fc2ブログ

老舗アランニットの店オモーリャ、惜しまれつつ閉店

ゴールウェイの老舗アランニットの店、オモーリャ(O'Maille, High Street, Galway)の閉店が「End of an era(一つの時代の終焉)」として全国ニュースで報じられたのは先週のこと。
'End of an era' as knitwear shop to close after 86 years(RTE News)

今や国内で、(ダブリンのクレオ(Cleo Ltd.)を除いては)唯一残る、昔ながらの本物の手編みアランニットを扱う小売店がここオモーリャでした。自信をもって紹介できる老舗としてツアーのお客様はもちろん、メディアの取材班をお連れしたり、日本からのお客様を呼んでニットのワークショップを一緒にしたことも。拙著のアランニットの解説ページにも全面的にご協力いただき、オーナーのアン&ジャー夫妻には、長きにわたり本当にお世話になってきました。
2人が数年前から引退を口にしていたのは知っていましたが、それが現実となる日がついにきてしまいました。4月末日で閉店と聞き、電話だけでなく顔を見てお礼とはなむけを伝えたい!と思い、本日出かけてきたのでした。

OMaillelastweek04242
黄色いショップフロントが目印のオモーリャ。閉店セール中で、すでに「売却済み」の不動産屋の看板が

ゴールウェイに来ると必ずと言っていいほどここに立ち寄り、アンとジャーの顔を見るのが楽しみでした。それがなくなってしまうなんて、まだちょっと実感がわきません…。

OMaillelastweek0424AnneandGer
ありがとう、アン&ジャー!お花とカードをお渡して、引退おめでとう、そして楽しい第2の人生を…と伝えつつ、ひとしきりおしゃべりしてきました

1938年、ジャーの叔父さんにあたるポドリック・オモーリャさんが始めた「オモーリャ」。お2人に代替わりしてから50年くらい?
残念ながらお子さんたちは継ぐ気がないとのことで、廃業せざるを得ないことに。そう聞くと、3代続くダブリンのクレオ、今年初めに先代が亡くなったものの息子さんがしっかり後を継いでいるスタジオ・ドネゴール(Studio Donegal)などは、店/メーカーにとっても、消費者である私たちにとってもラッキーとしか言いようがありません。

表に出て切り盛りしてきたのはもっぱらアンで、アイルランドには多いですよね、こういうお嫁さん家業で繁栄しているところ。コークの老舗マナーハウス&料理教室のバリーマルー・ハウス(Ballymaloe House)なぞ、今のレイチェルで3代目お嫁さんですから。

アンの素晴らしいところは、コネマラやメイヨー、アラン諸島で今もひっそり伝統的なニッティングを続けているニッターさんたちと強い信頼関係を結び、彼女たちに、アンのためなら編むわ!と言わせ、編み続けてもらっているところ。高齢のニッターさんを激励し、若い世代を発掘し、その目利きと人柄によりこの国の伝統ニットを牽引してきました。
アンのその姿勢は、店の創業秘話を聞くと納得。コネマラからゴールウェイの街に出てきた貧しい女性が、街頭で手編みの靴下を売っていたのをジャーの叔父さんのポドリックが買い取り、ドネゴールへ自ら出向いて買って来た毛糸を渡し、また買い取るからもっと編んで持って来てください、と奨励したのが店の始まりだというのです。そうやって、クリエーター/アーティストたちを鼓舞し続け、良い製品を生み出してきたプロデューサーだったんですよね。
単なる物売りではないんですよ、成功して、長く続けてきたこの世代の方たちって。

OMaillelastweek0424
アンはこれからも、馴染みのニッターさんたちに編んでもらうことは続けていくそう。このたっぷりの在庫も含め、オンラインで引き続き販売していくつもりだそうですから、欲しい方はアンがお元気なうちにぜひホンモノを

一つ時代の終焉。ちょうど今日の地元紙にこの記事が出たのよ、とアンが一部くださったのがこちら。ゴールウェイでよく知られるトム・ケニー記者による、RTEニュースと同じタイトルの記事です。

OMaillelastweek04243
ウェブでも読めます→The end of an era(Galway Advertiser)

