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イェイツの「イニスフリー」はヒースの花咲く島だった!

おかげ様でガイド依頼や各種お問い合わせが増えてきて、にわかに忙しくなってきました。
シーズンが始まるにあたり、団体ツアーさんからしばしばご質問いただくのが、花の時期。今日も「〇月のツアーではヒースの花咲く光景が見られますか?」というお問い合わせがありました。
(ヒースの花の時期についてはご質問が多いので、以前にこちらにまとめてあります→ヒースの花の見頃はいつ?(ホウス)(2017年8月))

ヒースの花と言えば、先日おこなったNHK文化センターさんのオンライン講座「文学ゆかりの地で歩く、ケルトの島アイルランド」の第一回、「W.B.イェイツの創作の源、スライゴ」でイェイツの詩に出てくる「イニスフリー」の意味をお話ししたところ、講座終了後に、その話が印象に残ったと複数の方にご連絡いただきました。

イェイツの代表作に、スライゴ近郊のギル湖(Lough Gill)を舞台にした「湖の島イニスフリー(The Lake Isle of Innisfree)」という詩があります。「イニスフリー」とはイェイツが湖に浮かぶ小島に与えた架空の地名で、アイルランド語で「ヒースの湖」を意味します。
アイルランド語で「島」は「inis(イニシュ)」、「ヒース」は「fraoigh(フリーック)」。イェイツはその2つを合わせて、英語読みで「イニスフリー」としたんですね。

詩の中に、(真昼の光を受けて湖が)「紫に輝く(a purple glow)」とういう表現がありますが、これは島に咲き乱れるヒースの花が湖面に映っているということ。
荒地を一面に埋め尽くすヒースの花は、アイルランドの夏の風物詩。その光景を「ヒース」という言葉をひと言も言わずに詩に読み込んだイェイツに脱帽。詩の舞台となった土地を知らないと、なかなか思い浮かべることのできない情景です。
文学ゆかりの地を訪れたり、その地について知る意義はここにあるんだなあ、と、講座をしている張本人の私もなるほどと思い入りました。

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アイルランド島内には6種類の「ヒース(heather)」と呼ばれる花があり、こちらは夏の後半に咲く花ぶりが小さいもの。いずれも色は紫がかったピンク色です(8月下旬にカウンティー・ウィックロウで撮影)

ヒースの花が野山一面に咲き乱れる光景をこの目で見たい!との想いでアイルランドにいらっしゃる方は少なくありません。「イニスフリー」とヒースのネタは思いのほか皆さんのツボだったようで、時間の限られた中、この話を含めるかどうか迷いましたが、お話しして良かった!

ちなみに、イェイツの詩とよく似たタイトルの「イニスフリー島(Isle of Innisfree)」というアイルランドの愛唱歌がありますが、これはイェイツ作品とは別物でして、ディック・ファレリー(Dick Farrelly)さんという作詞作曲家が1950年に発表した歌。
イェイツのイニスフリーの詩はこれより半世紀以上前に世に出ていましたから、ファレリーさんがそれに影響された可能性はありますが。
この歌は、ジョン・フォード監督のアイルランドを舞台にしたなつかしの映画、『静かなる男(The Quiet Man)』(1950年)のテーマソングとしても有名。映画の中の村の名も「イニスフリー」でしたね。(ロケ地はカウンティー・メイヨーのコング村)

イェイツのイニスフリー島はギル湖に浮かぶ小島ですが、この歌のイニスフリー島はアイルランド島の言い換えです。いずれの詩(詞)も望郷の念が込められている点は、共通していますね。
メロディも耳に心地よく、歌詞の意味を知らずとも郷愁を誘います。現在も多くの歌手たちに歌い継がれており、こちらはケルティック・ウーマンが歌う「イニスフリー島」。
講座にご参加くださった方が、イェイツのイニスフリーの詩からこの歌を思い出しました、とご連絡くださいました。まるて天使の歌声そのもの!



今回の3回にわたるオンライン講座「文学ゆかりの地で歩く、ケルトの島アイルランド」の裏テーマは、もしかしたら「ヒースの花」かもしれません!というのも、次回取り上げる「ナルニア国物語」にもヒースが頻出しますし、その次のブロンテ姉妹は、なにせエミリーが「ヒースクリフ」なる登場人物を創り上げたほど、「ヒース文学」の際たるもの。
アイルランドゆかりの文学者の原風景には、「ヒースの花咲く大地」が常にあったということでしょう。
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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