パンデミック初期に始め、かれこれ1年半近く続けている『赤毛のアン』仲間とのオンライン読書会。
ここ数ヶ月、ほかのことで忙しかったり、用事があったりでちゃんと参加出来ないことが続いたので、久しぶりの「キンドレッド・スピリッツ(腹心の友)」との会話に心躍りました。
本日のお題は、『ストーリー・ガール(The Story Girl)』。
1911年出版、作者モンゴメリが結婚してカナダ本土に移り住む前、故郷のプリンス・エドワード島で執筆した最後の作品。作者自身の幼少期の思い出やエピソードが散りばめられた、モンゴメリお気に入りの一作だったといいます。
90年代前半にカナダで製作され、NHKでも放送されたドラマシリーズ、『アボンリーの道』のベースとなった作品と言えば、思い当たる方もいらっしゃるでしょう。(現在、アマゾンプライムにて配信中)
私自身はこの作品にはあまり馴染みがなく、中高生の頃に1~2度読んだきり、その後も夢中になって再読したような覚えなし。大きなドラマが起こるわけでなし、ちょっと単調でつまらないなあ…という印象が強かったからでした。
ところが今回読書会で取り上げるにあたり、お仲間の皆さんは「牧歌的で心落ち着くわね~」などと言い、楽しく読み進めている様子。
ということは、私の読書力の欠如か?と反省し、これを機に『ストーリー・ガール』とちゃんと向き合おう!と、休日の一日を丸々「読書の日」としてじっくり通読したところ、効果てきめん、一転してこの物語が大好きになったのでした!
以前は味わい切れていなかった物語全体に漂うノスタルジックなトーンや、思い出の尊さが、今読むとなんとも心にしみます。
農場で育つ子どもたちの牧歌的な日常に、ストーリー・ガールの口から語られる昔話や遠い世界の物語がまるで縦糸と横糸の関係のごとく織り込まれゆき、読み終えるときには一枚の美しいタペストリーが織り上がっていた…といった感じ。
W.B.イェーツの詩にある「Cloths of Heaven(天上の布)」みたい。
そして、「今起こっていること」と「ストーリー・ガールが語るおとぎ話」という、物語に存在する2つの時間軸が、夢と現実、過去と現在を行ったり来たりするような感覚を味わわせてくれるのですが…あら、これって、ケルトではないですか!?
作者モンゴメリはストーリー・ガールの口を借りて、こんな謎解きのような真理を述べています。これぞまさに、目に見えない世界を信じる「ケルト」的。
I think there are two kinds of true things—true things that ARE, and true things that are NOT, but MIGHT be.
私、本当のことって二通りあると思うわ。本当にあった本当のことと、本当にはなかったけれど、会っても不思議のないことと(木村由利子・訳、角川文庫、第18章より)
本作品には美しい秋の日の描写も多く、季節感が今にぴったりでもありました。
楽しい読書会終了後、きれいな秋晴れに誘われて近所へちょっと散歩に。あまりに美しい日で、物語の余韻にひたっていたら、ちょっとのつもりが10キロも歩いていてびっくりでした!(笑)

少~しだけ色づき始めたフェニックス・パークにて
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