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「ケルズの書」をめぐるアニメーション映画『ブレンダンとケルズの秘密』

今週土曜日に開催させていただく「ケルズの書」についてのオンライン講座では、アイルランド制作のアニメーション映画『ブレンダンとケルズの秘密(The Secret of Kells)』(2009)にも触れさせていただきます。
「ケルズの書」をめぐる少年修道士ブレンダンの冒険ファンタジー。講座準備の過程で久しぶりに映画を見返し、あらためて気がつくことがあったり、感激したりしています。
※関連過去ブログ→「ブレンダンとケルズの秘密」この夏、日本で上映(2017年4月)

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修道院長の目を盗んでインクの材料を採りに森へ出かけたブレンダンは、森の少女アシュリンと出会って…(写真©️Les Amateurs, Vivi Film, Cartoon Saloon)

この映画を観るのは数回目ですが、以前は、やはり仕事柄でしょうか、史実に沿ったディティールに、より目がいきがちでした。バイキングの襲撃に備える中世アイルランドの修道院の様子や、インクの材料となったオーク・ガル(oak gall=没食子)の登場、有名な装飾ページ「キー・ロー」がフィーチャーされていることなど。
今回は、ディティールが先に頭に入っていたせいか、これまでさほど気に留まらなかった物語全体の大きなピクチャーが見えた気がしました。やはりこの作品も根底にあるのは「ケルト」で、とどのつまりは「再生」と「継承」の物語だったんだなあ、と。
アイオナからやって来た片目がグリーンで、もう片方の目がブルーのネコのバンガ・ボンが、どうやらそれを象徴しているようです。
(バンガ・ボンについては講座内でもうちょっと触れさせていただければ…と思っています)

本作品は「アイルランドのジブリ」と称されるアニメーション制作スタジオ、カトゥーン・サルーンの創始者であり、若きアニメ映画監督として活躍するトム・ムーア(Tomm Moore)さんのデビュー作。その後、ケルト三部作として『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた(Song of the Sea)』(2014)、昨年公開された『ウルフウォーカー(Wolfwalkers)』(2020)と次々話題作を生み出し、3作ともアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされています。
『ウルフウォーカー』については発表はこれから、4月25日の授賞式でオスカー受賞なるか、期待が高まります。

『ウルフウォーカー』にはひとつの身体にオオカミと人間の魂が共存する少女が出てきますが、『ブレンダンとケルズの秘密』に出てくる森の少女アシュリンもオオカミの化身。トム・ムーア監督の中には、『ブレンダン…』の頃から、のちの『ウルフウォーカー』の元となる構想があったのだと気づかされました。
そして、『ウルフウォーカー』でより明確に描かれる「自然と文明、対立か?融合か?」というテーマも、すでに『ブレンダン…』の中に描かれていたのですが、このことは、『ウルフウォーカー』を観たからこそ気が付くことが出来ました。
「闇を光にかえる」とされる「書」が完成され、継承されていくことが答えとなりますが、そのメッセージは本作を観ただけではわかりにくく、かと言ってあえて解き明かすこともしていない。作品があからさまな「ケルズの書」の説明や紹介に成り下がっていないところが素晴らしいと思いました。
「本は人にとって希望だ」、「本がなければすべての知識は失われる」といったセリフがあり、その意味が作品を通して伝えられていくのですが、実際の「ケルズの書」やケルトとは何ぞや?…ということを知る人ほど、ピンとくるのではないかと思います。

映画のブレンダンの物語はフィクションですが、「ケルズの書」は実際に若い見習いのような修道士たちが書いたとされています。(なので、写し間違えちゃっているような部分も多いのです!)
ですから、ブレンダンのような少年修道士が実際にいたと考えても、さほど史実と遠くないかもしれません。バイキングの襲撃におびえつつ書の完成に命をかけたひとりひとりのストーリーは、現代の我々には知るすべはないのですが、この作品がそれを伝えてくれているような気がしました。
偉大な、美しい書を書き残した名もなき過去の人たちへのトリビュート。そう思って観ると、よりいっそう感激が深まるかもしれません。

続きは土曜日の講座で!事前に『ブレンダンとケルズの秘密』をご覧になりたい方は、アマゾンプライムなどで有料配信されています。

【講座の詳細・お申込みはこちら↓】
ケルトの至宝「ケルズの書」と少年修道士ブレンダン~映画で読み解くアイルランド~(見逃し配信あり)
日時: 2012年4月24日(土)日本時間20:00~21:00
料金: 1500円(税込み)



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コメント

草野めぐみ

おはようございます!今週の土曜日の講座も申し込みしました!

前回のスケリッグマイケルの回もとても楽しく受講させていただきました
スターウォーズの映画や日本のテレビ番組で景色は見ていましたが
当日、直子さんが撮影された動画を見て、一瞬、その場にいるような気持ちになりました!移動の時間もなくアイルランドへいるような気持ちになれるなんて、どこでもドアのようですよね(*'ω'*)

今回も楽しみにしています。ご準備にお忙しいと思いますが、体調には気を付けてくださいね(*^^*)

naokoguide

草野めぐみさんへ
こんにちは。今回もお申込みありがとうございます!
前回のスケリッグ、お楽しみいただけたとうかがい嬉しいです。ヘタな動画で、こんなのお見せしてもどうかなあ、と思いましたが、そう言っていただけて安心しました。

めぐみさんのブログもときどき拝見させていただいています。
お互いに元気で過ごしましょう、そして、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

P.S.ごめんなさい、返信したつもりが送信されておらず、遅くなりました!
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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