5月5日(木)に投票が行われた北アイルランド議会選挙で、アイルランド統一を支持するナショナリスト政党のシンフェイン党が最多議席を得て勝利を確定しました。
これまで第1党だったイギリスとの連合を支持するユニオニスト政党、DUP(民主統一党)は議席数、得票率ともに減少させて敗北。1921年の北アイルランド発足から約100年、ナショナリスト政党が第1党となるのは初のことで、「歴史的な得票」(北アイルランド・メディア)、「政治情勢の大変革の始まり」(アイルランド・メディア)などと報じられています。
シンフェイン党と言えば、かつてはテロ組織に紐づいた極右政党…といったイメージが色濃かったものですが、近年は物価高への対策や医療の充実といった身近な問題を取り上げることでイメージ転換をはかり、有権者層を徐々に拡大。
前回2017年の選挙ではDUP(民主統一党)に1500票差まで迫り、今回は66000票上回っての大勝利となりました。
思い返せばシンフェイン党の躍進は、過去数年にわたり、北アイルランド・アイルランド両サイドで顕著になりつつありました。
過去の拙ブログを見返すと、今回の結果に至る兆候は2年前からすでにあったよう。2020年1月のイギリス下院総選挙の際、北アイルランドではナショナリスト側が初めてユニオニスト側の議席数を上回る結果となっています。
そしてアイルランド側でも、翌月のアイルランド総選挙でシンフェインは大躍進を遂げ、首位政党にわずか1議席差で獲得議席数第2位に。
これまで決して相容れなかったアイルランドの2大政党が連立することで、シンフェインが政権中枢に入るのを防いだという経緯があります。
そんなわけで、過去数年にわたりシンフェインがアイルランド、北アイルランド両サイドで存在感を強めてきたことは確かなのですが、今回の選挙結果が北アイルランドにおけるナショナリスト優勢を表しているかというと、必ずしもそうは言えないようです。
ユニオニスト/ナショナリストのどちらも支持せず、中立的な立場を取る北アイルランド同盟党が議席数を倍増させ、シンフェイン、DUPに続く第3党に躍り出たことにも注目すべきでしょう。
アイルランドの閣僚たちが次々にコメントを述べる中、レオ・バラッドカー副首相は、今回の北アイルランド総選挙でのいちばんの勝者は同盟党である、と強調。ナショナリスト政党とユニオニスト政党へ投票した人の割合が減少し、宗教や民族、国家のアイデンティティーによって定義されることを望まない中間層が拡大していると指摘しています。
それはとても心強いことで、未来に向けた新しい北アイルランドをつくる機会となるでしょう、とのレオ副首相の発言が印象的でした。
※参照記事
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Northern Ireland election results: Sinn Fein becomes largest party at Stormont with 27 seats - as it happened(Belfast Telegraph)
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Northern Ireland awakening to drastically changing political landscape(RTE News)
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'Incumbent on all political parties' to form Executive - Taoiseach(RTE News)

北アイルランド議会、今後どうなる?白亜の北アイルランド議事堂「ストーモント」(2012年8月撮影)
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コメント
Jun
シンフェイン党はナショナリスト色を薄くして、国民生活の政策中心に投票を訴えたことも功を奏した気がします。アイルランドの次期選挙でもシンフェイン党の躍進(第一党確実?)がメディアで騒がれてますね。
2022/05/09 URL 編集
naokoguide
そうなんですよね、今回の北アイルランド選挙ではシンフェインは戦略的にナショナリスト色を潜めていましたね。
アイルランド国内ではシンフェインは若者層に支持されているようです。現状維持ではなく、何か新しい突破口を求める人たちのよりどころになっているような印象。でも、じゃあシンフェインに具体的な策があるかというと、そこのところは弱いんですよね。
今後の北アイルランド/アイルランドの政治情勢、なかなか興味深いです。
2022/05/09 URL 編集