今週14日(金)に迫った
オンライン講座「『赤毛のアン』で歩く、ケルトの島・アイルランド」の準備していたら、食べたくなって作ってしまったあるモノ。
「ミッシーの部屋」(『時の扉の向こうには』L.M.モンゴメリ作/リー・ウィルムズハース編/いぬいななこ訳、篠崎書林に収録)という短編に「矢筈角又(やはずのつのまた)のゼリー」(Irish moss jerry)として登場する、カラギンモスのブラマンジェです。

大きな容器でたっぷり作り、ガラスのグラスに取り分けていただきました♪
上の写真のお皿の上のもしゃもしゃしたモノが、乾燥させた状態のカラギンモス(carragheen moss)。
アイルランドの大西洋岸地域で古くから食されてきた岩場に生える海藻の一種で、カラギンとはアイルランド語で「小さな岩(little rock)」の意味だそう。アイルランド国外では、アイリッシュ・モスと呼ばれるようです。
海藻食が一般的ではないアイルランドにおいて、唯一、古くから食されてる海藻がコレかもしれません。
熱を加えるとゼリー状になるので、天然のゼラチンとして使用され、牛乳と煮溶かしてゼリーまたはブラマンジェを作るのが一般的。古くはデザートというより、薬用効果の高い病人食だったようです。

材料は一握りのカラギンモス、牛乳1リットル、卵1個、砂糖少々。ほとんど味がないので、アイリッシュコーヒー・ソース(もちろんアイリッシュ・ウィスキー入り!)を作ってかけ、ブルーベリーをトッピング。レシピはバリマルーハウス(Ballymaloe House, Co. Cork)のものを参考にしました→
Carageen Moss Pudding
カラギンモスはこんなふうに乾燥させた状態で売られています。こちらは近所のダブリン生協のショップで買ったドネゴール産のもの。以前はアイルランド西海岸の産地近くや、ダブリンではヘルスショップなどにしか置いていませんでしたが、昨今のアイルランドは健康ブームも手伝って海藻食が見直されていますから、一般のスーパーにも置いているところが多くなっているかと思います
私が初めてこれを食べたのは、今から15年ほど前、北西部ドネゴールのレストランでした。若いウェイターの男の子が「アイルランドの珍味を召し上がれ」とサーヴしてくれて、見た目は牛乳かんなのに、磯の香がかすかに舌に残るこの食べ物はいったい何?と驚いたものです。
当時、当ブログでも「
アイルランドの珍味カラギン・プディング」(2006年9月)として紹介しましたが、この頃はアイルランドの伝統食がやっと掘り起こされ始めた頃で、アイルランド国内でも今以上に知られていませんでした。
※一昨年アラン諸島でも食べました!→
イニシュマーンの夏休み③ 小さな島のグルメ宿(2020年8月)
ちなみに、寒天と並ぶ海藻加工品として日本でもよく知られる「カラギーナン」という添加物は、このアイルランドのカラギンモスにヒントを得て開発、命名されたものです。
カラギーナンは寒天よりなめらかで弾力性があり、味がなくノン・カロリー。アイスクリームなど乳製品やゼリー状の食べ物に世界中で広く使用されているそう。(近年、発がん性があるなどとしてカラギーナンの安全性を危惧する声があがり、使用を制限する国も出てきているようですが)
カラギンモスを使ったレシピは、19世紀に移民したアイルランド人によってアメリカやカナダへ伝えられ、むしろそちらで発展したようです。
そのため、カナダ東海岸のプリンス・エドワード島を舞台とするモンゴメリ作品にも登場するわけですが、その辺りの詳しい事情は14日の講座にて♪(まだまだお申込み受付中です!→
こちら)
それにしても、我ながら美味しい。喉や胸の痛みを抑え、抗菌作用もあると言いますから、コロナ禍に食するにもぴったりです。
ただ今回バニラエッセンスを入れたせいか、それとも、牛乳に加えるカラギンモスの量が少なすぎたのか、磯の香がまったく消えてしまいました。
海藻慣れしてないアイルランド人にはその方がいいかもしれませんが、やはり私は、せっかく海藻を使っているんだから、初めてドネゴールで食べたときのような海藻臭がちょっとある方が好み。次回は工夫してみようと思います!
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