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ハイジの村とアルムの山小屋、そしてシュピリの散歩道へ(ハイジの舞台を訪ねて②)

アルムの山に来ています!(ハイジの舞台を訪ねて①)...の続き。

素晴らしいお天気に恵まれて、「アルムの山」でこの2日間、心ゆくまでハイジゆかりの地巡りをしました。
スタートは、ハイジの山小屋などを再現した「ハイジの村(Heididorf)」。

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『ハイジ』の世界観と作者ヨハンナ・シュピリのこの土地への愛着を伝えることを目的に、1997年につくられたという「ハイジの村」。入り口は私が宿泊しているホテル&レストラン、ハイジホフのほぼお隣り

物語の中での地理設定をいっさい無視して(笑)、「ハイジ村」としてひとまとめにしたテーマパークのような場所です。

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オフィスで入場チケットを購入し、いざ見学開始。この写真の背後に写っているのは、ハイジとおじいさんの「デルフリ村」の冬の家(「ハイジ村」の敷地に入るのは無料ですが、それぞれの家の中に入るにはチケットが必要)

どうやらここは私が思っていた以上に一大観光地のよう。朝10時のオープンと同時に行ったため静かな時に見学できましたが、観光バスで訪れる団体グループや、お子さん連れのご家族が続々とやって来て、土日を通してとてもにぎわっていました。

どの家も『ハイジ』が出版された1880年頃の様子を再現したもので、物語の中の描写にも忠実。当時の暮らしや、シュピリの執筆の背景についての説明が各部屋にあり、物語の世界観がより広がります。

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冬の家で勉強するハイジとペーター。そういえば、ハイジのちぢれ毛と黒い目は父親(とその父親のおじいさん)ゆずりだそうですが、ここに来てからずっとハイジみたいな外観の子供を探していますがいまだ出会いません。ブロンドの子供ばかり

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世界各国の『ハイジ』本。日本語訳は上田真而子さんの岩波少年文庫

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ハイジがおじいさんと住んだアルムの山小屋。なんと、アニメとそっくりではないですか!アニメが1974年、ここが出来たのが1997年ですから、もしや日本のアニメを見て再現してたりして…

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室内の間取りもそっくり。屋根裏にはちゃんと干し草のベッドもありました!(クララの車椅子も!)

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大工仕事をするおじいさん。ハイジの椅子とかなんでも作れちゃうんですよね

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家畜小屋の一画で、映像になった世界のさまざまな『ハイジ』が紹介されていました。日本のアニメは世界20か国語に翻訳されているそうで、「ヨッホヨッホヨホヨホ~♪」という私たちにお馴染みのアニメの主題歌を口ずさみながらスキップしている日本人ではない人にすれ違いました。どこの国の人だったのかな~(こっそり小声で続きを歌っちゃった・笑)

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「ハイジ村」に日本のハイジがあちらこちらにお目見えしているのはそういうわけだったんですね。私たち日本人のためだけじゃなかった!

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村の中心に皆さん、勢ぞろい。一昨日到着時に迎えてくれたのは(「ハイジ村」駐車場前)ハイジとペーターと動物たちだけだったけれど、今度はおじいさんとクララもいて嬉しい💓

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ホンモノのヤギ。今はヤギの放牧はほとんど見かけませんが、ハイジの時代にはヤギは「poor man's cow(貧しい人にとっての牛)」と呼ばれ、山に住む人たちは牛より飼育にお金のかからないヤギを育てていたそう。ミルクもより滋養がありますしね

ほかにタウンホール兼ハイジとペーターが冬に通った学校があり、その内部の説明書きに『ハイジ』が執筆された頃はスイス全土に義務教育が浸透し始めた頃だったと書かれていました。
教育熱心な両親のもとで育ち、チューリッピで語学や音楽を勉強したこともあったヨハンナ・シュピリは、当時の女性としてはしっかりした教養を身につけた人でした。男女問わず教育が必要であるとの彼女の考えが、『ハイジ』の物語に表れているとの説明が印象的でした。

予想以上に見ごたえがあり、かなり時間をかけて「ハイジ村」を楽しんだあと、いよいよ「アルムの山」をハイキング。
物語の地理的な設定になぞらえるなら、この「ハイジ村」をデルフリ村として、ここからさらに小一時間かけてアルムおんじの山小屋へ…といったところでしょうか。
ハイジヒュッテ(Heidihütte)という、やはりハイジとおじいさんが暮らした山小屋を再現したらしい建物を目指します。

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標識に従って急なけもの道をいっきに登ると、「ハイジ村」を見下ろす場所に。アルムの山へ登るハイジの気分。デルフリ村よ、しばし、さようなら~

森あり、舗装された小道あり、牧場を横切る道あり、と、なかなか楽しいハイキング・コース。「ハイジ村」のにぎわいが嘘のように、めったに人に会いません。ところどころにドイツ語で近道の表示があり、それに従って進むとかなり急勾配なけもの道だったり…というサプライズも(笑)。

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森を抜けて「ペーターの家」に着くと、番犬がしっぽを振ってこちらに来ました。歓迎してくれてありがとう

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この「ペーターの家」、ずい分と立派だと思いません?アルムおんじが建て直してくれたに違いない!(笑)

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ハイジの気分で牧場をかけあがってみました。ああ、山がきれいだけど、この景色、どこかで見たことあるような…ん?菅平高原?!

