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レオ・ヴァラッカー首相の「美しさと危うさ」

先月からの不在中のアイルランドのニュースを、遅ればせながらあれこれ見たり読んだりしています。(気になる記事は日々ピックアップしていたものも、ちゃんと読んでいないものもあったので)
新型コロナワクチンの2度目のブースター接種が18~49歳にもオファーされたこと、冬至の朝に太陽光線が差し込むニューグレンジ遺跡の恒例の儀式が3年ぶりに内部に人を招き入れて行われたこと、EUのプラスチックゴミ削減の要請に従い、タバコの吸い殻ゴミのクリーンアップ費用をタバコ会社が一部負担する法案が施行されたこと、国内の病床不足にも関わらず、中国からの入国者へのコロナ関連の制限は行わないこと、などなど。

そして先月半ばには、首相交代という大きな出来事も。前々首相のレオ・ヴァラッカー(Leo Varadkar)さんがティーショック(Taoiseach=「指導者」を意味するアイルランド語で、「アイルランド政府の長」を指す正式名称)に返り咲きました。
2020年6月、独立以来「内戦政治(Civil War Politics)」と呼ばれライバル関係にあった2大政党フィナフォール(Fianna Fáil=共和党)とフィネゲール(Fina Gael=統一アイルランド党)が手を結び、緑の党(Green Party)を加えた歴史的な連立政権が誕生。首相は2党のトップが半期ずつ交代で務めるとの取り決め通り、順当な交代と言えましょう。
【過去ブログ参照】→「内戦政治」の終焉、ミホール・マーティン首相率いる3党連立政権誕生(2020年6月)

レオ首相は2017年、歴代最年少の38歳で首相に就任し、お父さんがインド出身の移民2世であること、ゲイであることをカミングアウトしたアイルランド初の政治家であることから、国内外で話題となりました。パンデミック初期のリーダーシップも評価され、数々の名演説で国民の心を動かし一致団結させたことは記憶に新しいところです。
【過去ブログ参照】
最年少、移民、ゲイのアイルランド新首相(2017年7月)
ヴァラッカー首相のスピーチ考察① チャーチルの引用句ヴァラッカー首相のスピーチ考察② コクーン、「ナルニア」、嵐の前の静けさ…など(2020年3月)

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43歳で2度目の首相に就任したレオ・ヴァラッカーさん、今も歴代最年少の首相であることに変わりなし。写真はHandover of power as Martin and Varadkar switch roles (RTE News)より

レオ首相については賛否両論あり、先月発表されたアイリッシュインディペンデント紙による世論調査では、マーティン首相のまま交代しないで欲しいという人の方が若干多い結果に。(参照→Micheál Martin should remain Taoiseach rather than swap with Leo Varadkar, according to poll
良識と温かみのある、人好きのするキャラクターのマーティン首相に対し、異端児然としたレオ首相は少々つかみどころがない感じ。その不思議な存在感はカリスマティックでもある反面、言動が悪目立ちし批判にさらされることも。

そんなレオ首相のことを、アイリッシュタイムズ紙が「レオの美しさと危うさ(The beauty and risk of Leo)」の見出しで論じています。
これを読み、なるほど~と思ったのが、対人関係における彼の不器用さという点。確かにレオ首相って、その場しのぎの世間話は不得意そうだし、政治家にありがちな人に媚を売るような態度が一切ないんですよね。インタヴューなどでの忖度のない受け答えも、伝わる人にはストレートに伝わるけれど、リーダーに求められる共感力が足りないと言われたり、独善的な印象を与えてしまい誤解を招いてしまったり。
そんな彼の姿を見るたびに、レオがまた批判されちゃう~、とハラハラどきどき。あなたの一途な政治信条、私にはわかりますっ!って言ってあげたくなる(笑)。

個人的には彼のファンなので、マーティン首相にも大いに好感を持っていましたが、レオが首相に返り咲くことも楽しみにしていました。政治的リーダーシップのみならず、アンコンベンショナルな(=型通りでない)生き方も好き。
数年前、彼が首相に就任して間もない頃に国立美術館でお見かけしたことがあります。テレビで見るより細身で長身で、遠目からでも「レオだ~」とすぐわかる、すごいオーラを放っていました!(私がオーラを見た人は、後にも先にもレオとスティービー・ワンダーだけ!笑)
退任したマーティンさんも副首相&外務大臣として政権の中枢にいますから、異なるキャラクターの二人三脚でバランスはいいはず。どちらが首相でも副首相でも、この2人にリーダーシップをとってもらえる今のアイルランドはラッキーだと思います。

ちなみに、お隣りの英国のスナク首相とそろって、英愛両国のリーダーがインドからの移民2世となりましたね。
スナク首相は1980年生まれの42歳、レオ首相は1979年の43歳(まもなく44歳)で同世代。
アイルランドもインドも、かつては英国の植民地だった国。アイルランドの独立から100年、インドの独立から70年が経ち、3国の関係性がこういった形を取ることになるとは誰が想像したでしょう。
この2人のリーダーにより、英愛の関係、とくに北アイルランドに関する案件がよりスムーズに進展することが期待されています。停滞する北アイルランド議会の現状打破、英国のEU離脱で脅かされるベルファスト合意(和平合意)の固持など。

今、アイリッシュタイムズ紙の「アイルランドが自由になって100年、インドがラージから抜けて70年、インドの血を引く2人が二国をリードする(Two men of Indian heritage lead their nations, a century after Irish freedom and 70 years since India cast off the Raj)」という記事を読んでいます。
ざっと読んだまでで理解が曖昧な部分もありますが、インドとアイルランドでは英国に植民地化されたという集合的な記憶が異なる、という指摘は非常に興味深い。アイルランド人は移民先でそのストーリーを語り伝え、ヘリテージを伝えることができたけれど、インド人にはそうするチャンスも能力もなく、本国に生き残った人は読み書きができなかったり、主人に恩義を感じていたことなどから、悲しみのストーリーが伝えられてこなかった…と。
記事の書き手はアイルランド在住のインド系ジャーナリスト。彼女は、首相になった2人だけでなく、縁の下の力持ちとなって国を支えているその他大勢の移民の存在にも目を向けて欲しい、と記事を結んでいます。

住宅不足に物価高、外を向けば北アイルランドに、ウクライナに…と難題だらけですが、これからもレオ首相の舵取りを見守り、応援したいと思います!

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首相交代に伴い、新たに任命された閣僚たち。人事異動は最小限のシャフルにとどまりました。写真はReshuffle: Who is in the new Cabinet? (RTE News) より
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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