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バルト海を滑走!海上のスケート大会(北欧2か国スケート遠征④)

【北欧2か国スケート遠征記】
①今年も来ました!フィンランドでスケート大会
②フィンランドでの湖上のスケート大会、今年も無事に完「滑」!
③北緯65度の街ルレオでオーロラ三昧! …より続く

白銀と氷のフィンランド&スウェーデンでの滞在を終え、約1週間ぶりに緑のアイルランドに戻りました。
フィンランドでの25キロに加え、昨日は、スウェーデンのルレオ(Luleå)で開催されたシー・アイス・クラッシック(Sea Ice Classic)という長距離スケート大会で、60キロを無事に完「滑」。
フィンランドでは凍った湖でしたが、なんとこちらは凍った海!厚さ20センチ近い氷に覆われたバルト海を滑走するという、なんともダイナミックな体験に心おどりっ放しでした。レースを完滑出来たことはもちろん、海を「泳ぐ」でもなければ「サーフィンする」でもなく、「滑る」というユニークかつスリルに満ちた経験をしたことがただただ嬉しく、楽しかったです。


フィンランドの湖でも十分広いと思っていたけれど、こちらは桁違いのスケール!

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北緯65度に位置するルレオの街に面したバルト海のボスニア湾。空港から市街地へ来るときにタクシーで渡った橋の下を滑っちゃいました!

フィンランドのクオピオでは湖で地元の人たちがたくさんスケートしていて、氷の周辺をクロスカントリー・スキーしている人も多く見かけました。貸し靴屋さんも湖畔に2軒あり、氷上のアクティビティーがさかん。
それに比べると、こちらルレオではこんなに広い氷があるというのにスケートをしている地元の人はほとんどおらず、せいぜい子どもが遊びでアイスホッケーをしているか、大人はキックスレッドを押しながら犬を連れて散歩している程度。聞くところによると、このように氷上にトラックが整備され、市民が利用できるようになったのは近年のことで、屋内でのアイスホッケー以外、この街にスケート文化は根付いていなかったそうです。
海に囲まれたアイルランドで、かつては誰も泳いだりサーフィンしなかったのと同じですね。

大会の前日、全10キロというトラックをくまなく「スケート散歩」した私たち。スケートをしている人にはめったに会わず、凍った海はスケート場というより、市民の憩いの場であることが見て取れました。

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このようなピクニック・エリアが氷上各所にあり、火を焚いて温まったり、バーベキューができるようになっているのです。ベビーカーに犬を乗せて氷上に繰り出したおばあちゃんとお孫さんが、ソーセージを焼いてランチ中。「あなたたち、昨日、アレを見た?」と言うのでてっきりオーロラのことだと思い「見た、見た!」と答えたら、イベントか何かで氷上に上がった大きな気球の写真を見せられました。ここではオーロラなんて当たり前すぎて、話題にもならないんですね(笑)

このおばあちゃんにも「オランダから来たんでしょ?」と言われましたが、ここではスケートをしている人=オランダ人と思われるよう。というのも、私たちが出場したのはオランダの大会で、毎年この時期になると何百人ものオランダ人がスケート大会出場のためにこの街にやって来るから。
オランダと言えばスピードスケート発祥の地であり、国技でもあるスケート大国。我が信州が誇るオリンピック金メダリストの小平奈緒さんもオランダにスケート留学していました。
私のスケート熱が再燃するきっかけとなった『銀のスケート』も19世紀のオランダの物語で、そこに描かれているように、人々は凍った運河の移動手段としてスケートを発展させてきましたが、近年気候が温暖になり、以前のように運河が凍らなくなってしまいました。オランダには1909年発祥という、運河でつながった11都市200キロをスケートで回る「エルフステーデントホト」という世界最長のスケートマラソン大会がありますが、それも1997年を最後に開催されていません。(もともと開催はまれで、20世紀を通して15回しか行われていませんから、温暖化が進んだ21世紀はより難しい…)
くすぶるスケート熱をかかえ、国外に氷を求め始めたオランダ人。11都市スケート大会と同じ200キロを滑る大会が、オーストリアの高地ヴェーゼンジー(Weissensee)で、そして2016年からはここルレオでも行われるようになったというわけです。