ここでまた故郷ネタですみません。旧真田町、今や我が上田市のの菅平高原にはダヴォスというスキー場で有名な場所があり、そこはスイスのダヴォス(Davos)に由来しています。ダヴォスってスイスのどこにあるんだろう…とあらためて地図で見てびっくり、なんと今いるマイエンフェルトと同じグラウビュンデン州にあり、車なら1時間もかからない距離ではありませんか。
この辺り一帯がなんだか上田っぽくて、アルムの山なのに菅平高原に見えてしまうのも当然だった…笑。

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所要1時間半とのことでしたが、1時間位で目指す「ハイジの山小屋」が見えてきました。「ハイジ村」から5.7キロとありましたが、かなりショートカットしたので5キロもなかった気がします

ここで標高1111メートル。「ハイジ村」から500メートル程登ったことになります。高かった山がどんどん同じ目線になり、東から西まで南側の2000メートル級の山がずらり。
ヒュッテはレストランになっていましたが立ち寄らず、もう少し高い場所まで登って草の上にごろりん。おじいさ~ん、ペーター~、クララ~、アルムの山よ、こんにちは~。しばし菅平を頭から追いやり(笑)、ハイジの気分で空や雲を眺めて過ごしました。

下りは「ハイジ村」ではなく、イエニンス(Jenins)というお隣りの集落を目指しました。イエニンスは『ハイジ』出版の10年前にヨハンナ・シュピリが滞在し、『ハイジ』の着想を得たと言われる地です。(注)

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曲がり角に来ると必ず、こういう黄色い標識が出てくるのでとても分かりやすい。目的地までの距離や時間も記されていることも

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これまで背後になっていた山が正面に。ハイジも大好きだったモミの木と、黄色く色づいた広葉樹が混ざり合ってきれい

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いろいろなキノコがあちらこちらに生えていました。昨日も今日も日中25度近くまで上がりかなり暑いですが、それでも秋なんですね…

小一時間かかってイエニンスに到着。マイエンフェルトより小さい集落ですが、なんだか洗練された雰囲気。
シュピリがここに避暑に訪れたのは1870年、43歳の時。女学校時代の友人宅に滞在し、読書したり、散歩したりして過ごしたそうです。
【追記10/20】この後、ヒルツェルのヨハンナ・シュピリ博物館で説明を聞き、シュピリはこの時だけでなく、少女時代より何度もこの地方を訪れていたことを知りました。思い出のつまった、大好きな場所を『ハイジ』の舞台に選んだんですね。

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村の中心には小さな古い教会が。シュピリも来たかもしれませんね

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マイエンフェルト同様にこちらもブドウ畑がいっぱい。山の上から見えた黄色のパッチワークはすべて、黄葉したブドウ畑だったんだ!と分かりました

このイエニンスからロウアー・ロッフェルズ(Unter Rofels)という集落に続く小道(Unterer Rofelserweg/Teilerrüfeweg)を散歩しながら、シュピリは小説の構想を練ったと言います。彼女の足跡をたどって、私も同じ道を歩いてみました。

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自転車人口多し。そして、ベビーカーを押しながら散歩する人にも多く行きあいました。スイスも子供が多い国なのでしょうか?

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鈴なりの姫りんご。落ちたのを数個いただきました(笑)

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ヤギかと思ったらヒツジの群れでした。ここではなんと、ヒツジもカウベルをつけてるんです!カウベルじゃなくて、シープベル…?(笑)

ちなみに、ヒツジの背後に見える山々が、『ハイジ』の原作に実名で出てくるフェルクニス(Felknis)山とケサプラナ(Schesaplana)山のようです。
フランクフルトのお屋敷で心を病んでいくハイジが、この山が夕陽で赤く染まるのを夢にまで見て、帰りたいと胸を痛めるシーンが思い出されます。ハイジがアルムの象徴とした山々。シュピリもきっとこの道から眺めたに違いません。

