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サンティアゴ大聖堂のボタフメイロを見て…(北スペインの週末③)

聖パイオ修道院のサンティアゴ・ケーキを買いに行くほかに、20余年ぶりのサンティアゴ・デ・コンポステーラ訪問で私がしたかったもうひとつのことは、サンティアゴ大聖堂のボタフメイロ(大香炉)の儀式を見ることでした。大聖堂の天井から吊り下がっている巨大な香炉が、ぶるんぶるんと宙を舞うのです!

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11世紀から長い期間をかけて建造・改増築されたサンティアゴ大聖堂は、ロマネスク、ゴシック、バロック様式が混在する荘厳な建物。サンティアゴ巡礼路の最終地点であり、地下に安置されている聖ヤコブ(サンティアゴ聖人)の聖遺物(遺体)を拝むことができます

大聖堂自体は添乗員時代に何度も見学しているのですが、ミサの最後に行われるボタフメイロを振る儀式は見たことがありませんでした。
この儀式は常に行われるわけではなく、必ず決まっているのは年間12日程度。それ以外の日は、そのための特別な献金をする人や団体があった場合のみ行われます。
最近は旅行会社が献金として料金を支払い、儀式をしてもらうこともできるそうですが、私が添乗員をしていた90年代にはそういう制度がなかったのか、大聖堂は見学すれど、ミサに参加することはしていませんでした。

今年2022年は、5~11年に一度しかめぐってこないサンティアゴの「聖年」に当たります。(聖ヤコブの祝日7月25日が日曜日となる年。暦の上では2021年でしたが、パンデミックのため延長され、今年も「聖年」扱いに)
世界各国でコロナ禍の制限が緩和され移動しやすくなったこともあり、大聖堂周辺は巡礼者や観光客でいっぱい。日に3度行われるミサはいずれも大行列でしたが、人が多いほどボタフメイロの儀式に献金する人がいる確率も高くなるはず。きっと見られるに違いない!…と信じて長蛇の列に並び夕方のミサに参列したところ、なんと行われず。がっかり…。
ほとんど心折れかけましたが、友人トモコさんの励ましで再び朝のミサに行き、2度目の正直で見ることが出来ました。
(すでに見ていたにもかかわらず、一緒に行ってくれたトモコさん、ありがとう!)

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これが巨大な振り香炉ボタフメイロ。重さはなんと80キロもあるそう!

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乳香の香りと煙を振りまきながら、ぶんぶん宙を舞う様は圧巻。最大振り幅は、天井すれすれ、あと15センチでぶつかっちゃう…というところまで。もともとは何日間も着の身着のままで巡礼路を歩いてきた巡礼者の、衣服の匂い除けとして始められたとか…

動画で見るとより迫力あり。アイルランドのご案内やオンライン講座でいつもお世話になっているユーラシア旅行社さんがYouTubeで動画公開していますので、ご興味のある方はぜひ。
  ↓
-HD-巡礼の終点、サンティアゴ大聖堂のボタフメイロ(スペイン)-Santiago De Compostela Spain, Botafumeiro-(ユーラシア旅行社 旅動画チャンネル)

「聖年」ということで、普段は閉鎖されている「聖なる門(Pueruta Santa)」がオープンしていました。その門から2度も大聖堂に入ったので、私がこれまでに犯したすべての罪は赦されたはず!(この門を通る人にはそういうご利益があるらしい・笑)

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わざわざ別の門を作って覆い隠し保存している、12世紀のオリジナルの「栄光の門(Pórtico da Gloria)」や、博物館も見学しました(いずれも有料・要予約)。写真は博物館上階のバルコニーから見下ろす聖堂前のオブラドイロ広場

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大聖堂から徒歩3分のアパートメントに滞在していたので、そびえ立つ聖堂をさまざまな時間帯に見ることができました。夜のライトアップも迫力あり、月齢13日(満月2日前)の月が輝いていました

こうした聖地と呼ばれる地を訪れると、長きにわたり観光業にたずさわってきた者として思うことがあります。中世の聖地巡礼こそが、現代の観光旅行のはしりである、と。
サンティアゴ巡礼に例えて言えば、巡礼者はただ歩いていただけではなく、土地の教会や聖地に立ち寄り、景色を楽しみ、郷土料理を味わい、人々の暮らしや文化に触れることで見聞を深めていたわけです。現代の私たちが観光旅行でしていることと、まったくもって同じ。
ヨーロッパでも日本でも、観光地と言えば古い教会寺院や神社仏閣が主流。現代の観光名所は、当時の人々が聖地として崇め訪れた場所にほかなりません。
さらに、巡礼者が来ることで巡礼路沿いに宿ができ、食事をするところができ、必需品や土産物が売られるようになり…と、土地の経済活動にも寄与。今日の観光産業のはしりと言って過言ではありません。

厳粛なミサに続いて行われたボタフメイロの儀式を嬉々として見物しながら、昔の人々の聖地探求の想いが、今に生きる我々のまだ見ぬ土地を旅してみたいという気持ちにつながっているんだなあ、としみじみ想い入ったのでした。
先人の想い、喜び、楽しみ、そして、時には悲しみや失敗からの教訓がもとになって、現代の私たちに「観光」という素晴らしい文化・経済活動を伝え残してくれたんだなあ、と。

ちなみに、世界初の旅行ガイドブックは、サンティアゴ巡礼路の案内書だそうですね。
巡礼路の順路、道中の村や町、おすすめスポットや注意点などが記された12世紀の『カリクストゥス写本』。サンティアゴ大聖堂の古文書館に保存されているそうです。
現代のガイドブックの著者としては、感慨深い話。やはり私も、近いうちにサンティアゴ巡礼路を歩いてみなくてはなりません!
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コメント

Yama

声明の美しさ
歓喜の丘を左に、走るように坂を下っていくと遠くに大聖堂が見えました。途中で結婚式に出会い、バグパイプを演奏している小父さんにご挨拶。

聖堂の中を美少年の僧がうたう声明が響き渡り、ボタフメイロが左右に揺れて、その振りが次第に大きくなっていきました。「日本から巡礼に訪れてくださった皆さん」との呼びかけもあって感激です。(1910年6月)

聖なる門(Pueruta Santa)」を通ったので今までの罪が許された----いったんリセットされましたが、懲りず罪を重ねています。

naokoguide

Re: 声明の美しさ
私も!(←罪を重ねる件・笑)
スピード違反のポイントみたいですね。(こちら、12ポイント重ねたら免停ですが、3年でポイントが消えるのです)

聖なる門から入ったということは、Yamaさんも聖年に行かれたんですね。
ボタフメイロは圧巻でした!

ダブリン~サンティアゴデコンポステーラへの直行便があり、11月はフライトが激安。片道20ユーロ弱で行けるので、また行こうかと思案中です。今回足をのばすことの出来なかったケルトの遺跡へ行ってみたいので!
ガリシア地方、大好きです。
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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