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氷の花瓶に活けられたのは、オランダの国花チューリップ

私たちが出場したシー・アイス・クラッシックは、3日間にわたって行われるグランプリ大会の前後に行わる耐久レースで、誰もが参加可能な順位のつかないスケートマラソン。
距離は10キロ、30キロ、60キロ、100キロ、200キロから選ぶことが出来、完走距離に応じてメダルがもらえます。

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大会前日に氷上のテント内で説明&顔見せ会があり、出場者が集まりました。オーガナイザーのブラムさん、スケートインストラクターのピーターさんが、オランダ語がわからない私たちのために英語も交えて説明して下さり、感謝

一連の大会の最終日いうことで参加者は30名と少な目でしたが、滑る側にとっては好都合。
そのうち15名は200キロの挑戦者と聞き、今や幻と化しつつある11都市スケート大会へのオランダ人の並々ならぬ情熱を感じました。やはり皆さん、200キロを滑るということに特別な想いがあるんですね。
うちのおじいちゃんは伝説のスケーター○○なんだよ、と、おじいさんの名前入りジャージを着ていた若者もいました。

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大会当日の朝、天気は上々。早朝に出発した200キロのチャレンジャーを追いかけるように、私たちは2時間半遅れでスタート!私は60キロ、チームメイトのヤマダさんは100キロに挑戦、お母さんと一緒に10キロに出た小さなお子さんもいて和やかな雰囲気(大会Facebookより→Schaatsen Luleå



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大会専属のカメラマンがたくさん写真を撮ってくれました。氷のコンディションが素晴らしく、フィンランドでの25キロより速く楽しく滑れたくらい(写真は大会Facebookより→Schaatsen Luleå

私がいかにも初心者っぽい風貌と滑りだったからか、インストラクターのピーターさんがときどき伴走しておしゃべりで気を紛らわせてくれたり、向かい風の盾になって前を滑ってくれたりしました。11都市スケート大会の経験者でもあるというピーターさんが、「長距離スケートはこうやって助け合うものなんだよ」と言うのを聞き、来る前に観てきた『De hel van '63(The Hell of '63=地獄の63年)』(2009)というオランダ映画の場面や精神がよみがえりました。(←Netflixで観られます)
11都市スケート大会の、1963年大会の実話をもとにしたストーリー。大寒波で気温がマイナス19度まで下がり、1万人の参加者中60数名しかゴールにたどり着かなかったという「地獄の63年」大会で、当時は防寒着も十分なものがなく、現在のような進化したスケート靴もない上、転倒してほかのスケーターのブレードで怪我をしたり、凍傷で動けなくなったり、目が凍ってしまったり。スケーターたちそれぞれが人生で犠牲にしてきたこと、チャンレジしていることを背負い、助け合い、語り合って友情を育てながらゴールにたどり着くのです。

映画のストーリーラインとは別に、印象的だったのがピースープ(えんどう豆のスープ)。町に着くと必ずピースープがふるまわれ、お腹をすかせたスケーターちたが奪い合うようにかっこむシーンが忘れられず…。
私たちのレースでは1周7キロごとにエイドステーションがあり、オーガナイザーのブラムさんはじめ、スタッフの皆さんが「ドリンクいる?」と聞いてくれるのですが、そのたびに「ピースープは?」と言いたくて仕方なかった!(笑)
残念ながらピースープはなかったのですが、途中で一回ホットジュースをいただき、さっと飲み干して滑り出すと、「ナオコヤマシタ、〇キロ達成、短い休憩を取りましたが、まだまだ力強い滑りを見せています!」…といった内容を英語でアナウンスしてくれて、まるでスゴイ選手になったかのような気分になったのでした。(笑)
(アナウンスは基本オランダ語なんですが、私たちにはちゃんと英語でしてくれるという気遣い)

