新型コロナの制限も緩和され、来たる観光シーズンに向けて急速に動き始めているアイルランド。
この2日間、観光ガイド向けのリフレッシュ講習会に参加し、2年間眠っていたガイディングに必要な基礎知識をみっちり復習してきました。

ダブリン市内のホテルの会議室に現役ツアーガイド約25名が集い、丸2日間、朝から夕方までみっちり講習。休憩時間には久しぶりのガイド仲間との近況報告&情報交換も出来、有意義なひとときでした
講師はアイルランドにおけるツアーガイドのレジェンド、ヴィニー・バトラー先生。20年前に私が観光ガイドの資格所得コースを受講したときもヴィニーがメイン講師でした。時々こうして現役ガイド向けにリフレッシュ・コースを開催してくださり、知識の再確認&新しい情報収集が出来るのがとてもありがたいです。(
前回受講したのは4年前でした)
ヴィニーの話はとにかく面白い。地殻変動でアイルランド島が形成された頃の話から、先史時代、キリスト教、中世アイルランドの黄金時代、イギリス支配、大飢饉、革命と独立…と時系列に沿ってアイルランドのあらゆるトピックを網羅。地質学、考古学、自然環境、暮らし、政治経済…など、ときには地球規模に話を広げつつ、細かい年号・地名・人名も完璧。
まるでヴィニー自らが何億年も生きていて、歴史の現場にすべて立ち会ってきたかのような臨場感。2年間眠っていた「ガイド能」「ガイド魂」のようなものが刺激され、今すぐにでもロードトリップにお客様をお連れしたい気持ちになりました!
アイルランドではガイド業は通年のフルタイムの仕事になりにくく、若い人で観光ガイドを主業にしようという人は少なく、リタイアした元学校の先生とか、子育てが終わった世代の人が多いです。今回の講習会参加者では、最年長は83歳のジャックさん。健康で需要さえあれば、生涯出来る仕事なんだなあ、と嬉しくなりました。
一方、20年前に私と同じクラスでガイド資格所得コースを受講したクラスメートは、今回の講習には私のほか誰もいませんでした。もっとみんなに会えるかと思ったのに、ちょっとがっかり。
思えば当時、私がクラスで最年少で、ほかのみんなは40代~60代くらい。あれから20年経ち、職を変えたか、引退したかで、もはや現役でガイドをしている私のクラスメートはほとんどいなんだ…ということに気がつき茫然。
ヴィニーに、私たちがいちばん古参かもね、と言うと、アイルランド人らしいドライなジョークのセンスで、みんな墓の中から手を振ってるよ、ははは~と豪快に笑い飛ばしていました。20年、ひと昔ですね…。
講習で得た知識や情報の中にはまったく新しい(もしくは私がスルーしていた?)ことも。
例えば、中石器時代にこの島にいた人たちは目は青いけれど肌は浅黒い、アナトリア(現トルコ)起源の人たちだったそう。
私はてっきりその後の新石器時代の人たち同様、青い目、白い肌の人たちだと思っていたので、驚いたと同時に、ダブリン市内の国立博物館の展示パネルにある青い目、浅黒い肌の人のイラストが思い浮かび、そうか、ずっと変だと思っていたけれどあれは正しかったのね!と腑に落ちました。
こうして知識が数珠つなぎになる瞬間、快感ですよね。(笑)
そして、石好きのヴィニーがアイルランド島の地質の特徴から話を始め、その後の歴史や人々の営みを位置づけていくトークが見事で、同じガイドとして非常に参考になりました。私たち観光ガイドの仕事は、目に見える景色から自然の営みや歴史を引き出して伝えること。それはアイルランドの地質を知るところから始まるんですよね。
そんなヴィニーがこのたび石の標本を作成し、講習会でお披露目されました。その名も「Ireland in a Box(箱につめたアイルランド)」。ヴィニー自らアイルランド中を周って集めた、この島を形成する特徴的な岩石20種類の標本で、それぞれの石の裏に記された番号が、別紙の名前、年代、産地などと対応しているので学習用にも便利です。

美しい!私も石オタクの気があるので、ひと目で見せられ即購入。この中でいちばん古い石は17億5300万年前の片麻岩(右下)、なんと長い営みでしょう
私が20余年暮らし、ガイディングしてきたアイルランドの大地の結晶。それぞれの石を見るとその場所の景色や名所が目に浮かび、想いはアイルランド各地に飛んでいきます。
万が一、私がアイルランドを離れることがあっても、これだけは大切に持っていたい。昨年でガイディング生活20年を迎えた記念の品として、大切にしようと思います♪
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コメント
hikaru
そして、この石の標本!
サイトを開いた瞬間に、うわ、これ欲しい!とPCにかぶりついてしまいましたが、
手作りでしたか。通販があったら意外なヒット商品になるかも。
石好きは結構多いです。
これにアイルランドの地図+αが着いて、あ〜、ワクワクします。
2022/02/21 URL 編集
naokoguide
これ、素晴らしいですよね!手作りだけど、先生が販売しています。それほど高額な値段ではありませんでした。
当地にいらっしゃることがあれば、購入のお手伝いさせていただきますよ!
先生がどのくらいの量を作っていて、今後継続的に販売する予定があるのかどうかわかりませんが、おそらくアイルランド土産に欲しい方も多いのでは…って思いました。
確かに通販でヒットしそうですよね!
2022/02/21 URL 編集