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『銀のスケート』とスケート大会

北国でのスケート大会がいよいよ数日後に迫ってきました。
この週末、フィンランドで行われるアイス・マラソン(Ice Marathon)という湖上でのスケート大会に出場します!

昨年12月頃だったでしょうか、たまらなくどこかへ行きたい衝動にかられネットであれこれ調べていたところ、ふと目にとまったのがこのイベントでした。
アイススケートは、寒冷地で育った子供時代に、凍った田んぼで小学校の先生に習いました。球技が不得意だった私にとって、夏は水泳、冬はスケートがスポーツで活躍出来る唯一のチャンスでしたから、寒くなるとスケート靴を肩にぶら下げてはすべりに行ったものです。
あれから○十年の月日が流れていることを半ば忘れ、「昔取った杵柄」で無謀にも出場申し込みをしてしまいましたが…。

雪や氷に無縁のアイルランドでは、ウィンタースポーツの出来る場所は限られています。この大会への出場を決めてからというもの、クリスマス前後の1~2ヶ月だけオープンするダブリン市内の仮設リンクはもちろん、ベルファーストやコークへも「氷」を求めて頻繁に足を運びました。
※過去ブログ→ベルファーストでアイススケート!ベルファースト・ジャイアンツのホームでアイス・スケート!子どもたちとアイススケート&プレイグラウンド!アイルランド唯一の野外スケート場、アルペンスケートトレイルへ!…など

ついにはマイシューズも購入。一時はアイススケートが盛んなオランダへ練習旅行に行くことまで考えましたが、この熱量で滑り続けたら当日までに飽きちゃいそう…と心配になり(笑)、最後の2週間はスケート靴ははかず。ジョギングをしたり、スポーツマッサージに行ったりして身体を整えて過ごし、いよいよ明日フィンランドへ出発です!

スケートの練習のほかに、この大会に向けてしたことがもうひとつ。子どもの頃に大好きだったスケートにちなむ本を読み返しました。
スケート大会に出場するというアイデアに私がこんなにワクワクするのは、おそらくこの『銀のスケート靴』という物語の影響かと思います。オランダの物語で、貧しい兄妹が主人公。お兄ちゃんのハンス少年は貧しさからスケート靴が買えず、手作りの木のスケートでキーキーと音を立てながら滑るという有り様。
記憶喪失のお父さんと、失われた千ギルダーのお金の行方をめぐる物語は、兄妹が出場するスケート大会でクライマックスに。優勝すれば「銀のスケート靴」がもらえるのです!
当時私が繰り返し読んでいたのは小学校の図書館にあった少年少女向けのダイジェスト版でしたが、文庫版の長編があることを知り日本から取り寄せ、それこそ40年ぶりくらいに懐かしのハンスとグレーテル兄妹に再会しました。

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当時私が読んでいたのは『銀のスケート靴』のタイトルでしたが、復刻版の岩波文庫は『銀のスケート ハンス・ブリンカーの物語』 (M.M.ドッジ作、石井桃子訳、岩波少年文庫)。この復刻版さえも絶版のようで、古本で購入。銀ではないけれど、私の白いスケート靴です⛸

石井桃子さんのひと昔前の古めかしい日本語訳が、1865年発表という古い物語にぴったり。子どもの頃からこういう文体の翻訳で外国文学を読んできたので、それも含めて懐かしさマックスに。
すっかりうろ覚えになってしまっていたストーリーの細部も確認でき、スケート大会の活き活きとした臨場感あふれるシーンに大興奮。ああ、この場面が子どもの頃からずっと心に残っていたせいで、北国でのスケート大会に無意識に魅かれ、思わず出場することにしちゃったんだなあ、と腑に落ちました。
急にスケート大会に出たくなるなんて、もしや私、ミドルエイジクライシスか?とも思いましたが、潜在意識に眠っていた子どもの頃の夢へのセンチメンタルジャーニーだったんですね、きっと。(笑)

石井桃子さんのあとがきによれば、作者のドッジさんはオランダ系アメリカ人で、ご先祖の地オランダに強い興味と愛着を抱き、自分のお子さんにオランダの地理や歴史、暮らしの様子を話して聞かせていたことから物語が生まれたそう。
子どもの頃に読んだダイジェスト版では省かれていたかと思うのですが、物語の本筋とは別に、少年たちが運河を伝ってスケート旅行に出かけるくだりが何章にもわたりえんえんと書かれているんですね。その描写がオランダの歴史案内、観光案内にもなっていて、読み進めながらオランダの机上旅行も同時に楽しみました。(しかも移動手段はスケートで!)
石井さんいわく、小説に歴史や観光案内が盛り込まれることは昔の本にはよくあることだそうです。そう言えば、『ニルスのふしぎな旅』も原作はスウェーデンの地理を網羅した長編小説だと聞きます。昔は本のジャンルを今のように細分したり、子どもの本、大人の本という区分けもあまりしなかったのかもしれませんね。

そんなわけで、ハンスやグレーテルのように上手に速く滑れるかはわかりませんが、私の心の中の賞品「銀のスケート」を目指して頑張って滑ってきます!
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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