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創業300年をむかえたAVOCA、ガイド付きツアーでじっくり工場見学

今年で創業300年を迎えた老舗の織物ブランド、ウィックロウ(Co Wicklow)の山間地で発祥したAVOCA(アヴォカ)。
国内に複数の店舗を構え、近年日本でも展開していますが、ウール織り製品は今もすべて発祥地アヴォカ村の小さな工場で生産されてるというから驚きです。
以前は自由に見て回ることのできた工場ですが、昨年よりガイド付きツアー(有料)でのみ見学可能となりました。先月のことですが、AVOCAが大好き!というお客様をご案内してツアーに参加したところ、たまたまほかのお客さんがおらず私たちだけ。とても丁寧に説明していただき、すみずみまで詳しく見せてもらいました。

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1723年創業、アイルランドでもっとも古い織物工場。ギネス(←1759年創業)より古い!

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一歩入るとAVOCAワールド!ガイドのアランさんがそれぞれの製品の特長を説明してくださいました

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こちらは300周年記念の限定商品。300年前に製造されていたものの復刻版で、地元のヒツジの毛糸使用。この地の谷や木々からインスピレーションを得てデザインされた特別なパターンだそう。AVOCAと言えばカラフルな色づかいで知られますが、創業当時はそうではなかったんですね

1926年、工場を引き継いだウィン三姉妹が現在のようなカラフルな色使いを取り入れ、AVOCAを一躍有名にしました。

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左からエミリー、ヴェロニカ、ウィ二ファーのウィン三姉妹。彼女たちによって、パターンもより複雑でオリジナリティのあるものとなっていきます。写真は1940年代のもの

ウィン三姉妹はこの時代には珍しく、男性が受けるのと同等の教育を受けた女性たちでした。20代になる頃までにヨーロッパ中を旅して見聞を広め、ドイツ語も流暢に話すことができたそう。
エミリーはファブリックデザイナー、ヴィロニカは作家・アーティスト、ウィ二ファーは園芸家で、それぞれの得意分野を活かして工場を経営。生涯独身を貫き、美しい織物を世に出すことに情熱を傾けました。
ウィン三姉妹が経営した約30年間がAVOCAの黄金期で、イギリス王室にブランケットを献上したときの王室からのお礼の手紙が額に入れて飾られていました。現チャールズ国王が赤ちゃんだったときのブランケットだそうです。

驚いたのは、彼女たちの色への情熱。当時、糸はすべて天然の染料で染めていましたが、姉妹は世界中から染料用の植物を取り寄せて育て、ガーデンを高い塀で囲い、外から見られないようにしていたそう。色の原料は完全に企業秘密にしていたわけです。
いったいどんな植物があったのか気になりますが、さまざまな植物を育てることができたのは、この地がマイクロクライマット(局地気候)であるからでしょう。高緯度だけれど暖流のおかげで冬の厳しい寒さのないアイルランドには、高山植物から南国の植物まで幅広い植生があります。近年AVOCAが買い上げて復興した、アヴォカ村にほど近いマウントアッシャー・ガーデン(Mount Usher Gardens, Co. Wicklow)が良い例でしょう。

ウィン姉妹が高齢になり、甥のパトリックが工場を引き継ぐも経営は次第に傾き、売却。その後、ビジネスですでに成功していたプラットさんが購入して再生、彼とその子供たち2世代にわたり、現在につながるAVOCA繁栄を築かれたわけですね。

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こちらは120年前に製造され、1990年まで実際に使用されていたという織機。すべてが手織りだったウィン姉妹の時代には、このような織機が14機ありフル稼働していたそう

熟練の職人ユージンさんがデモンストレーションしてくれました。ドネゴール産の糸で織る、ヘリンボーン・パターン。フライングシャトル(飛び杼=とびひ)が糸の下をぴゅ~んと飛び交うのが面白い。
ユージンさんクラスの職人さんはこの織機で1日に20m織れるのだそう。

AVOCAでは1988年に動力織機を導入。現在はそちらを使用して大量生産していますが、当時中古で購入したという機械が今も使用されているのがスゴイ。

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1960年代のドイツ製の動力織機。1日に200m織れるそうですから、手織り織機の時代の10倍の生産量に!

このあと、フリンジを切る過程、ライトを当てて検品作業する過程なども見せてもらいました。
検品ではねられた不良品の中には、日本向けの商品も。この小さな工場でつくられたものが日本のデパートの店頭に並ぶのね~と、あらためて感慨深い気持ちに。

工場の一画のガラスケースに、ウィン姉妹の時代の天然カラーの貴重な手織りスローが飾られていました。

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1928年の手織り。色が頻繁に変わるこのパターンは、手織りではかなり難易度が高いそう

当時のもので残っているのはこれだけだそう。100年近く前につくられたとは思えないような発色の良さです。ただ、これでも色はあせているのかもしれず、当時はもっと鮮やかだった可能性もある、と。
同じデザインと色合いの復刻版をショップで購入することができます。(今年は300周年限定商品の製造が忙しく、現在は製造停止しているそうですが、来年以降また出るそうです)

工場見学のあとは、向かいのショップ&カフェへ。AVOCAの歴史や製造過程を知ってから見ると、ありがたみが増してあれこれ欲しくなります!

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とにかくディスプレイがカラフル、見ているだけで心躍ります♪

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300周年記念商品が全面に

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ショップにはここの工場で生産されるもののほかに、アイルランド産ファンションや小物も豊富に並んでいます

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食材やキッチン用品も素敵。スコーン柄のエプロン!

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南部コーク産のセイモアズのおいしいクッキー。こんな素敵な缶入りが出ていました♪

これまで数えきれないほど訪れているAVOCAですが、AVOCA好きのお客様とご一緒に、こうして詳しく見学させていただいたことでより愛着がわきました。
AVOCAのことをより詳しく知りたい方には、このガイド付き見学ツアー、かなりおすすめです♪(事前に電話で予約した方がベターですが、少人数であれば当日ショップで申し込み、間に合う時間のツアーに入ることも可。料金は確か一人€11だったと思います)

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訪れたのは先月、まだ夏真っ盛りでアジサイがきれいに咲き誇っていた頃でした
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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