「アンとケルト」の講演でお訪ねした福岡。講演前日に到着し、ケルト協会代表の山本啓湖さんが博多の町をご案内くださいました。

大きな川が流れる博多は、川沿いという点はリフィー川沿いに発展したダブリンのようであり、中州に発展したという点はまるでコークのよう
龍宮寺というお寺には、なんと人魚のお墓がありました!一般公開はされていないものの、今も人魚の骨が保存されているのだとか。案内版にはこう書かれていました、「貞応元年(1222年)博多津でとらえられた人形は、吉兆として当寺に納められました。これにちなんで現在の寺号に改めたと伝わります」。吉兆だとは言え、捕らえられた人魚には災難でしたね…
博多には名所・名物がいっぱい。いろいろ見せていただいた中で、とくに印象的だったのが博多名物の「おきゅうと」という食べ物でした。
博多町屋ふるさと館の博多人形作りの実演を見物。名人が製作したという昔の風俗を表した見事な人形群の中に「おきゅうと売り」(写真右奥)なる聞きなれないものが…(ちなみに手前の人形は「あぶってかも」売り、スズメダイの塩漬けを焼いたもので炙って噛むのでその名が付いたそう)
「おきゅうと」とは、干した海藻を煮溶かして固めた博多伝統の食べ物で、朝の食卓に欠かせないものだったそう。かつては「おきゅうと」売りなる職業の人がいて、毎朝売りに来ていたそうです。
海藻を煮溶かすなんて、まるでアイルランド伝統のカラギンモスのブラマンジェのようではありませんか。
折しも翌日の講演で、モンゴメリ作品にも登場しているカラギンモスについてお話することにしていたので、これぞカラギン博多バージョン!と、がぜん興味がわいたのでした。
※カラギンモスについての過去ブログ→
アイルランドの海藻食代表、カラギンモスのブラマンジェ(2022年1月)
「おきゅうと」の原料となる海藻はエゴノリだそうですが、「えご」と言えば新潟の海藻食。今年初めのオンライン講座でカラギンモスについてお話した際、新潟に「えご」というよく似た食べ物があることをお客様に教えていただいたばかりです。
もしや同様のものでは…と調べてみると、やはり、この「おきゅうと」文化が商船や漁船により博多から佐渡に入り、越後各地へ伝わったとのことでした。佐渡には「えごねり」、京都には「うご」という類似の食べ物があるとのこと。
※過去ブログ参照→
カラギンモスで水ようかんを作る!(2022年1月)
うわ~、つながった!
「えご」の話を聞いて食べてみたいなあ、と思っていたら、思いがけず、その由来となった「おきゅうと」に先にたどり着いてしまいました。
博多のスーパーには今も小判型に固められた状態の「おきゅうと」が売られているとのこと。
近くに適当なスーパーがなかったので、どこかで食べられるところがないかしら、と山本さんがあれこれ聞いて下さり、メニューに「おきゅうと」があるという町の居酒屋さんを見つけてくださいました。

どうやらここに「おきゅうと」があるらしい。人気の居酒屋さんのようでお客さんがいっぱいでした
お店に入り、「おきゅうと、ありますか?」と尋ねる私たちに、常連さんらしき年配のご夫妻が「おいしいわよ~、私たちいつもここに食べに来るの」と声をかけてくださいました。
どうやらこの町には今も「おきゅうと」文化が息づいているようです。

博多名物のもつ鍋、水炊きもアリ。「あぶってかも」も食べてみたかったけれど、残念ながらシーズン前でありませんでした

こちらが探し求めた「おきゅうと」!小判型に固めたものを細切りして食べるんですね。わけぎとかつお節、ポン酢でいただきました
つるっとしていて、太めのところてんのような食感で美味しい♪
ポン酢がかかっているせいか、海藻臭はまったく感じられませんでしたが、そう言えば、ところてんも海藻の匂いは特にしないですよね。
アイルランドのカラギンモスでも、固めに作れば似たものが出来るかもしれません。
この夜、翌日の講演用スライドを再編集しました。福岡にもアイルランドにも類似の海藻食があることで、少しでもアイルランドに親近感を持っていただけたら…と思い、「おきゅうと」の写真を追加。
ガイディングも講演も、興味を持って聞いていただくには、聞き手との「知識の共有」が大切。たくさんの新しい情報の中に自分の知っていることや身近な話がちらっと出てくると、ほかの話題も聞きやすく、理解しやすくなるものです。
今回の講演では「おきゅうと」がそんな役目を果たしてくれたかな?
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