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トリニティー・カレッジの『ケルズの書』と感激の再会

2週間ほど前から博物館、美術館など文化施設が再オープンし、『ケルズの書』のあるトリニティー・カレッジのオールド・ライブラリー(The Book of Kells, Old Library, TCD, Dublin 2)も予約制にて見学が出来るようになりました。
過去20年、それこそ日常的にお客様をご案内して出入りしてきたオールド・ライブラリー。新型コロナ禍ですっかり足が遠のいていましたが、昨年3月にパンデミック前最後の日本のグループさんをご案内して以来、実に14か月ぶりに『ケルズの書』に再会してきました。

昨年9月、『ケルズの書』の展示室のレイアウトが変わったと聞き、久しぶりに見ておこうと立ち寄ったことがありました。私たち観光ガイドは通常チケットなしで出入り出来るので、そんな調子でふらり立ち寄ったところ、厳しいセキュリティー阻まれ、予約チケットがないと敷地に入ることも出来ず。その後の相次ぐロックダウンで閉館が繰り返され、それきりタイミングを逃していました。
今日はほかの見学者の皆さんと同じように事前にチケットを予約購入し、ナッソー通り(Nassau Street, Dublin 2)の通用口のセキュリティーを無事通過。予約時間ごとに係の人が入口へ引率してくれるシステムになっていました。

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変わらぬオールド・ライブラリーの姿。かつては学生や観光客が群れていた緑地も、今やがらーんとしていてちょっと寂しい…

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展示室もがらーん。入場者数を制限している上、国外からのお客さんがいないので、週末でもこんなに静かです

久しぶりのオールド・ライブラリー訪問は、思いがけず感動的でした。私を見つけた顔見知りの職員の皆さんが次々に声をかけてくれて、なつかしい面々との再会も。
ケンも、パットも、テリィもみんな元気で良かった。久しぶりだね、また会えてうれしいね、家族は元気?、ワクチンはもう接種した?…などと会話が止まらず。この秋定年を迎えるパットが、お客さんが少なくて寂しいけれど、閉館したまま去ることにならなくて良かったよ、と言うので、なんだか涙が出そうでした。
そしてみな口々に、どうしてチケットを買って来たんだ、ナオコは買わなくていいんだよ、ひと言事前に行ってくれれば入れてあげたのに、責任者の○○にメールしてリファンドしてもらいなさい!…と、とても優しい(笑)。

いいんです、たまには、自分で入場料を払って見学するのも。お客さんの気持ちになれるから。
そして今日は、人に説明するためでなく、自分のために解説を見たり読んだりして楽しみました。

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先月の『ケルズの書』についてのオンライン講座でもお話した絵の具について、わかりやすい展示が加わっていました。私の認識や参照資料と若干異なる内容もあったので、また調べてみなくては…

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これが、オンライン講座でもお話した映画『ブレンダンとケルズの秘密』に登場するブナの食没子(オークガル)。黒インクの材料です

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そして、紙とペン。紙は仔牛の皮(185頭分!)、ペンはガチョウもしくは白鳥の羽根

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装飾文字のサンプルも素敵。以前は時間もなく人も多くてゆっくり見られなかったけれど、今日はひとつひとつよく見ることが出来ました

先日のオンライン講座でご質問いただき、お答えしたものの、改めて聞かれるとその知識をどこで得たのか、自分が作っちゃった話ではないのか、とちょっと心配で、「確か…だったと思います」としか言えなかったことが2点あったのですが、今日展示を見ていて、ここで得た知識だったんだ、と確信することが出来たのも収穫でした。
ひとつは、修道士が羽根ペンで文字を書くときに、コンパスなど道具を使ったのですか、というご質問。はい、物差、三角定規、コンパスなどを使用したとありました。葦を使った固いペンも使用されたそうです。
もうひとつは、べラム紙に穴の開いているものがありますか、というご質問。はい、これも穴開きページの写真がありました。仔牛の皮を剝ぐときに開いてしまうことがありましたが、紙は貴重だったのでそれさえも使用しなくてはならなかったそう。

『ケルズの書』の展示室は写真撮影不可のため、トリニティー・カレッジが公開している動画でその様子をご覧ください。
以前は4冊に分冊されている『ケルズの書』のうち2冊が展示されていましたが、昨年9月より、新型コロナ感染対策でスペースを広く取るために、1冊のみの展示となりました。



開かれていたのは動画で紹介されているのとは別の、マルコの書の見開きページでした。室内照明が以前より暗くなり、書だけが浮かび上がるかのよう。一冊だけの展示となって一度に見られるページ数は少なくなりましたが、本の大きさや美しさがより際立って見えて、神秘的でした。
映画『ブレンダンとケルズの秘密』で、書がピカ~ッと光を放つシーンがあったかと思いますが、それと同じことが今にも目の前で起こりそう。

私が『ケルズの書』の展示室にいる間、たまたまほかのお客さんが誰も来ませんでした。パンデミック前は押し合いへし合い書を取り囲み、お客様に見ていただくために私は脇に除けてちらり見するだけのことも多かったので、今や展示ケースにへばりついて書と対面しているのがにわかに信じられない。
警備に当たっていたパットが「ゆっくり見なさい」と席を外してくれ、しばし『ケルズの書』と2人だけの時間を過ごしました。
1200年の時を経て、この感動を今に伝えてくれたすべての人やモノにありがとう。書が秘めた計り知れないパワーに飲み込まれそうです。

この時点でかなり感極まっていた私は、上階のロング・ルームへ足を踏み入れたとたん、あまりの感激に目頭が熱くなってしまいました。
この場には何十回、いえ、3桁の数字を数えるほど来ているはずですが、あらためて22万冊の書に圧倒されると同時に、懐かしい場所に帰ってきたような気持ちで胸がいっぱいになりました。

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1732年完成の長さ65メートルのロング・ルーム。ただただ、美しい…!

