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Cast a cold eye on life, on death・・・(スライゴ研修4)

1939年、南フランスの保養地マントンで73年間の生涯を閉じたW.B.イエーツ
その亡骸は本人の遺言により、スライゴ近郊のドラムクリフ(Drumcliff)の教会の墓地に埋葬されています。(第2次世界大戦の混乱期だったため、一旦はフランスに埋葬され、1948年にここへ移されました)

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ドラムクリフの教会

墓碑に記されているのはイエーツの詩『Under Ben Bullben』からの一節。大変有名なこの一節ですが、ここにイエーツの究極の人生観が表れているように思います。

drumcliff1

Cast a cold eye on life, on death.
Horseman pass by!


直訳すると「生と死に冷たい目を投げかけよ。馬に乗った人が通り過ぎる!」…とさっぱり意味がわからないので、これまでイエーツ記念館で説明していただいたこと、イエーツの生涯や思想を私なりに解釈して思い切り意訳すると、こんな感じなのではないかと思っています。

人生ははかなく、ちらりと一瞥するうちに生と死の境目がやってきてしまう。
人はまるで、馬に乗って駆け抜けるかのごとく、その境目を渡るのだ。


この墓碑を読み解くには、イエーツが何故ここを永眠の地と定めたのかを知る必要があります。
まずひとつは、ここはもともと聖コラムキルという聖人によって開かれた古い修道院の跡地であり、イエーツの父方の曽祖父が司祭を務めていた教会でもあります。自分の先祖つまり自己のルーツとなる土地柄であるということが、イエーツ自身の個人的な「生と死」を表しているような気がします。

そして、ケルト神話を愛したイエーツにとって、神話の舞台となった神秘の山ベン・ブルベンのふもとであることも重要でした。この神話『ディアールモッドとグローニャ』では、ベン・ブルベンでイノシシ狩りをした際にディアールモッドが死んでしまうのです。

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ベン・ブルベン(2006年8月撮影)

「horseman」についてですが、ここはスライゴ-ドネゴールを結ぶ賑やかな街道沿いに位置しており、当時は馬に乗った旅人がひっきりなしに通っていたこととを指しています。
貧しかったアイルランドでは、馬を所有していることは重要でした。馬が手に入らなければ遠くへ行くことは出来ず、馬=自由のシンボルでもありました。

そんな人の「生」「生活」を目の当たりにする賑やかな街道と、「死」「死後の世界」を連想させる山ベン・ブルベンとが表裏一体となってイエーツの人生観を表しているように思います。

または、「生」と「死」の象徴を逆にして、何万年も前に造成された山(ベン・ブルベン)を前にして、人の一生とはなんとせわしなく(horseman)、ちっぽけなものよ…ということなのかもしれません。

いずれにしても、なんだか昔の日本人の人生哲学にも似ているようなこの一節を目にするたび、人の一生は尊いものなのか、いやはやそんな想いは幻想なのか…と一種の「無情感」を感じてベン・ブルベンを仰ぎ見てしまいます。
はかなくこわれてしまいそうな繊細なリズムの中に、凛とした強さが同居しているかのようなイエーツの詩作の数々。生と死に対するイエーツの姿勢が作品の中に自然に投影されていったのでしょう。

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教会脇の大型バス駐車場にあるモニュメントを囲むガイド軍団。イエーツのロマンチックな詩『He Wishes for the Cloths of Heaven』が記されています

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コメント

スライゴ研修のお話、興味深くよんでいます。行ってみたいなあ。イエーツの詩も、今度ぜひ読んでみます。
イエーツといえば、先日勤務先の近くで「アイルランドから見た世界と平和」という講演会があり、行ってきました。アイルランド大使館報道・文化担当の、アッシュリン・ブレーデンさん、もしかしたらご存知ですか?講演の中で「イェーツと日本のかかわりを知っている人」といわれたので、私はなおこさんのおかげで、刀のことを知っていたので、発言しました!そこから話はイェーツと能のことに移っていきました。
話の後は、アイリッシュダンスと音楽演奏(田村拓志さんというフィドル奏者、しばらくアイルランドに住んでいたそうです)もあり、楽しいひとときでした。早く本物のアイルランドにいきたいです。そのときはガイドお願いします!

去年の楽しい旅が思い出されます。おかげさまで。
あそこでHさんが同じ格好をして写真を撮った、あそこでKさんが詩を暗唱した、などと 反芻しているところよ。
きっと当時も解説を聞いていたのでしょうけれど、こうやって文章で読むと「そうだったの!」とあらためて知る思いです。有り難うね。

今夜は東京は春の嵐、明日は冬の嵐だそうです。naokoguideさん、お元気でね。

メジロさんへ

いつも読んでくださってありがとうございます!
日本でもそんな講演が行われているなんて、嬉しいですね。発言出来てしまうメジロさん、すごいです。
アイルランドでお会いできる日を楽しみにしていますね~!!

アンナムさん

アンナムさん、こんにちは!
私も、ドラムクリフへ行く度いつも、アンナムさんと同じ事を思い出しています。旅の思い出って、何度も返って来るので楽しいですよね。
こちらのお天気も、ちょっと嵐っぽい感じ。日本もアイルランドも、本当の春までもう一息ですね。

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naokoguide

Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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