
リサデル・ハウス(1833年完成)
アイルランド独立時代の闘志であり、女性として初の国会議員となった
コンスタンス・マルケビッチ伯爵夫人(Countess Markiewicz, 1868-1927)。
彼女がゴア・ブース(Gore Booth)家の長女として恵まれた少女時代を過ごしたお屋敷
リサデル・ハウス(Lissadell House)は、若き
W.B.イエーツ(W.B.Yeats,1865-1939)ゆかりの場所としても知られています。
今から3年ほど前、このお屋敷が地元の資産家によって買い取られた時は、新聞などで大きく報道され話題となりました。
アイルランドの歴史に名を残す人物が足跡を残した
リサデル・ハウスは、単なる19世紀の豪邸というばかりではなく、文化資産として保存されるべきもの。それが、個人の成金趣味によって変貌してしまったらどうしよう…多くの人がそんな懸念を抱いたことと思います。
昨年より一般公開が始まったリサデル・ハウス。今回、初めて訪れてみて、そんな心配は全く無用だったことが分かりました。
現オーナーのエドワード・ウォルシュ(Edward Walsh)&コンスタンス・カッシディー(Constance Cassidy)夫妻は、
リサデルを19世紀の黄金時代に戻そうと、屋敷の購入以来、ご自身の資産を投げ打って修復・復元に努めておられるのでした。

お屋敷の入り口に並べられた長靴!ご夫妻と7人の子供さん(14~4歳!)のもの。ご一家のお人柄がうかがえます
あいにくこの日は、奥様のコンスタンス(マルケビッチ伯爵夫人と同じ名!どうやら血縁関係でおられるようです)と7人の子供さんは外出中で、ご主人のエドワードと義妹さんのイザベルが、館内と周辺を熱心に案内してくださいました。

W.B.イエーツが「教会のように(天井が)高い」と賞した
大ホール
イエーツがコンスタンスやその妹と語り合った
書斎
マルケビッチ伯爵夫人の
愛犬Poppet。おそらく夫人自身が描いたもの。彼女の銅像や肖像画はいつもこの犬と一緒!

限定版
『ケルズの書』の完全コピー。リサデルはまるでスライゴのオールド・ライブラリー!古い貴重な本や資料がいっぱい

コンスタンスの父ヘンリー・ゴア・ブース(Henry Gore Booth)が北極で射止めた
熊の剥製
イエーツが滞在した寝室広大なお屋敷見学の途中、地下のキッチンの一角でひと休み。
温かいティー&コーヒー、ワイン、手作りのパイやピザなどでもてなして下さいました。感激!
フィッシュ・ケーキ(マッシュしたポテトに具を入れて焼いたもの)はアイルランド伝統のお味。日本のおにぎり…みたい?おいしくてたくさん食べちゃいました~
室内の家具、調度品、陶器なども、オークションなどに出向いて出来る限りオリジナルを買い戻しているそうですが、ここにもオーナー夫妻のこだわりが。
例えば、ゴア・ブース家がイタリア旅行で買って来た絵などを買い戻したりすると、それにだけ莫大な費用をかけることになってしまうし、アイルランドの文化遺産保存としてはあまり意味がないことなので、それよりは
アンティークとしての価値が低くとも「アイルランド製のもの」にこだわってオリジナルを買い戻すようにしているのだそうです。
オーナー夫妻がリサデルとそれを守ろうとする人々の気持ちを心から大切に思っていることががうかがえるようなエピソードで、とても印象に残りました。
広大なお庭も見せていただきましたが、運営資金の節約のため、
現役の法廷弁護士であるエドワード自ら庭仕事や修復作業を行うこともあるそうです。
将来的にはティールームを設け、向かいの湾で取れるオイスターを出したり、ガーデンをもっと整備したり…と、訪れる人にリサデルで一日中過ごしてもらえるようにしたいとのこと。
今後がますます楽しみです。
自分の贅沢のためでなく、
文化的・歴史的なものにその資産とエネルギーを投資していこうというオーナーご夫妻の姿勢とお人柄に、ガイド一同、大変感激、共感したのでした。
リサデル・ハウスの復興プロジェクトはまだまだ始まったばかり、と言うエドワード。
スライゴの文化遺産のひとつとして、一人でも多くの人に訪れてもらえるよう、微力ながら、私も応援させていただきたいと思っています!
Lissadell Houseオープン: 3月17日~9月30日 11:00-18:00(最終ツアーは17:00)
入場料: 大人6ユーロ、子供3ユーロ
(冬季の見学は事前のアポイントのみ・要Tel 071 9163150)
行き方: スライゴよりドネゴール方面(N4/N15)へ。Drumcliffを過ぎて左へ入る(サインポストあり)

ダブリンへ帰る列車の中からBofin Loughを眺めるGerryと、乗り合わせたおじさん。
ジャック・B・イエーツ(W.B.の弟で画家)がこの湖の絵を描いていますが、原画がリサデルにありました!
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