関係なく(笑)、撮影がスタートしてしまったようです。

俳優ではない2人が主演するこの映画、セリフが覚えられず、思うように演技が出来ず、脚本からどんどん離れてアドリブになってしまったこともしばしば。
予定した多くのセリフが削除され、音楽に取って代わり、結果的に「音楽映画」となったようです。

例えば、2人がダブリン・バスに乗って、グレン演じる男性の家へ行くシーン。
画面が揺れているのは、グレンの即興の「掃除機の歌」が可笑しくて、カメラマンが笑ってしまったからだとか。

また、男女のロマンスの部分は監督のジョンの実体験、バスカーの人生の部分はグレンの実体験が反映されているとのこと。
グラフトン通りでバスキング中にお金が盗まれるシーン、街でバンドのメンバーを集めるシーン、銀行でお金を借りるシーンなどは、「いつの日か、ボブ・ディランになってやる~」と音楽一途に生きていた、グレン・ハンサードの下積み時代の実話だそう。
『ONCE』がささやかでロマンチックな作品ながらも、どこかリアリティーがあるのは、そのためだったんですね。

グレンの話で印象に残ったことは、この映画は現在のダブリンでありながら、「ケルティック・タイガー」の要素を全く排除した作品であること。
すなわち、ジョンもグレンも、ケルティック・タイガーによって変わったダブリンを、「自分たちのダブリン」と認めていないのです。
私自身、この春、この作品を映画館で観たとき、なんだか10年くらい前のダブリンを見ているような気がして違和感を感じたのですが、それこそが、彼らの意図するところだったようです。
それでも古臭い感じはせず、とってもアーティーな作品に仕上がっているのは、30代後半になったジョンとグレンの青春のバイオグラフィーに、異文化・異世代の不思議な女の子・マルケタの存在がピリリと効いているからなのでしょう。

さらに彼らのバイオグラフィーはスクリーンの中だけで終わらず、グレンとマルケタという異文化・異世代カップルを生み出す形で続いていったというのが興味深い。
そこには本人たちの意図するところとは無関係に、21世紀のダブリンのストーリーが体現されてしまったかのような不思議さがあります。

それにしても、グレンが昔かたぎのちょっと優柔不断で熱いアイリッシュであることは映画からもうかがえますが、マルケタの19歳とは思えぬクールで落ち着いた様子には、取材陣一同、オドロキ。
ノーメイクにセーターとジーンズ姿で、グレンに寄り添うにように現れて、挨拶もそこそこにテーブルの上の角砂糖をほおばり始めたマルケタ。
「家には粉砂糖しかないから珍しいの」
と、とっても嬉しそう…。
ところが、いったんインタビューが始まると、その英語の流暢なこと、賢い話ぶりに、一同「ほぉ~」と感心。
まだ若いのに、自分をしっかり持った大変素直で賢いお嬢さんなのでした。

2人は今後も俳優になるつもりは全くないそうで(グレンはハリウッドからのさまざまなオファーを断り続けているそうです)、今回の映画出演で、自分たちの音楽が評価されたことが何より嬉しかったとか。
『ONCE』のような、たった3週間で撮影されたロー・バジェット映画が成功を収めたことで、この世界の敷居が低くなり、より多くの人がチャレンジするようになってくれたら…とそんな気持ちだそうです。

今回のインタビュー記事は、女性誌・音楽関係各誌に掲載される予定。
また、グレンとマルケタのお2人は、10月下旬にはプロモーションで来日するそうですから、日本のメディアでもお目にかかれるかもしれませんね!

コメント

映画Onceについて検索していて拝見しました。
素敵なページ見つけちゃった!!と喜んだのもつかの間、映画のラストについての記述があったのには驚きました。完全なネタバレですよね!?!?!?!?かなりがっかりしてしまいました。。。日本ではまだ公開されていないのですし、気を使っていただきたかったです。他にも被害が広がらないよう、その部分の訂正を強くお願いいたします。

Rockwellさんへ

ご指摘ありがとうございます。
映画の筋、結末、またインタビューの詳しい内容(これから雑誌に出るものなので)については、予告編等でメディア紹介されていること以上のことは、記述しないように気をつけたつもりでしたが、なるほど、ここの部分はRockwellさんのおっしゃる通り、という箇所を2箇所ほど削除いたしました。
ご迷惑をおかけしてすみませんでした。

遅ればせながら

“Once”, わたしもちょっと前に観ましたよ! 良かったあ~。
そうか、音楽映画になったのは偶然のたまものだったんですね。あと、「ああ、やっぱりダブリン2000年当時とあんまり変わってないや」と思ったんですがそういう意図があったんですね。見事に騙されました(笑)
ところで、バスキング中にお金を盗もうとする男の言ってることが全然わからなかったので自分で自分にがっかりしました。アイルランド訛りの英語には慣れてたはずなんですが・・・あんな難しいのはドネゴール以来です。どこの地方の人か、Naokoさんご存知じゃないですか? 


Kさんへ

バスキング中のあのシーン、あんまり細かく覚えていないのですが・・・。
DVDが手元にあるので、今度もう一度、見てみますね!

はじめまして。ONCEで検索して、たどり着きました。
ボクはThe Framesの大ファンで、彼らのCDをネットで見つけた買ったりしています。今回、東京国際映画祭で初来日して、本当に感激しました。
こちらのインタビューの内容も、初めて知る内容が多く、興味深く何度も読んでます^^

☆クルクルパーさんへ

こんにちは!
☆クルクルパーさんのブログ、早速、拝見させていただきました。グレンとマルケタの日本での様子が見られて、なんだか安心(って、私がすることないのですが…笑)しちゃいました。ありがとうございます。
特に、若いマルケタが、日本でお人形さんみたいに可愛い服とか着せられちゃうのかな…とちょぴり懸念していたのですが、まったく心配無用だったみたいですね。
それにしても、音楽、いいですね~。You Tube堪能させていただきました。

Ksannhe

Kさんへ
お返事が遅くなってすみません。
OnceのDVDをもう一度見てみました。冒頭のお金を盗む男は、まさしくコテコテのダブリン下町訛りです。
「欲しいなら盗まないで言えよ」「・・・じゃあ、5ユーロ」と言って5ユーロもらい、落ちてたお金はちゃんと拾って返すところが面白いですよね。私も以前、ホームレスの人に落としたお札を拾ってもらったことがありました(笑)。

>>naokouideさん
わざわざすみませんでした。m(_ _)m
こちらのブログにまで書き込んでいただいて本当にありがとうございます。
そんな展開だったんだ・・・道理で途中から急に和んでるわけですね。やっと謎が解けました。ダブリンまた行きたい・・・

Kさんへ

こちらこそ、あっちこっちに書き込んですみません。
ぜひぜひ、ダブリン、また来てくださいね!
私もカナダ、行きたいです。

いい映画でした。

 二人の歌った「if you want me」を聴きたくて映画をみてみました。
 耳に心地よい音楽、微妙に揺れるカメラワーク、ゆったりとした流れを感じるいい映画でした。
 とてもじょうずに映画を紹介されていますので、よろしければ、このブログを案内させてください。

Re: いい映画でした。

beatlesdaisuki2007さん、コメントありがとうございます。
古い記事を読んでくださり、嬉しく思います。

よろしかったら、案内してくださるページのURLを教えていただいてもよろしいでしょうか?

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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。
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