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アイルランドの人口、171年ぶりに500万人を越える

4月に行われた国勢調査の速報結果が発表され、アイルランド共和国の人口は現在512万3536人と報じられました。
前回の2016年の調査より7.6%増。1851年以来、171年ぶりに500万人を上回りました!
(国勢調査は通常5年ごとですが、今回パンデミックで一年遅れで行われました)

CensusPreliminaryResults0622
Census of Population 2022 - Preliminary Results(CSO)より

私がアイルランドに初めて来た24年前の人口は、確か370万人くらいだったように記憶しています。特にこの20年、経済成長の追い風を受けて急速に増加し、街は目に見えてにぎやかになり、住宅不足が叫ばれるまでに。
しかし、現在の数が過去最大なわけではなく、19世紀半ばまでのアイルランドの人口は今以上に多かったのです。ピークは1841年で、500万人どころか600万人を越えていました。(島全体では800万人以上)
ところが、1845~49年にアイルランド全土を襲ったジャガイモ大飢饉による餓死や移民で人口が激減。1851年には500万人に減少しました。
その後も飢饉の痛手から立ち直ることが出来ず、19世紀末のアイルランドは4人に一人が移民として国外へ流出。独立後も目立った増加は見られず、1961年にはジャガイモ大飢饉前の半数以下となる、280万人にまで落ちこんでしまったのです。

CensusRTENews0622
1841年からのアイルランドの人口推移のグラフ。RTEニュースのYouTube動画より→Ireland's population above 5 million for first time since 1851(RTE News)

ですから、500万人を越えたことで「ひとつのマイルストーンを刻みました!」などと高らかに報道されるのは、171年かかってやっとジャガイモ大飢饉直後の数にまでどうにか「回復」しましたよ、ということなのです。

とは言え、昔と今とでは人口分布はまったく違ったものとなっています。
現在人口がもっとも集中しているのは首都ダブリンを含むアイルランド東部で、人口最多のカウンティーも当然のごとくダブリン(145万人)ですが、飢饉前の1841年の調査結果を見ると、カウンティー・コークが最多。ゴールウェイ、ティペラリー、メイヨー、ダブリンと続きます。
現在500万人で大変な住宅難ですが、それは都市部に人口が集中し、単身で暮らす人が多くなったから。
600万人いた時代は、都市部はわずかな富裕層のみで占められていたのでガラガラ。その反対に、今や人も住まない荒地や痩せ地にその他大勢のアイルランド人がひしめき合っていました。彼らは貧しい農民で、茅葺屋根の小さな民家に大家族がすし詰め状態…。
人口分布が今とはほぼ逆だったわけですね。

今回の国勢調査の全集計をまとめた公式結果の発表は来年4月だそうですが、速報結果から考察される興味深いポイントを以下にまとめておきます。
【参考記事】What does Census 2022 tell us about Ireland and its population?(Irish Times) など

・2016年より約36万人増加したが、そのうち自然増加が17万人、移住が19万人。つまり過去6年間、出生数は死亡率を上回り、国外へ移住した人よりも国内へ移住して来た人の数が上回ったことに。
・過去6年間の人口増加率は、その前の5年間の増加率の2倍。
・過去6年の人口増加率は、住宅数の増加率を2%上回っている。つまり、住宅が足りていない。(住宅危機解消の国の政策が追いついていない)
・別荘を除く空き家の数は、2016年より9%減。
・空き家の5分の1が賃貸物件。ゴールウェイ(38%)とダブリン(30%)でその率がもっとも高く、短期賃貸またはAirbnbの可能性大。
・女性1000人に対する男性の比率が、1871年以来最低。

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この週末はガイド業でも通訳業でもない、普段なかなかすることのない仕事をいただいていました。その仕事場からのダブリン・シティーの眺め
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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