アイルランド人のベスト・セラー作家
メイヴ・ビンチー(
Meave Binchy)。
おとといの夜、彼女の初期の作品
『ライラック・バス』のTVドラマがRTÉで放映されているのを見てなつかしくなり、久しぶりに小説を読み返しました。

(ハーディング祥子訳・青山出版社)
この『ライラック・バス』が、私が最初に読んだビンチーの作品。
日本にいるお友達が
「ナオコちゃんのいるアイルランドの人たちも、私たちと同じようなこと考えて暮らしてるのね~」と翻訳本を下さったのがきっかけでした。
それ以降、
ビンチーの鋭い人間観察や心理描写、どことなくユーモアのある描き方、テンポのいいストーリー展開、そしてロマンス小説っぽいのにオチはいたってホームドラマ的なところ…がとても気に入って、他の長編小説も次々に読破。
ビンチーの作品は日本語に訳されているものも多いし、原書で読んでもさほど難しくありません。
ダブリンの知った地名が出てくるのも魅力のひとつ。
自分が暮らしている街が舞台だなんて、なんだか
私の生活までドラマチックになったかのような気分~。
ある小説では、私の住まいのすぐ近くにオフィスを持つビジネスマンが、主人公の女の子をだまして貢がせた挙句にスペインにトンズラ。「あのオトコ、見かけたらただじゃおかないぞ~」なんて気分になったりしてました。(かなり影響されやすいワタシ)
『ライラック・バス』は、ダブリンからラスドーンというアイルランド西部の町(架空)へ同名のバスに乗って毎週末に帰省する8人のお話。
ある週末のことが、章ごとに8人それぞれが順繰りに主人公になる形で描かれています。
同じバスに乗り合わせる8人ですが、その日常や心の動きはさまざま。
ケチで悪名高いナンシー、不倫に悩む育ちのいい娘ディー、ちょっとウザイけれど人のいいジョーク好きのミッキー、母のアル中に悩むセリア、ハーブを育てている魔女っぽいジュディ、ボーイフレンドと暮らすゲイのルパート、姉の病気を人知れずサポートするトムなど…。
章が変わるとみな脇役になるので、それぞれの価値観や生き方が、別の目からは微妙に違って描かれているのが、この小説のなんともユニークで面白いところです。
『ライラック・バス』は84年の作品で、TVドラマ化は90年。
登場人物の服装や髪型(ドラマでは小説に忠実にこの特徴を捉えていて感心しました)、アイルランドの経済事情などはかなり古ぼけているものも、中味の方は今もって新鮮。
時代は変われど、
人々の心象風景や日常生活、悩み事の質や内容というのは、案外変わらないものだなあ、としみじみ思いました。
その後の作品に比べるとドラマチックさには少々欠けるものの、
ビンチー小説の王道とも言える作品で、私はとても気に入っています。
RTÉが『ライラック・バス』の再放送をしたのは、昨晩の
ビンチー原作の新作ドラマ『Anner House』放映の伏線だったようです。
南アフリカのケープ・タウンを舞台としたドラマで、主人公の女性が同名のゲストハウスを開くお話なのですが、なんと
ドラマの通り、Anner HouseのHPが実在するのには驚いた!
残念ながら、ホテルのブッキングは出来ないみたいですけどね~。
- 関連記事
-
コメント
honyomi-world
見てみたいな~~。
とてもいい作品で、大好きです。
2007/09/24 URL 編集
naokoguide
DVDになったりしていないかしら?
探してみます。
2007/09/25 URL 編集