『イニシェリン島の精霊(The Banshees of Inisherin)』、オスカーならず…(涙)。
8部門9ノミネートという快挙を成し遂げ、期待されていただけに残念でした。私はコリン・ファレルが主演男優賞を取ると信じて疑わなかったのですが。もしくは、少なくともマクドナー監督の脚本賞は固いのではないか、と。
授賞式をダイジェストで観ましたが、『イニシェリン島…』チームが最前列にずらり並び、「チーム・アイルランド」の面々が楽しんでいる様子が見られたのは良かったですね。コリンは息子さんを同伴(←
『オンディーン』 のときの共演女優さんとの間に生まれた子が今やこんなに大きく!)、『アフター・サン』のポール・メスカル(←今や
『ノーマル・ピープル』 の、ではなく!)なんぞ家族全員ロスに大集合して前後のパーティー含め大盛り上がりだったようで、連日メディアを賑わせていました。
ロバのジェニーまがいがステージに登壇したのは、いかがなものか…と思いましたが。(アイルランド訛りの英語とか、ロバとか、ステレオタイプの「田舎者アイルランド人」的なジョークを、アイルランド人は口には出さないけれどあまり良く思っていない…)
それにしても、今回の米アカデミー賞。この小さな緑の島から、『ザ・クワイエット・ガール(An Cailín Ciúin/The Quiet Girl)』のようなアイルランド語作品含め、計14ものノミネートを受けたことはアイルランドの映画産業にとって大きな励みとなったことでしょう。
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アイルランド、オスカーノミネート大豊作!コリン・ファレルもポール・メスカルも、キテレツ演技のバリー・キョ―ンも! (2023年1月)
『エブリシング・エブリウェア…』が受賞を総なめする中、「チーム・アイルランド」は2つのオスカーを持ち帰ることに。
ひとつは、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で視覚効果賞を受賞したダブリン出身のリチャード・ビネム(Richard Baneham)さん。(2度目の受賞だそうです!)
そして、北アイルランド出身の俳優による北アイルランドを舞台にした『アン・アイリッシュ・グッバイ(An Irish Goodbye)』(2022)が短編実写映画賞に輝きました。
登場人物はたった3人という短編ブラックコメディ。アイルランドでは今、RTEプレイヤーで視聴可。日本からもVPNを使えば見られるでしょうか→
こちら 25分ほどの短編ですが、120分の作品を観たに等しい満足感。アイルランドの荒涼とした風景もいいです。(ロケ地は北アイルランドのカウンティー・ダウン、カウンティー・アントリム、デリー)
疎遠になっていた兄弟ターロックとローカンが、母の死により再会。ターロックにおばの家へ行って暮らすように言われたダウン症のローカンは断固としてそれを拒否、ある策を思いつき、実行に移すのですが…。
VIDEO ほのぼのとした気持ちにさせられると同時に、どの家族にも起こり得る「ケア」の問題を考えさせる作品。
ここではダウン症の息子をケアしていたお母さんが亡くなったことで問題化しますが、老々介護の介護者が亡くなるとか、家族の誰かが突然病気になるとか、そのとき家族としてどうすべきか、ということを提起しているようにも思いました。
余談&勝手な想いですが、神父さんが素敵なアランセーターを着ていたこと、ターロックのセリフに「バンシー」のひと言があったことから、この作品が『イニシェリン島…』を包括して受賞したってことにして、悔しい気持ちを少しおさめました(笑)。
(『イニシェリン島…』の原題は『ザ・バンシーズ・オブ・イニシュエリン(イニシュエリン島のバンシーたち)』)
ローカンを演じたジェイムズ・マーティンさんは、オスカーを受賞した初のダウン症の俳優だそうです。授賞式がちょうど31歳のお誕生日と重なり、監督のトム・バークリーさんの呼びかけで、会場中がハッピー・バースデーを大熱唱するという心温まる場面もありました!(ダイジェストでは、この場面もロバの登壇も省かれていましたが)
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