まずは、
「カナダxアイルランド」コネクションについて書いた、この日の日記にコメントをくださったメイホアさんにお礼を申し上げなくてはなりません。
トロント育ちのアイルランド人作家…ということで、『妖精王の月』の作者O.R.メリングさんについて言及してくださり、そのおかげでメリングさんご本人と知り合うことが出来たのですから!
『妖精王の月』(講談社)は以前から読みたいと思っていた作品で、何度か日本語訳を購入しようとしたのですが、すでに絶版のため手に入れることが出来ないまま時が経っていました。(中古本は、海外で購入するのが難しいのです)
原書の『The Hunter's Moon』は手元にあり、物語に出てくる場所や地名を拾い上げるべくページをめくって読んだものの、ちゃんと腰を据えて精読したとは言えず、半ば忘れかけていました。
アイルランドを舞台にした、妖精の存在を信じる2人のティーンエージャーの少女の物語。古代の史跡から「あちら」の世界に足を踏み入れてしまい、不思議な冒険の旅が始まる…という、夢と現実の境界線があいまいなケルトのマジックがたっぷりつまった現代の妖精物語。
ダブリン、タラの丘、バレン、ロスコモン、北西部の端っこにあるインチ島…と、アイルランドの実在の地名や場所を妖精界とパラレルに旅するので、なんとも旅ごころ誘われる物語でもあります。
『妖精王の月』を皮切りに「妖精シリーズ」として6冊、それ以前に書かれたものが数冊あり、そのうち6作(うち1作は上下巻に分冊)が日本語訳されています。
メイホアさんのコメントでこの本のことを思い出し、再び日本語版の中古本購入をトライするも、やはり海外発送のサービスがなくてがっかり。
ふと、作者のメリングさんについてGoogle検索してみると、ダブリン近郊の海辺の町ブレイ(Bray, Co. Wicklow)にお住まいとういことが分かりました。
Twitterのアカウントを見つけてフォローしたところ、驚いたことにメリングさんご本人からすぐに連絡があり、「日本語版を差し上げます」とおっしゃるではありませんか。
そんな経緯で、ハロウィーンの日にブレイの海辺のカフェでお会いして、作者ご本人より貴重な日本語版の妖精物語をプレゼントしていただくという、天にも昇るような体験をしたのでした。

メリングさんご本人からいただいた日本語版全6作品・7冊、嬉しい!

サインもしていただきました♪
一昨日の日記に書いた、お会いするのを楽しみにしていた方というのが、ヴァルことメリングさんです。
初めてお会いしたのに、以前から知り合いだったような気持ちにさせてくれる方。松尾芭蕉から、トロントのアイルランド移民の銅像のことまで、多岐にわたる話題が飛び交い、そう、たったの1時間程ご一緒しただけなのに、10時間くらい一緒におしゃべりしていたかのような、不思議な時間の感覚を味わいました。
もしやメリングさんご自身が、ケルトの魔法使いなのかも!
作品についての興味深いエピソードもいくつかうかがいました。
『妖精王の月』の執筆中にお腹の中にいたというメリングさんのお嬢さんの名は、物語の主人公と同じ、フィンナヴィア(Findabhair)。(日本語訳では「フィンダファー」のカタカナ表記)
古いアイルランド語の名で、彼女が生まれた時にはあまり知られていなかったのに、小学校にあがる頃には物語が有名になっていたため、友達は「『妖精王の月』と同じ名ね!」とすぐに覚えてくれたそう。
そのお嬢さんは偶然にも私と趣味が同じで、私が頻繁に行く大西洋岸の町にお住まいとのことですから、きっと間接的な知り合いがいるに違いない。イッツ・ア・スモール・ワールド!(笑)
メリングさんの作品は世界中で出版されていますが、ご本人いわく、日本語版ほど美しい装丁のものはないそうです。
確かに、どの本にもケルト文様を中心とした細かいデザインがほどこされ、いつまでも眺めていたくなります。

表紙、裏表紙、タイトルのページすべて異なる美しいイラストが。それぞれの背表紙にも「ケルト」を連想させるアイコンが

『ケルズの書』を思わせるようなフレームの装飾が見事。7冊の表紙絵中、私のいちばんのお気に入りが『ドルイドの歌』で、この絵を見て思わず「ハリー・クラークのステンドグラスみたい!」と言うと、メリングさんも「そうなのよ、私たち感性が似てるわね」と共感してくださいました
今『妖精王の月』を、じっくり味わいながら読み進めています。6作すべてが独立した物語なので、これを読み終えたら次はどれを読もうかなあ、とすでに楽しみにしつつ。『夢の書』はカナダの妖精のお話だそうで、それも興味津々。
来年か再来年、メリングさんは日本へ、私はカナダへ旅行する予定(いずれも昨年行くはずがパンデミックで中止に)。『妖精王の月』のアイルランドに暮らす2人が、互いが育った国にそれぞれ関心を寄せていることにも不思議なご縁を感じました。
- 関連記事
-
コメント
メイホア
2021/11/02 URL 編集
アンナム
書いて下さりありがとう!
あなたの念願かなってよかったですね!
いつもアイルランド、カナダ、それにまつわる様々なことを、
研究家のように地道に勉強して、努力している姿に
”感動”しています。いつかそれが実って形になる日がくると
信じています。
2021/11/02 URL 編集
naokoguide
本当に好きなこと、それを続けていくことは、自分だけでなく、周囲の人にもものすごいパワーを与えていくんですよね。そしてそれがケルトの渦巻みたいになって、いろんなことを繋いでいく…。
今回のことはまさにソレでした!
今後アイルランドにいらっしゃるときにはぜひお知らせください。ご一緒に、メリングさんに会いに行きましょう!
2021/11/03 URL 編集
naokoguide
私も長い間、この本のことは知りませんでした。日本語版が出版された90年代後半~00年代、私はもう学校の図書館で本を借りる年齢を過ぎていたし、仕事で飛び回っていていちばん本から遠ざかっていたときで、スルーしていました。
今の方がネットがあり、アマゾンがあり、電子書籍もあるので、忙しくてもずっと簡単に本を手に入れて読むことが出来ます。
それでも手に入らない本は執念で探していろいろ手を尽くすのですが、こんなふうに天から降って来るかのように「与えられた」ことには意味があると思っています。
やっぱり、カナダ、モンゴメリのマジックもちょっとあるかしら?!
2021/11/03 URL 編集