夕方のRTEニュースを見ていたら、内陸部ロスコモン(Roscommon)にある田舎の小さな小学校が、ウクライナからの生徒が加わったことで閉鎖を免れたことが報じられていました。
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Ukrainian students save Roscommon school from potential closure(RTE News)
昨年の秋、全校生徒9名となり、閉鎖か、さもなければ教師1名で運営せざるを得ない危機に直面していた小学校に、ウクライナから避難民としてやって来た子どもたち14名が加わり、今では当初の倍の生徒数に。校長先生が「ウクライナの子どもたちが私たちを救ってくれました」とインタビューに答えていました。
言語の壁を埋めるために語学専門の先生が週4日間派遣されているとのことですが、子どもたち同志も積極的に助け合っている様子。互いの言語を教え合いながらサッカーを楽しんでいるという男の子や、「あの子たちの言葉でヘルプしてあげてるの、これまでよりずっと楽しいわ」と誇らしげに話す小さな女の子を見て、微笑ましく思うと同時に、ウクライナの子どもたちの存在が地元のアイルランドの子どもたちに思いがけず素晴らしい体験をもたらしていることを知ったのでした。
子どもにとって、誰かの役に立てるという経験は大きな喜びと自信につながりますし、地理的にも文化的にも離れたウクライナという国との異文化交流を日々していることになるのですから。
アイルランドには、昨年12月の時点で、6万7000人のウクライナの人々が避難民として来ていて、今後10万人にのぼると言われています。(
Central Statics Officeの発表による)
アイルランドの人口が520万人であることを考えると、近隣のEU諸国に比べ、その受け入れ度合いは格段に高いことに。(イギリスもフランスも人口はアイルランドの約13倍ですが、受け入れはUKが約15万人、フランスが約12万人と、アイルランドのほんの2倍前後)
軍事的中立をポリシーに掲げるアイルランドはNATOに加盟しておらず、ウクライナへ武器の供与は行っていません。
(過去関連ブログ→
アイルランドはウクライナへの武器供与は行わず、
革命家の子として生まれたショーン・マクブライドが退けた「NATO非加盟」を今も貫くアイルランド(2022年3月))
その代わり、人道的支援として人の受け入れを…ということですが、アイルランド人も大変な住宅難に見舞われている中、次々やってくる人々の住むところをさまざまな方法で工面して、コミュニティーに迎え入れるという姿勢はあっぱれとしか言いようがありません。
よく一緒に仕事をする観光バスのドライバーの中には、ダブリン空港に到着するウクライナの人々を、受け入れ先へ送迎する仕事をしている人が多数います。
彼らから、興味深い話を聞きました。戦争が始まった直後は、誰もが「出来るだけ早く祖国に戻りたい」と、一時的な避難としてアイルランドに来ていた、と。ところが、戦況が長引くにつれ、「家も焼かれた、夫も殺された、祖国にはもう何もない。これからはこの国で子どもと共に生きていく」と、アイルランドで新たな人生を始める決意でやって来ている人が増えたというのです。
あの、ロスコモンの小学校に通うウクライナの子どもたち、そしてお母さんたちも、祖国は恋しいけれど、今はこの国で頑張っていこうと強い想いで日々過ごしているに違いありません。
そして、その状況を受け止め、自分たちのコミュニティーにとってもポジティブな変化であると前向きにとらえて事を進めようとするアイルランドの人たちの懐の深さには、日々感銘を受けずにはいられません。
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