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「大草原の小さな家」シリーズの「沼」にはまる

今日は団体ツアーさんのご案内で、朝の出発時刻にお客様のご宿泊ホテルへ行かなくてはならなかったのですが、そのホテルがバスを乗り換えて片道2時間近くかかる場所。(車で行けばほんの20分程なのですが、開始と終了の場所が違うときは公共交通機関を使うしかないのです…)
朝からダブリンバスに揺られるのもイヤだなあ、と思い、いっそ歩いていってしまおう、と距離を調べるとたったの14キロ。5時半に家を出て3時間も歩けば着きそうなので、4時半に目覚ましをかけて寝るも、朝起きてそのプランのクレージーさに気が付いて、結局はバスに揺られて行きました。仕事前になにも3時間もハイキングしなくても…と思い直して(笑)。

たったの14キロ、歩けちゃう!と思ってしまうのは、先日『長い冬』(ローラ・インガルス・ワイルダー著・谷口由美子訳・岩波文庫)を再読してからというもの、ローラの物語が読み止まらなくなり、今、「大草原の小さな家」シリーズ(英語圏では「リトル・ハウス」シリーズと呼ばれる)の「沼」にどっぷりはまり込んでいて、気分はすっかり開拓時代…だから♪
ローラたちは大草原をえんえんと歩き、幌馬車に乗って何十キロも旅しちゃうので、その世界に浸っていたら感覚が狂ってしまったのでした。

TheLongWinter
『長い冬』の原書『The Long Winter』。英文で確認したい箇所あって原書をひも解くと、岩波文庫では白黒のガース・ウィリアムの挿絵がオールカラーで感激!

『長い冬』に始まるローラの青春&結婚編は『大草原の小さな町』、『この楽しき日々』、『はじめの四年間』、『わが家への道』(すべて谷口由美子訳・岩波少年文庫)の5冊。ありがたいことに電子書籍化されているので、谷口さんの日本語訳で夢中で読了。メアリーがついに大学へ、そして、あの小さかったローラが結婚なんてウルウル…としながら、涙あり、笑いありのジェットコースターでした。
それにしてもすごいですよね、この時代の人たちの忍耐力と精神力。苦しいことがあってもすぐに気持ちを切り替えて、はい次!って進んでいく姿に感動を通りこして、畏敬の念すら覚えます。
苦労して育てた作物がついに収穫…というときになって雹にやられたり、ブラックバードの大群が襲ってきてすべてダメになってしまったり。それが毎年毎年続くのですから!実際にはそれ以上に辛く苦しいことのオンパレードだったそうですが、そんなことはもう思い出すのもイヤだったのでしょう、物語に書かれている苦難はほんの一部でしかないそう。
いちばん驚くのは、大草原のど真ん中にいて誰に見られるわけでもないのに、日々髪をきれいにとかし、身なりを整え、日焼けから肌を守るために帽子をかぶり、床を磨き、ベッドメイクをして、勉強もちゃんとしているところ。貧しく苦しくともケチにならず、心を豊かに正しく保ち、明るく生きているのがスゴイ。
ローラの物語を読めば読むほどに、コロナごときで大変だなどとひ弱なことを言っていられないっ!と思うのでした。

ちなみに、ローラとアルマンゾの苦労の連続の新婚生活を描いた『はじめの四年間』に、アイルランド人のことわざとしてこんな言葉が繰り返し出てきます。

「この世はすべて公平にならされている。金持ちは夏に氷を得て、貧乏人は冬に氷を得る」

ものすごいブラックジョーク!ローラたちは夏に氷を得たものの、それは雹による被害でしかなかった…というのもすさまじい。

ローラのお産を助ける産婆さんがアイルランド人だったり、と、当然この時代(19世紀末)にはアイルランド移民もアメリカに入植して数世代になっていましたから、ローラの身近にもときどき登場&言及されるのですが、やはり移民の中でも下に見られていたことがうかがわれる記述が多いですね。
(シリーズ前半には、例外的にアイルランド人の学校の先生が。そこはまだ読みかえしていないので記憶が曖昧ですが)

物語を読むとそのゆかりの地に興味がわく性質なので、関連本も要チェック。2022年に出たばかりのビジュアル本『大きな森の小さな家 大草原のローラと西部開拓史』(ちばかおり著・新紀元社)が素晴らしいです。(電子書籍になっていたので読めました、ありがたい!)
ちばさんの入念な調査とローラ愛に感激しながら、インガルス一家とワイルダー一家ゆかりの地へ机上で聖地巡礼。ああそうだった、ローラや父さんが生きたアメリカの大草原を訪ねたい!というのも子どもの頃からの夢のひとつでした。遠からず実現させねば!

次は『大きな森の小さな家』に始まるシリーズ前半の5冊をさかのぼって読みたいのですが、私が再読したい福音館のシリーズは電子書籍化されていないので、本の現物を手に入れるのは来月まで待たねばなりません。今やどっぷり「沼」にはまり込んだ私が来月まで待てるはずがなく、あ~、ついにドラマにも手をつけてしまいました。そう、かつてNHKで放送されていた、マイケル・ランドン(父さん役)&メリッサ・ギルバート(ローラ役)の懐かしの『大草原の小さな家』です。
これ、全9シーズンもあるんですね。観始めたら大変なことになる…って思いつつも、Amazon UKで全シリーズ無料配信されていることを知り、早速に視聴開始。(残念ながら日本のアマゾンでは今は配信されていないよう)
子どもの頃このドラマを観ながら、ローラやメアリーが着ているみたいなエプロンドレスに憧れ、ジャックみたいな犬がいたらいいなあって思い、ネリーの意地悪がしゃくにさわったものでした。
今回英語で見たことで、谷口さんの訳で父さんがローラを呼ぶ「小びんちゃん」が「Half pint(ハーフパイント=「おちびちゃん」といった意味)」だったことも知りました。

ドラマはローラたちがウォルナッツ・グローブに落ち着いてからの話で、原作と対応させると、シリーズ第3巻『プラム・クリークの土手で』以降となります。ドラマのタイトルとなった第2巻『大草原の小さな家』の部分は、約1時間半ほどのパイロット版としてシリーズ放送前に制作・放送されていたことを初めて知りました。
そのパイロット版が素晴らしく、大感激。おしゃまなローラが可愛く、しっかり者のメアリーの目がこのあと見えなくなってしまうなんて信じられない&信じたくないし、父さんと母さんはとにかく素敵で。インディアンがやって来るエピソードにハラハラドキドキ、エドワーズさんが川を渡ってクリスマスのプレゼントを運んでくるところはなんともコミカルで心温まります。
続いてシーズン1を見始めたところですが、シーズン9まであることを思うと、あ~、深~い深~い沼にグブグブはまり込んでいく~、仕事も今そこそこ忙しいというのに~(笑)。

ローラの娘ローズが書いた「ロッキーリッジ」シリーズ(新・大草原の小さな家)も大昔に第1巻を読んだきりなので、これを機に全巻読んでみたくなりました。日本語訳は絶版で、中古本はものすごい高値になっているので、USより原書を取り寄せ中。こちらは全8巻あり、これが終わったら別の作者による母さんの少女時代の物語シリーズも控えています。
突如としてやってきた「大草原の小さな家」ブームですが、しばらくこの「沼」に心地良くはまり続けることになりそうです♪
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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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