プロフィールの石像の写真について、「あれは何ですか~」「どこですか~」と、これまでに何人かの方からご質問をいただきました。新年に少々関連のある話題でもあるので、今日はちょっと解説を。

この写真です(プロフィール写真を変えてしまったので…2006年12月)
この石像は、
カウンティー・ファーマナ、アーン湖(Lough Earne)のボア・アイランド(Boa Island)にあります。
アーン湖畔はアイルランドの湖水地方とも呼ばれ、連結する上下2つの湖に154の小島が浮かぶという美しい場所です。
ボア・アイランドは、島とは言っても、A47号線で本土と地続き。
エニスキレン方面から来た場合、道路の左側を注意していると、"
Caldragh Graveyard"のサインポストが出てきますので、そこを右へ入ります。本当にここでいいの?と疑いたくなるような、牛小屋へ続くぬかるんだ道…その行き止まりにある小さなゲートが、石像のある古い墓地への入り口。
近くのラスティ・モア・アイランド(Lusty More Island)から移されたちょっと小さめの石像と一緒に、倒れた墓石の中にたたずんでいます。

(2005年11月撮影・保存のためか、以前はなかったテントのようなものが張られていました。)
この石像は、
ヤヌス像(Janus figure、英語ではジェイナスと発音)と呼ばれています。
ヤヌスと言えば、そう、80年代のあのコテコテ大映ドラマ『ヤヌスの鏡』のヤヌスです!ガラスが割れて、変身~、2つの顔を持つ2重人格少女のお話でしたね~。
ボア・アイランドのヤヌス像も、表裏2つの顔を持つことから、その名で呼ばれているわけです。
ヤヌスというのは、もとは
ローマ神話の入り口や門・扉の神様。境界線に立ち、表裏2つの顔で、物事の始まりと終わりを見据えています。
新しい年の始まりを入り口に例え、
年の始めを司る1月の神様として、Januaryの語源にもなりました。
ボア・アイランドのヤヌス神は、
東面が男性(シンボルあり)、西面は女性。プロフィールの写真は、女性サイドです。
(両面の写真がきれいなものとしては、
このサイトがおススメ。)
個人的にこの場所がとても好きなこと、また初めて見た時に、石像の顔がちょっと私っぽい…!と思ってしまったことから、プロフィール写真にしたまでです。
石像の起源や解釈に関しては、諸説あります。
私の友人で地元ベリークの歴史家ジョンは、
石像とローマのヤヌス神との関連を強く否定しています。だって
アイルランドには、ローマ人は来ていないのですから。
身体に対して大きすぎる頭、大きくうつろな目、正面で交差する両腕、腰に巻かれたベルトなど、そのスタイルは、ケルト独特のもの。
2000年以上前のもので、おそらく、ケルトの戦士、または豊穣の神ではないか、とのことです。
頭が大きいのは、
ケルト人の人頭信仰の表れ。
頭には大切な精霊が宿ると考えていたケルト人は、戦場で敵の武将の首を取り、そこから脳髄を取り出して石灰と混ぜてボールを作り、家宝としていました。
また、
ケルト神話のとの関連を指摘する人もいます。
大きく見開かれたうつろな目から、魔眼で敵を睨み殺すバロール神ではないか、という人もいます。
はて、二つの顔を持つ謎の石像、いったい何を意味しているのでしょうか…?
私がこの石像を訪れるたびに感じるメッセージは、
物事の始まりと終わりは、実は遠いようで近くにあるのではないか、ということ。遠く感じられる
ゴールは、案外、スタート地点のすぐ後ろで背中合わせに待っているものなのかも。
また、
人間の生と死、善と悪、優しさと厳しさ…など、相反すると思われている二つの観念も、本当はヤヌス像のように、背中合わせなのかもしれない…と思ってみたりもするのです。
豊穣の神様でもあるこの石像、
地元ではお地蔵さん的存在として愛されているようです。石像の脇には、お賽銭がこんなにいっぱい。

(2005年11月撮影)
アイルランドで年越しをすることになったら、私はこのヤヌス像に二年参りしたいな~といつも思っているのです!!
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コメント
Pearl
物事の相反する二面性とか、遠くて近いものとか旅のゴールは身近にあるとか、そういうのって「ダ・ヴィンチ・コード」みたいです。私がまだその世界から抜け切っていないせいもあるけれど、「ダ・ヴィンチ・コード」の最後の部分を読んで感じたことが、naokoguideさんのブログにそのまま載っていたのでビックリ。(そうは言いつつかなり飛躍もしている。)宗教的という点で共通することがあるのかもしれないですね。
2006/01/05 URL 編集
アンナム
2006/01/06 URL 編集
naokoguide
2006/01/06 URL 編集
naokoguide
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