先日「Fate」ファンのお客様をご案内した、
ケルト神話の英雄クーフーリンゆかりの地めぐり(2023年8月13日)ですが、その日のブログに書ききれなかったナーヴァン・センター・アンド・フォート(
Navan Centre & Fort, Co. Armagh)について。
ケルト時代(鉄器時代)、アルスター国の王都エワァン・マカだったのがここ。巨大マウンドに隣接するセンターで見学ツアー(有料)に申し込むと、復元されたケルト人の家へ案内されて詳しい説明を聞くことができるのでおすすめです。

クーフーリン、アルスターのコナー王、コノートのメイヴ女王など「クーリーの牛追い」伝説の登場人物やそのシーンのパネルがずらり。ここでエワァン・マカやクーフーリン伝説の説明を聞いたあと、いざ、ケルト村へ!

考古学的な調査にもとづき復元された、紀元前1世紀の鉄器時代(ケルトの時代)の住居。ケルト人に扮した人たちが迎えてくれます!

「首を取られずに帰れたらラッキーだぞ~」と言いながら登場したケルトの戦士。顔にブルーのペインティングをしていますね、『ケルズの書』のブルーと同じウォード(大青)という植物の顔料だったと言われています

じゃ~ん、ハロウィーンの被り物。ハロウィーンはサワーンと言い、ケルト起源の祭事であることは近年よく知られていますが、古代にはこういう被り物を身に着けて悪霊から身を守ったそう。ちなみにこれは野ウサギ
ここでケルトの風習をいろいろ説明してくれたのが、面白かったです。
ケルトの社会では職業を持たない者は存在価値がないとされたこと、中でも吟遊詩人、医者、ドルイド(司祭、法律家)がもっとも位の高い3大職業であったこと、吟遊詩人がやってきたら必ず手厚くもてなしたこと、なぜなら、もてなしが悪いとほかの家で悪口を言われちゃうから…などなど。
ケルトは男女同権で、女性も戦士やドルイド僧になることができました。結婚は「1年と1日」のお試し婚が許されており、それで愛が育ったら正式に結婚、育たなかったらやめてもOK。なんと合理的な!
結婚に関する決まりはすべてブレホンという法典で決められており、子宝に恵まれない場合は、夫は妻の許可を得られれば第2夫人を持って良かったそう。許可したとは言え人の心は複雑ですから、妻が嫉妬に駆られた場合は、3日間だけ第2夫人をムチ打ちしても良かったとか!
そんな話に大盛り上がりしたあと、いよいよアルスター国の王都エワァン・マカことナーヴァン・フォートへ。
案内してくれたセンターのガイド、カロラインさんが、とても詳しい考古学的な解説をして下さり感激。この地は英語では「フォート」と呼ばれていますがそれは間違いで、この盛り土はフォート(砦)ではなく、古墳であろうと考えられていました。ところがそれも間違いで、2019年にX線調査を行ったところ、直径40mの盛り土の中に神殿のような建物があることが分かったというのです。

見た目はアイルランドによくある古墳にそっくりですが…

センター内の展示に模型が。紀元前95年には、このような建造物がここにあった!
3.5m感覚で建てられた34本の樫の木柱と、石灰岩により建てられた謎の建造物は、この地の女神マハへの捧げものとしてアルスター国民が総出で建造したもの。建築作業を通して、各部族が仲良く協力し合うことも建設の目的だったようです。
木柱に燃やされた跡があることから、建造後には火を放って燃やしてしまったと考えられています。ライムライトという言葉のとおり、石灰岩(ライム)が青白く燃え光り(ライト)、それはそれは美しくミステリアスであっただろう、と。
そういうことを1度ならず、何度もしたと考えられています。建てて、燃やして、また建てて、燃やして…。
人間や動物を生贄にする代わりに、建造に費やした国民の「想い」や「エネルギー」を女神に捧げたのですね。
この発見は世界の考古学界を仰天させ、この秋にはこの地に考古学者が大集結して大がかりな学会が開かれるのだとか。
知る人ぞ知る地味目の遺跡ですが、エワァン・マカことナーヴァン・フォート、今後も要注目ですね。
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