ここ数日、ウィスキー関連の視察グループさんのご案内&通訳の仕事をしていました。
昨日は南部カウンティー・コークのミドルトンにあるジェイムソン蒸留所(
Jameson Distillery Midleton Cork)をご案内。

ダブリン市内にもジェイムソン蒸留所(
Jameson Bow St. Distillery Tour, Dublin 7)がありますが、現在実際にウィスキーを製造しているのはこちらミドルトン。写真のような旧蒸留所の建物は見学可能なビジターセンターで、そのすぐ隣りの工場で製造が行われています
1780年にダブリンで創業したジェイムソン・ウィスキーは、1960年代、ミドルトン、パワーズと合併してアイリッシュ・ディスティラーズとして再出発。1975年からは、原料となる大麦の産地に近いこちらアイルランド南部のミドルトン蒸留所でジェイムソンはもちろん、パワーズ、レッドブレスト、ミドルトンベリーレアなどさまざまな銘柄のウィスキーが製造されています。
近年世界的にウィスキー愛飲者が増え、ウィスキーの需要が急速に高まっているとのこと。ウィスキーは熟成期間が年単位なので、すぐには市場に出回りません。10年もののアイリッシュウィスキーに急に人気の火がついたとしても、10年前の見込みで製造した量しか供給できないわけで、そのあたりの需要と供給のバランスを読むのがなかなか難しい商品のようです。
昨年9月、アイリッシュ・ディスティラーズは2億5000万ユーロ(約362億円)を投じ、現ミドルトン蒸留所の拡張計画を発表しました。
1825年創業のミドルトン蒸留所の200周年にあたる、2025年に稼働開始予定。新たに建設予定の新蒸留所は、アラジンの魔法のランプのようなアイコニックなカタチの、ポットスティルと呼ばれる蒸留機が外からも見えるガラス張りのデザインで、完成したあかつきには世界最大のウィスキー蒸留所となるそうですから、今後ますます大量のアイリッシュウィスキーがここから世界へ、そして日本へ輸出されていくことになりそうです。

見学ツアーでは世界最大の銅製ポットスティルも見ることができます!容量は32万ガロン/14万4000リットル…と言われてもあまりの量にピンときませんが(笑)

旧蒸留所内に近年設置されたマイクロ蒸留所。ここでは実験的なウィスキー作りや、トレーニングが行わており、アイリッシュウィスキーの特徴である3度の蒸留工程をひと目で見ることが出来ます
ウィスキーの世界は奥深く、製造工程の興味深いウンチクにはきりがありませんが、久しぶりにミドルトン蒸留所を訪れ、あらためて、そうだった、そうだったと思い出したことがありましたので、忘れないうちに覚え書きとして記しておきます。
ミドルトンは同一蒸留所内で異なる2タイプの蒸留方法を行う世界的にも珍しいウィスキー製造工場でして、ジェイムソンの主なブレンドウィスキーは、2つの蒸留方法で作られたスピリットを混ぜ合わせたものなのです。
アイリッシュウィスキーの蒸留は通常、上記のようなポットスティルを使用した「シングル・ポットスティル(単式蒸留)」が主流ですが、アメリカのバーボンなどグレイン・ウィスキーの蒸留にはコラムスティルという直立筒状の異なるカタチをした蒸留機が使用され、その蒸留方法を「連続式蒸留」と呼びます。
以前に訪れたグレイン・ウィスキーを中心に製造しているクーリー蒸留所が、コラムスティル使用でした。日本でもサントリーの白州蒸留所が、連続式を取り入れていますね。
ミドルトンでは、その2タイプの蒸留を同一蒸留所内で行い、出来上がったスピリットをブレンドしているのです。
ジェイムソンの代表的な3つのブレンドウィスキーを見てみますと、ジェイムソン・オリジナルは、コラムスティル蒸留のスピリットをバーボン樽で、ポットスティル蒸留のものをシェリー樽で熟成させ、それをブレンドしたウィスキー。ジェイムソンクレステッドはその逆。ジェイムソン・ブラックバレルはさらにユニークで、ポットスティル蒸留を1回、コラムスティル蒸留を2回おこなったものがブレンドされています。
その配合具合や、熟成に使用される樽の種類により、それぞれ特徴的な異なる味わいや風味が生まれるわけですね。ウィスキーの世界は奥深く、面白い。通訳しながら役得で知識を増やさせていただき、ありがたい限りです。

見学の最後には4種のウィスキーを試飲。一本260ユーロもするミドルトンバリークロケットレガシーも!味を知るのも仕事のうち、私もしっかり試飲させていただきました♪
それにしても、コロナ禍でガイド業がストップしていたせいで、私のガイディングの口はだいぶ重くなり、キレが悪くなった感あり。ウィスキー関連のご案内もコロナ禍以前は定期的にあったので、知識も定着していて言葉がスラスラ出ましたが、今回久しぶりだったせいで、通訳しながらとっさに日本語が出ず、ああ、そういえばこういう言い方するんだった、と後から思い出して悔やんだこと数回。
とくに、蒸留窯が銅製なのには理由があります、という説明のくだりで、「sulphur」の日本語がとっさに出なかった。銅には蒸気に含まれる「硫黄」を吸収する働きがある、という、ウィスキー作りの行程ではごく基本的な説明なんですが、ああ、あの卵が腐ったようなイヤ~な匂いの黄色い毒物で、「ケルズの書」のイエローの絵の具になった化学物質なんですっ!…って思いながら、「イオウ」の3文字がどうしても出ませんでした。
お客様にはあとで思い出して言います!と言って、そのままお話しし忘れてしまいました。スミマセン。きっと、話の流れから分かってくださったと思いますが。
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