アイルランドが誇る文豪W.B.イェイツ(William Butler Yeats, 1865 - 1939)のノーベル文学賞受賞から今年で100年。
アイルランドが自由国としてイギリスから自治を得て独立した(1922年1月)翌年の1923年に、アイルランド人として初の受賞者となったのがイェイツでした。
そのイェイツの受賞100年周年を記念して、今年のダブリン・マラソンの完走メダルにイェイツの顔と格言がデザインされることが先日発表されました。
'No certainty' Dublin Marathon medal quote was said by Yeats(RTE News)より
うわ~、いいな~、うらやましいな~。42.195キロは私にはちょっとムリだけど、友人知人が複数走るので見せてもらおう!
メダルの縁に彫り込まれるイェイツの格言はこちら。
There are no strangers here; Only friends you haven't met yet(=この世には他人などいない。まだ出会っていない友がいるだけだ)
「まだ見ぬ人はこれから出会う新しい友」…といった感じでしょうか。(しばしば私はこう訳しています)
ダブリン・マラソン(今年は10月29日)コースの多くが住宅地をぬうこともあり、住民が沿道に出てランナーを拍手と声援で迎える市民マラソンならではの雰囲気で大変盛り上がります。アイルランド人のフレンドリーさが思い切り発揮される日。それにぴったりな言葉として選ばれたようです。
しかしこの発表を受けたイェイツ協会は、この格言がイェイツ本人によるものであるという確証はありません、と答えています。確かにイェイツの詩の引用というわけでもなく、マジカル&スピリチュアルでさえあったイェイツの言葉としてはちょっと平凡…かも。
長きにわたりイェイツの言葉としてまことしなやかに知られていますが、もしかしたらただの都市伝説?まあ、良い言葉があれば何でもイェイツ…って思われちゃうくらい、その功績と影響力が大きいということでしょうね。
そういえば、2015年に英チャールズ国王(当時は皇太子)がイェイツゆかりのスライゴを訪問した際にも、英国とアイルランドの過去と未来を象徴する言葉としてスピーチで引用していたことが思い出されます。
※参照→
「まだ見ぬ人はこれから出会う新しい友」(2015年5月)
そして私の仲間うちでは、この言葉はイェイツではなく、友人スティーヴンのもの!…とされています(笑)。
スティーヴンはフレンドリーなアイルランド人の権化のような人で、道行く誰にでも(犬にも!)話しかけて友達になっちゃう人。昨年のダブリン・マラソンでも終日沿道に立ち、ランナーひとりひとり声がけして拍手と声援を送る姿は、まさにダブリン市民の鏡でした。仲間うちでは、この言葉を最初に言ったのはもちろんイェイツなんかじゃなくてスティーヴンだよね、ってことになってます。
なのでこの発表があってすぐ、彼にメッセージしました、「おめでとう~」って(笑)。
ちなみに、イェイツに続きこれまでにノーベル賞を受賞したアイルランド人は全部で6人。北アイルランドを含むアイルランド島からの受賞者ということでは11人となります。(以下、一覧)
【アイルランド共和国からの受賞者】
1923年 ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats) 文学賞
1925年 ジョージ・バーナード・ショー(•George Bernard Shaw) 文学賞
1951年 アーネスト・トーマス・シントン・ウォルトン(Ernest Thomas Sinton Walton) 物理学賞
1969年 サミュエル・ベケット(Samuel Beckett) 文学賞
1974年 ショーン・マクブライト(Seán MacBride) 平和賞
2015年 ウィリアム・セシル・キャンベル(William Cecil Campbell) 医学賞
【北アイルランドからの受賞者】
1976年 モレード・コリガン(Mairead Corrigan) 平和賞
1976年 ベティー・ウィリアム(Betty Williams) 平和賞
1995年 シェイマス・ヒーニー(Séamus Heaney) 文学賞
1998年 ジョン・ヒューム(John Hume) 平和賞
1998年 ディヴィッド・トリンブル(David Trimble) 平和賞
11人のうち4人が文学賞、5人が平和賞というのがアイルランドの文化と歴史を物語っていますね。
※関連過去ブログ
→
革命家の子として生まれたショーン・マクブライドが退けた「NATO非加盟」を今も貫くアイルランド(2022年3月)
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