コネマラの靴下売りに始まった創業秘話、ジャーの叔母さんに当たる創業者ポドリックさんの妹シスさんが、映画『静かなる男』の撮影時にジョン・ウェインやモーリーン・オハラらキャストの衣装デザイナーとして大活躍した話など。
シスのこの写真はフランスのファッション誌にも載った有名な写真なのよ、店にあるあのミシンがシスの遺品なの…などなど、たまたま店にいた若いアメリカ人カップルも一緒になって、アンの話に耳を傾けたのでした。

私も今年で在住25周年。四半世紀暮らせばいろいろ変わっていくのは当然で、その分だけ新しい出会いもあるわけですが、最近この「一時代の終焉」のフレーズが本当に多く、わかっていてもやはり寂しいですね。

【追記】
オモーリャのアランニットが日本で購入できる店は静岡のジャックノザワヤさん。今まだ10枚ほど在庫があるので、欲しい方はお早目に、とのことです!
関連記事

コメント

櫻井

オモーリャ閉店寂しいです
なおこさんご無沙汰してます。アイルランドを離れて4年ですが、オモーリャで買ったエメラルドグリーンの手編みニットを今でも大事に着ています。ゴルウェイ行ったらオモーリャとモランのオイスターは必ず立ち寄ってました。アンさんのこれからのご健康をお祈りします。

naokoguide

Re: オモーリャ閉店寂しいです
櫻井さん、こんにちは!コメントありがとうございます、嬉しいです。
素敵なセーターをお買いになっておいて良かったですね。これからはますます希少価値となる、一生モノだと思います。大事に来て下さっていること、アンやニッターさんが知ったら喜ばれることでしょう。機会がありましたらお伝えしますね。
そうですよね、ゴールウェイに行ったらオモーリャとオイスター。私も含め、そういう方は多かったと思いますので、本当に寂しい限りです。

Mkwaju

「静かなる男」の写真を思い出します
オモーリャ、とうとう閉まってしまうのですね。悲しいというより、お疲れさまでしたという感謝の気持ちでいっぱいです。でもご夫妻がお元気そうで何よりです。
私が訪ねたのは1992年8月と1995年1月の2回。1995年にはたしか店の場所が少し移転していて探し回った記憶があります。移転前の店には「静かなる男」のロケ写真が壁に目立つように貼ってありました。1995年におじゃましたときは、伊藤ユキ子さんの「紀行・アラン島のセーター」の話になり、アンさんが店の奥から本を持ってきてセーターについていろいろなことを話してくださいました。
2回の訪問でセーター3枚買って、2枚は友人たちに譲り、濃いグレーのいちばん編み目の複雑な1枚を手元に残しています。齢を重ねるごとに重いセーターを着ることはだんだん少なくなり、いまではタンスの中に常駐していますが、虫がつかないように防虫剤の入れ替えを忘れずにしています。

手編みのセーター以外に、ナッソー通の土産物店では1990年代前半はそれはすてきなデザインセーターを買ったものです。私のアイルランド訪問は2010年が最後なのですが、2000年代よりも1990年代前半の方が好みのデザインがあったような気がします。これも昔の方がよく思える老化現象でしょうけど。

naokoguide

Re: 「静かなる男」の写真を思い出します
Mkwajuさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
90年代にオモーリャさんを訪ねられたのは、貴重な経験でしたね。一生ものの素敵なセーター、大切にしておられることを知ったら、アンも喜ぶことでしょう。
Mkwajuさんのコメントを読み、10年位前にパリへ行ったとき、90年代のパリの方が好きだった!と思ったことを思い出しました。ダブリンは徐々に「ヨーロッパの一都市」となりつつあり、街の特徴を失っているように感じますが、これも時代の流れでしょうか。
ゴールウェイはまだまだ昔ながらの風情が…と思っていましたが、ダブリンを追随するのかもしれません。
歳を重ねるというのは、自分じゃなくて周囲の環境が変わっていくのを感じることなんだなあ、と最近つくづく思います。
変わりつつあるアイルランドですが、またぜひいらしてください♪
非公開コメント

naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

Instagram

お知らせ ☘

旅のガイドご予約・お問合せはこちら
ガイディング・アイルランド

「絶景とファンタジーの島 アイルランドへ」(イカロス出版)
☘8/29最新版刊行☘好評発売中!
ikarosbook0517 . ikarosnewbook0823
初版はこちら

新規オンライン講座/講演会
→詳細は追ってお知らせ致します!

カレンダー

04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

月別アーカイブ