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ワクチン・ヘジタンシーの低いアイルランド                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

8月のアイルランドはすでに秋の気配…です。
ヒートウェイブ(熱波)の日々が嘘のように気温は平年並みとなり、近ごろは日中18度くらい。雨が降り、また晴れて、朝晩はジャケットが必須で…といった、いつものアイルランドの天候に戻り、これはこれでほっとしています。
コロナ禍2年目の夏ですが、さまざまな変化がありながらも、日々淡々と平穏に過ごせていることがありがたい。

オリンピックの閉会式で次回の開催地パリからのライブ映像が流れ、それを見た日本の友人が、人々が必ずしも皆マスクを着けていない状態で街の真ん中で「密」になっている、なんだか異次元を見るかのような想いがした、そちらはもうコロナ後の世界なの?…と言うのを聞いて、そうか、欧州は今、厳しいロックダウン後の解除の解放感を楽しんでいるときなんだ、とあらためて思い至りました。
友人の感想を聞くまでその実感がなかったけれど、当地を含め欧州のワクチン接種が進んでいる国々は一進一退ありながらも、確実にウィズ・コロナから、アフター・コロナの世界へと歩み始めているのでした。

同じヨーロッパでも島国アイルランドと大陸諸国には温度差があり、特にフランスではコロナのことはもう過去にしたい、というムードが強いと聞きます。
アイルランドはそこまで吹っ切れてはおらず、ある意味現実的と言いましょうか、感染対策もより慎重かつ、保守的です。ワクチン接種率は高く、今や欧州いちであるにもかかわらず、緩和のスピードはほかの欧州諸国に比べゆっくり目。
おそらく慎重な方が健康を守る上では正しいアプローチなのかもしれませんが、アイルランドがそうしているのは国民性ばかりでなく、国内の病床数が決して多くないという医療事情や、幸いにも国に財源があるので、対策をし続けられるためでもあるかと思います。

ワクチン接種についてですが、アイルランドは16歳以上の接種完了が78%に達し、全人口の60%に当たります。先に接種を開始したUKを抜いて、今やおそらく接種率世界いちに。12~15歳への接種受け付けも今週中に始まるようです。
供給量の確保やロジスティック、受け付けの段取りなどがうまくいき、接種がスピードアップしているためでもありますが、人々が積極的に受けに出向かない限り、ここまで高い接種率にはならないでしょう。数値を見てもアイルランドは、「ワクチン・ヘジタンシー(ワクチン接種へのためらい)」を示す人の割合がEUいち低く、EU諸国の平均が25~29%であるのに対し、10%以下。EUいち「ワクチンを受けたがり」な国であることが証明されています。
(調査結果は数ヶ月前のものですが、今も状況に変化がないことは実際の接種率が物語っています)
※参照→People in Ireland most willing in EU to take Covid-19 vaccine, survey(Irish Times)など

記事によると、フランスとオーストリアを除いた西側諸国でヘジタンシー率が低く、東側の国々で高い傾向にあるとのこと。もっとヘジタンシーが強いのはブルガリアの61%、続いてラトビア、クロアチア、フランスだそうです。
(フランスはその後、接種が進むにつれてヘジタンシーが解消され、現在フランスの接種完了率はEU内で高い方に転じています)
これには国民の政権への信頼度が関係しているなどと言われますが、国によってこんなに差があるのは興味深いですね。おそらく歴史や政治、国民性に起因するのでしょうが、行動なんとか学の専門家なり、それぞれの国に住む人同志で論じるなどして検証してみたら面白そうです。

実際に当地の空気感は、まるで喉の渇きを癒すかのように、ワクチン~、早く~、といった、数値が示す通りのものでした。接種を終えた人はルンルン、特に高齢者は本当に嬉しそうでした。
なぜアイルランド人はこんなに「ワクチン受けたがり」なのでしょう。私の周囲のアイルランド人たちが「ワクチンを接種したい理由」として言っていることは、「その道の権威が開発、検証したのだから、科学的・医学的に信頼できるもののはず」、「医療従事者への協力のため(重症化を防ぐから)」、「コロナ収束のために出来ることはすべき」、「自分はもちろん周囲の人の健康を守るため」、「海外渡航を含む、暮らしの便利さを取り戻すために必須」など。
科学や医学への信頼と、自分の健康や暮らしを守ることが社会的責任を果たすことになる、という前提が根付いているような印象です。
そして、今やワクチンを受けた方が、日常生活の特典が増えることが明確化されていることも大きいでしょう。(他家への訪問の自由、レストランの店内飲食、PCR検査なしでの海外渡航など)

アイルランドではワクチンの副反応を心配する人も少なく、反応が出てもあまり気にせず淡々としている人が多いのも興味深いです。私も一回目は翌日からサーフィンしていて、2回目も今思えば接種後数日間は本調子ではなかったかも…くらい。
もしかして、私たち、単に鈍感なだけかも。でも鈍感力は、ときに身を助けるのです!(笑)

cosmos0821
春に蒔いたワイルドフラワー。ほかの花が盛りを終えていく中、秋桜(コスモス)が咲き出しました♪
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コメント

sima-s

羨ましいです
国と国民との間に健全な信頼関係があるのかな、と想像しました。それと、ネットやSMSの別世界にはまる人が少ないのかな、とも。私の周りではネットの陰謀論を本気で支持し、ワクチンは人体をおかしくするのだから止めなさい、と善意で迫る人たちがいて、大切な友達を失いました。

naokoguide

Re: 羨ましいです
sima-sさん、こんにちは。
「健全な信頼関係」、確かにそうかもしれませんね。アイルランド人は自国政府の悪い点をちゃんと批判もしていて、日常的に文句も言ったりしている。自分のご近所に関係することになると署名を集めて行政に提出したり、地元議員にメールを送って進言したりということも、割と日常的にしています。不満を反対意見として言える社会というのは健全ですよね、それが聞いてもらえるという期待があることが信頼の証しでしょうから。
ネットやSNSはみな使用しているけれど、ある程度、大人になると仕事や家庭、社交でそればかりにはまる時間が物理的にないとのが私の印象。やはりアイルランド人は、対面で人と話をすることが好きな人たちだと思います。
私の友人にも打たない派の人がいますが(アイルランド人ではなく日本人)、私はワクチンで人類が死に絶えたらひとり生き残るのはヤダから打つ!と言ったら、私はひとりでも生き残りたい!と言われたので、じゃあ、頑張れ!と話は終わりました(笑)。その友人が感染しやしないか心配ですが、そういう人もいるので私がウィルスを運ばないように気を付けなければ…とも思います。
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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