明日より、アイルランド映画『恋人はアンバー(Dating Amber)』(2020)が日本で劇場公開されるようですね!
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日本での公式HP気になりながらもまだ観ていなかったので、昨晩、アマゾンプライムUKで視聴。軽めのラブコメディかと思いきや、思いのほか心揺さぶられ、ホロリ、じ~ん、そして最後は泣かされました。😭

2020年公開時の当地での宣伝ポスター。日本でのものよりコメディタッチな感じ💛
1995年のアイルランドの田舎を舞台に繰り広げられる、ティーンエージャーの男女の青春映画。よくある青春映画と違うのは、2人がゲイとレズビアンであること。
この映画、当初は『Beards(ビアーズ)』というタイトルだったそう。「beard」は「髭」を意味する英単語ですが、ゲイやレズビアンの男女がその事実を偽るために連れ添うニセのガールフレンド、ボーイフレンドのことを指すスラングでもあります。
物語はまさに「ビアーズ」となる2人の話で(会話の中でもその言葉が使われる場面あり)、自分がゲイであることを受け入れられないエディと、レズビアンであることを隠すアンバーが、家族や友人に悟られずになんとか高校卒業までやり過ごそうと付き合っているフリをするのです。
こんなふうにLGBTであることをひた隠しにしなければならないというだけで切ないですが、時は90年代、LGBTなんて言葉もなかった時代の語。同性愛者に対する偏見や差別がいかにひどかったかは、1993年までアイルランドでは同性愛が犯罪だった(!)という事実から想像がつくでしょう。
(その約20年後の2015年に、世界初の国民投票による同姓婚の合法化が達成されるとは、そのとき誰が予想したでしょう!)
1995年というのはアイルランドで離婚が合法化された年でもあり、エディとアンバーが暮らす田舎町でも国民投票のキャンペーンが行われている様子が背景にチラリ出てきます。
90年代半ばというのは、現在のリベラルなアイルランドにつながっていく、社会の変化の兆しの兆し…程度のものが見え始めた頃だったのかもしれません。
ちなみに、エディとアンバーが暮らすのはダブリンの隣県カウンティー・キルデアのザ・カラ(The Curragh, Co. Kildare)。
氷河時代に削られてできた大平原が広がるエリアで、アイリッシュ・ダービーが開催される有名なカラ競馬場と、アイルランド国防軍の施設があります。
車社会となった今でこそダブリンへの通勤圏ですが、90年代当時は、中途半端にダブリンに近いぱっとしない田舎。東京に対しての埼玉県みたいな位置づけ、といったところでしょうか。
実はかれこれ20数年前、1年間だけザ・カラ付近に住んでいたことがあります。朝起きてカーテンを開けたら窓一面真っ白、まさかこんな時期に雪?かと思いきや、なんと羊の大群が家を取り囲んでいた…という珍事があったなあ(笑)。
見ていていいなあと思ったのは、この2人が乗り越えていかなくてはならない壁の大きさが、普遍的なメッセージとして伝わってきたこと。表面的にはLGBTのティーンの苦悩を描きつつも、当時はこんなに偏見がはびこっていて大変だったんです、とか、みんなと違うのは辛いことなんです、といった「特別な」問題解決の話に終始せず、自分を偽らず生きて行こうよ!という誰にも響くストレートなメッセージが伝わってくるのがいい。なんだか清々しい気持ちになりました。
友情に性別は関係ないなあ、と嬉しくなったりもして。
主演の若い2人もチャーミングでいい演技しています。
エディ役のフィオン・オシェイ(Fionn O'Shea)君は、
2020年、コロナ禍初期のステイホーム中にアイルランド全国のお茶の間をクギ付けにしたTVドラマ『ノーマル・ピープル(Normal People)』(邦題「ふつうの人々」)に出ていました。あの時は、ヒロインのマリアンに言い寄るイヤ~なヤツで、エディとはまったく違う役を好演していましたね。
そして、個人的にもっとも注目したのは、エディのお父さんと、アンバーのお母さん役の2人。
アイルランド映画ファンの方はきっとお気づきになられることでしょう。なんと、知る人ぞ知るケン・ローチ監督の名作『ジミー、野を駆ける伝説(Jimmy's Hall)』(2014)のジミー役(Barry Ward)と、恋人のウナ役(Simone Kirby)のお2人ではないですか。
ジミーはすぐに気がつきましたが、ウナは最後の方になってもしや…と思い、女優さんの名前を確認したらやっぱりそうでした。あの映画、あまり話題にならなかったけれど好きだったので、こんなところで2人の共演が見られて感激。(夫婦役だったらもっと良かった・笑)
90年代の懐かしの音楽もいい感じでした♪
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