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入ってすぐ左にあるビクトリア時代の螺旋階段、こんにちは!

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ジョナサン・スウィフトさん、こんにちは!

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ウェリントン公爵、こんにちは!

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そして、国章のモデルとなったブライアン・ボルーのハープよ、こんにちは!

…と馴染みの銅像や展示物にひとつひとつ挨拶して回る、ちょっと怪しい人でしたが、変わらずそこに在り続けてくれたことがこんなにありがたいなんて。

実は『ケルズの書』の展示を含むオールド・ライブラリーは、防火対策の近代化のため、近々、大々的な改修工事に入る予定です。ちょうと一昨日、そのニュースが流れたばかりでした。
Trinity College to move 750,000 books during restoration of Old Library(The Irish Times)

今日話をした職員の方々によると、現状では2022年11月から最低3年間、閉鎖される予定とのこと。その間は『ケルズの書』もロング・ルームも見ることが出来なくなります。
(仮設施設で何らかの展示は行われるそうです)

このまま新型コロナが収束していき、ライブラリーをまた閉めるようなことにならず、開館し続けられますように。そして、改修工事が始まる前に日本からのお客様をまたご案内できますように。
私も仕事がなくても時々こうして訪問し、閉館までに『ケルズの書』にたくさん「会って」おこうと思います。

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トリニティー・カレッジ正門。現在こちらは閉鎖されていて、キャンパスへの入り口はナッソー通り(Nassau Street, Dublin 2)の通用門のみ

※『ケルズの書』を含むオールド・ライブラリーの入場予約はこちら→The Book of Kells
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コメント

Reico

祝!再会!
ナオコさん、ケルズの書との再会おめでとうございます!オールドライブラリー内のすべてのものがナオコさんに「おかえりー♪」と言ってますね!展示物の素敵な写真を見せていただきありがとうございます。どれもほんとに貴重な写真で興味深いです。この間の楽しい講義の内容が一層わかりやすく良い復習になりました。読んでいて私もジーーーーンと来ました。ひきつづき気をつけてお過ごしくださいーーーー(^_^)

naokoguide

Re: 祝!再会!
Reicoさん、コメントありがとうございます!
私も皆さんにお話させていただいたことで知識が整理され、フレッシュな感覚で『ケルズの書』と再会できてありがたかったです。
予想以上にエモーショナルな再会となり、自分でも驚いてしまいました!
Reicoさんもどうぞ引き続き、お元気にお過ごしくださいね。いつもありがとうございます♪

ようはっぱ

懐かしい。
わーお。なおこさん。
懐かしい思い出を思い出させていただき、ありがとうございます。
2017年に女子ラグビーのW杯を見に、ダブリンに行ってトリニティカレッジの寮に泊まった時のことを思い出しました。
寮と同じ敷地内にあった、観光名所の図書館のケルズの書、おる間に見にいかなあかんなあ、くらいの軽い気持ちで見に行ったのですが。
ケルズの書自体は、当時も今もあまり思い入れなく(すみません)、「見たでー」くらいなのですが。
ハープや螺旋階段、染料、銅像などは記憶の奥に留まってます。
それに当時の新聞(かな?)記事の方が私の記憶に残ってます。

カレッジ内の芝生でラジオ体操したことやラグビー場。
ポテチを挟んだ食パンの朝ごはんを食べたこと。
妄想でハリーポッターの世界に迷い込ませてくれた寮。
たった数日でしたけれど楽しかった寮体験。
これまた、また体験したいです。

naokoguide

Re: 懐かしい。
ようはっぱさん、いらしたのは2017年、もう4年になるんですね!
Rolys Bistroでご一緒にディナーをさせていただき、ゴールウェイでばったりお会いしたのがついこの間のような気がします。

そうでしたね、ようはっぱさんはキャンパスに宿泊されたんでしたよね!
それは思い出深いことでしょう。今となっては夢のようです、あのキャンパスに自由に出入りが出来、夏には世界中に人たちが集っていたことが…。

そういえばすっかり忘れていましたが、今から30年程前、初めて海外へ行ったときに、カナダのハリファックスの大学寮に宿泊したことを思い出しました。
国に帰らず量に残っていたインド人の学生さんが、何やら怪しげな匂いの料理を作っていて、親切に食べる?って言ってくれたけど、ムリーって断ってしまったこと、急に思い出しました(笑)。
また旅行したいですね、ほんとに。

Y

質問です
初めまして。こんにちは!
いつもブログを楽しく読ませて頂いております♪
昨年夏より夫婦でアイルランドに住み始めました!ブログを読んでいますと、ナオコさんはツアーガイドさん?なのかなとお察し致しますが、個人ツアーガイドですか?それともどこかの会社に所属されていますか?

住み始めて1年経ちますがまだどこにも旅行に行けてない状態でして、日本の方がいらっしゃるツアー会社を探しているところでした。是非ご回答頂けますと幸いです。
よろしくお願い致しますm(._.)m

naokoguide

Re: 質問です
Yさん、こんにちは。いつも見て下さり、ありがとうございます。
団体のお客様も、個人のお客様もご案内させていただいております。
よろしければ、ウェブサイトの方をご覧いただき、私でお役に立てるようでしたらぜひお問い合わせください。
https://www.guidingireland.ie/

Yさんのアイルランドでの暮らしが充実したものとなりますように。
ご案内させていただけますことを願っております♪
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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