これまでに25キロまではフィンランドで2度滑っていますが、それ以上は未知の世界。35キロを過ぎた頃から腰やお尻の筋肉が痛くなり、大丈夫か、私?と思う瞬間がありましたが、見るとほかのスケーターたちもそれなりに辛そう。そして、その辛いのを通り越したら楽になり、そこからはおおむね楽しく滑り切ることが出来ました。
ゴールすると「60キロの最初のフィニッシャーです!」とアナウンスされ、もうみんなフィニッシュして私が最後かと思っていたので嬉しかったです。(脚の長いオランダ人に勝ったゾ!✌)

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完「滑」メダルを手に、イェ~イ!60キロで約4時間でしたので、頑張れば100キロも制限時間内にいけるかも!

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ランニングアプリをスケート・モードにしてつけておいたら、こんなことにになっていました(笑)

その後、チームメイトのヤマダさんも無事に100キロを完「滑」してゴール。それも100キロの部の2人目のフィニッシャーで。我らがダブリン・ジャイアンツ(←私たちのチーム名)、なかなかの活躍ではないですか!
15名の200キロ挑戦者のうち、完滑者は2名のみでした。すごいですよね、8時間も9時間も滑り続けるんですから。今回滑り切れなくとも、毎年挑戦を続け、滑れる距離を伸ばしていくようなやり方をしている人もいるようでした。
あくまで見た目の印象ですが、出場者の半数は50代以上だったと思う。こうしたツアースケート(長距離スケート)の生涯スポーツとしての適性を目の当たりにしたような気がしました。私もマイペースで続けていこう!

そんなわけで、フィンランドに加え、スウェーデンまで来ちゃった今年のスケート遠征もおかげ様で無事に終了。
楽しい遠征旅行をご一緒下さったチームメイトのヤマダさん、ミワさんに心より感謝。家族や友人がアイルランドと日本でアプリを見ながら応援してくれたことも、とても嬉しかったです。
そして、今年もたくさんの大会関係者の皆さん、出場者の皆さんにフレンドリーに接していただき、その人たちとは来年もまた会えるかもしれないけれど、会えないかもしれない。でも、長い人生の中でほんの一時でも同じ空間とパッションを共有できたことがミラクルであり、そんな非日常の中での一期一会の人間関係が人生をより豊かしてくれるのだなあ、とあらためて感じたのでした。

さんざんサーフィンしたあと、目をつむっても尚、波が見えることがあります。今は目をつむると、スケート靴が氷に当たるカシャ、カシャという音と、広大な氷のバルト海が浮かんでいます。

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今回のメダルやら、記念品やら。来年も元気に出場するぞ~、スケート好きな皆さん、ご一緒にいかがですか~?😁
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コメント

Hongnao

お疲れ様でした。
いつもながらナオコさんには行動力に感服です。
ランニング、トレッキング、スキー、スケート、水泳にサーフィン.....あとなんだあ!?
オーロラまで見れちゃって! 一度くらい見てみたいものです....見れるところに行ける耐性が私にあれば!?ですが。
まあ1週間弱で100km近くも滑ったのですからまずはゆっくり休んでください。
そして、Six Nationsあと2つ!精一杯応援しましょう!!!

naokoguide

Re: お疲れ様でした。
Hongnaoさん、ありがとうございます!
運動神経ないので、すべて持久系ですが(笑)脚力はあんまりなかったんですが、サーフィン始めてから必要にかられてつけるようにしたところ、出来ることの幅が広がりました。
先日のアイルランドxイタリア戦は、フィンランドでアイスホッケー観戦しながら、スマホをチラチラのぞいてました。結構イタリアに点を取られてしまってヒヤヒヤ。
次回のスコットランド戦は、激しい対戦になりそうですね。スコットランドはグランドスラム阻止されちゃったから、アイルランドにもなんとか阻止してやる~って向かってくるでしょうし。楽しみ~♪
Hongnaoさんのアナライズをまた楽しみにしています!💓💓💓
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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