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ロフェルズ村のブドウ畑越しに見る「アルムの山」。いちばん左がフェルクニス山(2562メートル)、いちばん右がケサプラナ山(2964メートル)だと思います。滞在3日目にしてやっと山の姿と名前が一致してきました

ケサプラナ山には雪が積もっているとハイジはおじいさんに話していますが、150年前は夏でも山頂には雪があったのでしょうか。
温暖化の影響でしょうね、もう10月ですが雪らしきものはまったく見られません。

このシュピリの小道がとても気に入り、昨日も今日も歩きました。
シュピリがこの地に滞在したことが『ハイジ』執筆のきっかけになったことは間違いありません。だとしたら、ここが『ハイジ』の物語の種がまかれた、ハイジ誕生の聖地であるような気がして。

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歩いているうちに、このロッフェルズ村が「デルフリ村」のモデルではないか…なんて気もしてきました。おじいさん、パン屋さんと喧嘩しないでね(笑)

ハイジが「山が燃えてる!」と大感激したアルムの山の夕陽のこと、そして、今から40年程前、私が『ハイジ』の舞台が実在することを知るきっかけになった「ハイジの泉」については、長くなるので後日に。
明日はいよいよ山を降りる日です。カウベルの子守歌で眠るのも今夜が最後...。(昼夜問わずずっと聞こえているのですが、それが耳に心地いい)
フランクフルトに連れていかれたハイジの気持ちがひしひしと胸に迫り、なんだか寂しい…😢
明日はクララのおばあさんが滞在したバート・ラガーツへ行きます。

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ハイジホフでの最後の夜。ついにペーターの部屋も見つけました!笑

(注)シュピリに関する記述は以下を参照。
『アルプスの少女ハイジ』松永美穂・訳(角川文庫)
『アルプスの少女ハイジ』遠山明子・訳(光文社古典新訳文庫)
『ハイジ紀行』新井満/新井紀子・著(講談社)
『ヨハンナ・シュピリ初期作品集』田中紀峰・訳(夏目書房新社)

【追記】この旅の記録の続き
ハイジの泉、そして「山が燃えてる!」(ハイジの舞台を訪ねて③)
クララのおばあさまが滞在したラガーツ温泉にて(ハイジの舞台を訪ねて④)
ヨハンナ・シュピリの生まれ故郷ヒルツェルへ(ハイジの舞台を訪ねて⑤)
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コメント

yuji ikeda

ハイジの村とアルムの山小屋
こんにちは!
毎回日記、楽しみに拝見しております。
私も故郷が上田市(昔は丸子町)になりますので、共感箇所があり、投稿しました。
烏帽子岳登山の思い出、巨峰で有名な東御市(東部町と御代田町が合併)には今ではワイナリーがあり、丸子にもワイナリーが誕生しております。いずれも烏帽子岳を見上げる、標高600mを超える場所であります。
菅平高原では夏には根子岳登山とキャンプ、冬にはまさにダボスでのスキー教室が楽しみでした。ダボスにはハンネス・シュナイダー氏の記念碑が建っていたと記憶しています。羊とセントバーナードはおりませんが牛、ブドウ、リンゴ、黄葉樹、カラマツ、アカマツ、キノコは我がふるさと同じかなと思って拝見しておりました。ハイジの物語のことは不勉強ですがクララが突然歩き出し、お父さんが驚いていたシーンは印象的でした。大自然のパワーがなせる治癒であると信じています。直子さんのお話を読んで、自分の故郷の素晴らしさとその地域で生まれ、育ち、生きてこれたことに改めて、感謝し、誇らしくなりました。北半球、厳しい冬に向かっておりますので、お体、ご自愛下さい。いつも素晴らしい日記をありがとうございます。

naokoguide

Re: ハイジの村とアルムの山小屋
ikedaさま、こんにちは!
読んでくださり、そして嬉しいコメントをありがとうございます!
そうそう、シュナイダーの碑だった、なんてアレコレ思い出しながらコメント拝見しておりました。
今日、ランチのときにたまたま相席になったスイス人ファミリーにも、「我が町にもダヴォスがあるの。私、日本のスイスから来たの~」って自慢していたところでした(笑)
私もまったく同感。今回のスイスの旅でのいちばんの収穫は、我が故郷の素晴らしさ再発見だったかもしれません。
これからはスイスが上田みたいなんじゃなくて、上田に帰ったらいつも、スイスみたい~って思うかもしれません!笑

こちらこそ、いつも読んでくださり、励ましてくださりありがとうございます!
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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東京・アイルランド大使館にて講演!ブログ参照
2024年1月12日(金)
10:30~/14:00~
「アイルランドの集い~北アイルランドを中心に魅力を語る~」
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東京・銀座にて講演!ブログ参照
2024年1月14日(日)
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