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シネイド・オコナーもテーマ曲を歌うドラマ『アウトランダー』、スコットランドのケルト満載

2014年に始まったイギリス・アメリカ合作の人気ドラマ・シリーズ『アウトランダー(Outlander)』を、遅まきながら観ています。
第2次世界大戦後まもない1940年代の英国。新婚旅行でスコットランドを訪れたイングランド女性クレアが、古代のストーンサークルの巨石に触れたとたん200年前にタイムスリップしてしまうという歴史ファンタジー・ドラマ。夫のある身でありながら、キルトを身にまとう赤毛のスコットランド人男性ジェイミーと運命的な恋に落ちるクレアですが、ときは18世紀、古代ケルトの末裔であるクラン(氏族)が群雄割拠していた時代。クラン内の争いや、イングランド軍との熾烈な戦いに巻き込まれ、時代の波に翻弄されていく…という、時空を超えた大河ドラマです。
物語の舞台は、シーズン2では一時フランスへ、シーズン3からは当時イギリスの植民地だったアメリカへ。現在シーズン7の前半まで配信されていて(日本での配信はシーズン6まで)、年明けにシーズン7後半が、続くシーズンを8もって10年間続いたシリーズについに幕が落とされると発表されています。

OutlanderPoster
出会った頃のまだ若いクレアとジェイミー。クレア役の俳優カトリーナ・バルフ(Caitríona Balfe)さんは映画『ベルファスト(Belfast)』(2021)にも出演していたカウンティー・モナハン育ちのアイルランド人です

舞台はスコットランドながらも、アイルランドと共通するケルトの要素がそこここに出てくるので、これまでもお客様に「アウトランダー、観てますか?」と話題をふられることがしばしばあり、せめてシーズン1だけでも…と観始めたら案の定とまらなくなり…。今、シーズン6まで追いつきました!

クレアが巨石を通って過去へ行ってしまうのが古代ケルト由来のサウィン(現代のハロウィーン)の日であることからして、ケルト色ムンムン。薬草や医学の知識のあるクレアは、取り替えっ子や妖精を信じていた18世紀の人々に魔女扱いされることもしばしば。
シーズンの始めの方では、ジェイミーたちスコットランド人は日常会話をゲール語でしていて、アイルランドで話されるゲール語(アイルランド語)とも共通しているので、「アガス(=英語のand)」、「スローンチャワ(=乾杯)」、「イーハワ(=おやすみ)」、「ウィシュケバハ(=ウィスキー)」など、私でもわかる単語が飛び出すのも嬉しい。
カロデンの戦いの敗北により禁止されてしまうスコットランド人男性の民族衣装キルトも、戦い前まではみなが日常的に着用しています。もともとキルトは大きな一枚布で、着用するときは床に広げてその上に横になって巻き付ける…と聞いていましたが、ジェイミーがまさにその通りの着方をしているシーンもありました。

歴史や風俗の勉強になる反面、正直言ってこのドラマ、かなり暴力的、性的、ときにサディスティックなシーン多し。とくにシーズン始めの方はそれはそれはおぞましい、目を覆わずにはいられないように場面も多く、このエピソードを最後にもう観ないっ!と何度思ったことか。それでも、あともう1話だけ…と観ると、思いがけずハートウォーミングな展開になったりして、それじゃあ…と見続けてしまうんですよね。
この数週間というもの、ほぼ毎日のように数話ずつ観ているので、ドラマのテーマ曲がずっと頭の中をグルグル(笑)。荘厳かつ美しい曲は、『スカイ・ボート・ソング(The Skye Boat Song)』というスコットランド民謡をアレンジしたものだそう。シーズン毎にアレンジや歌い手、オープニングロールの映像が少しづつ変わり、最新のシーズン7(日本では未公開)はアイルランドの歌姫シィネード・オコーナーが歌ったことでも話題になりました。
シーズン7の公開が今年6月、その後8月にシィネードが天国に旅立ってしまったことを思うと、彼女が残した歌声がよりエンジェリックに聞こえて感慨深いです。



この曲はもともと、ドラマの中でも重要なターニングポイントとして描かれる1745年のカロデンの戦いで、敗北したボニー・プリンス・チャーリーことチャールズ・スチュワート(ジャコバイトが主張するイングランド・スコットランドの王位継承者)が、フローラ・マクドナルドの助けを借りてスカイ島へ逃亡した史実をうたったものだそうです。(フローラはシーズン6に登場)
現在は、19世紀に小説『宝島』の作者として知られるスコットランド人作家ロバート・ルイス・スティーヴンソン(Robert Louis Stevenson, 1850 - 1894)が書き改めらた歌詞で知られていて、ドラマでもそちらが使用されていますが、主人公クレアが女性だからか「lad(少年」)が「lass(少女)」に変えられています。
ボニー・チャーリー・プリンスのスカイ島への船出と、クレアの過去への旅立ちをかけているのでしょうか。

それにしても、スコットランドの歴史もアイルランドに劣らず複雑ですね。
アイルランド同様、イングランドの圧政に苦しんだことはドラマにも描かれているとおりですが、その立ち位置やイングランドとの関係がなんだか微妙。反イングランドかと思いきや、カロデンの戦い後は王に忠誠を誓っていたりするのはなぜ?
また、アイルランドともっと同胞意識が強かったのかと思いきや、時おり言及されたり登場するアイルランド人はいつも見下げられているか、極悪人かのどちらか。あの極道の限りを尽くすスティーヴン・ボネットが、アイルランド人という設定だなんて!
また、スコットランド人と言えばプロテスタントの長老派教会がお決まり…というイメージでしたが、18世紀に生きたジェイミーはまだカトリック教徒。ジョン・ノックスが長老派を創始したのは16世紀だったかと思いますが、初期の頃は反発・対立も多く、18世紀になってもまだかなりの人たちがカトリックだったんですね。

アメリカ移住後は『大草原の小さな家』を彷彿させるような開拓移民の暮らしぶりや(ローラの時代より100年ほど前ですが)、チェロキー族、モホーク族など先住民族の風習や儀式も描かれ、これまた興味深いです。

ドラマの舞台やロケ地にすぐ興味がわく私としては、あの巨石ストーンサークルのモデルとなったというルイス島にある遺跡を訪ねてみたくてたまらなくなっています!
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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