W.B.イェイツ(William Butler Yeats, 1865-1939)が結婚後、夏の住まいとしたバリリの塔(
Thoor Ballylee, Co. Galway)。
過去数年、洪水の被害やコロナ禍で閉館することが多かったのですが、昨年より夏季のみ再びオープンしています。先日数年ぶりに訪れ、なんと静かで美しい場所なんだろう、とあらためて感じました。

森と小川に囲まれた15世紀の古城。「タワーハウス」と呼ばれる、当時アイルランドにさかんに建設された城。イェイツは「城(Caslte)」とは言わず、あえて「塔(Tower)」と呼びました(「城」はイギリス支配のもとで建設されたものだから)

暑い日でしたが、サラサラ流れる小川がさわやか
ここはイェイツが信頼を寄せ、民話神話の収集・編纂やアイルランド文学劇場の立ち上げをともに行ったグレゴリー夫人(Lady Gregory、1852–1932)の土地の一部で、夫人の住まいも近くでした。
1916年頃、イェイツは約1エーカーのこの土地を城つきで購入。翌年、52歳のイェイツは27歳年下のジョージィさんと結婚し、廃墟同然だった城を修復。1921~29年、ここを家族の夏の住まいとして、妻と2人の子どもと暮らしました。
中世の城に暮らすとは、さすが芸術家。ロマンチックですね。
今年2023年は、イェイツがノーベル文学賞を受賞して100年という記念の年。つまり、1923年、まさにここに暮らしていたときに受賞したわけで、キャリアもプライベートももっとも満たされていた時期だったのかもしれません。

ペールピンクのつるバラが見事に咲き誇っていました

イェイツはここにリンゴとナシの木を植えたそう。イェイツが植えたその木ではないと思いますが、実をつけたリンゴの木がありました

塔の壁にはめこまれた碑文。写真は光ってしまい文字が読めませんが、このように書かれています。「私、詩人ウィリアム・イェイツは、古い粉ひき小屋の板と海緑色のスレート石、ゴート(Gort)の鍛冶職人の技により、我が妻のためにこの塔を修復した。再びここが廃墟となっても、そういった特徴が残りますように」
以前からそう思っていましたが、独特の空気感のある場所。イェイツも何か感じていたに違いありません。
内部も見学したかったのですが、この日は時間なし。近いうちに再訪し、イェイツ一家の亡霊にゆっくりご挨拶したいと思いました。
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