脚本家の橋田壽賀子さんがお亡くなりになられました。享年95歳。
3年前、世界一周のクルーズ船でダブリンに寄港された際、1日だけご案内させていただいたことがあります。
名所旧跡よりも、土地の人々の日常が感じられるような光景がお好きとのことでした。ドライブ中に線路で踏み切りが降りてきて、「列車が来ましたので少々お待ちください」とお声がけしたら、「これがいいのよ、こういうのが好きなの」とおっしゃられ、目の前を横切る緑色のDART車両を嬉々として眺めておられたのが印象的でした。
暮らしの中の小さな偶発性を愛で、面白がる心。この感性から『おしん』や『渡る世間は鬼ばかり』が生れたんだなあ…と思ったものでした。
ダブリンにいらっしゃる数日前に、船の上で93歳のお誕生日をお祝いしたばかり、とのことでした。
「クイズ番組で、橋田壽賀子とエリザベス女王はどちらが年上でしょう、なんて問題が出たのよ~」とおっしゃっておられたことを思い出します。
女王陛下と並べられてクイズに出されちゃう人なんてそういませんよね!(女王の方が一歳年上だそうです)
思えばあの時、橋田先生から英国女王の話題が出たことは傑作でした。
ちょうどその頃、ヘンリー王子とメーガン妃の結婚式が数日後に迫っていて、メディアはその話題で持ちきりでした。
奇遇なことに橋田先生を乗せた車を運転していたのは、以前から私が「プリンス・ハリー」のあだ名で呼んでいたヘンリー王子似のドライバーのトム。(実際にロンドンで間違われたことがあるというほど、そっくりなんです!)
「ドライバーのトムです」と橋田先生に紹介したときに一瞬の沈黙があったので、「誰かに似ていると思いませんか?」とお声をかけたところ、先生も「ヘンリー王子!」と即答。(笑)
エリザベス女王にヘンリー王子…と役者がそろい、あの日の車はさしづめ「ロイヤルキャリッジ」だったなあ、と。
ダブリンをヨーロッパ最後の寄港地として、橋田先生を乗せたクルーズ船は大西洋航海へ。船は揺れるほどにお好きだ、と。そして、船上でも筆を離さず、締め切りの迫った新作を執筆中…とおっしゃっていたような。
お若い時分にはバックパッカーだったとのことですから、終生、旅がお好きだったんですね。
橋田先生を囲んで、プリンス・ハリーことトムと一緒にホウス・ヘッド(Howth Head, Co. Dublin)で写真を撮っていただきました。久しぶりにそれを眺め、たった1日だったけれど印象的だったあの日のことを思い出しました。
これまでに私がご案内した中で、最高齢のお客様。
長い間のご活躍に心から敬意を表するとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。

野原は今タンポポでいっぱい。子どもの頃からの癖でつい萼 (がく)をチェックして二ホンタンポポかセイヨウタンポポから調べてしまう!ここは西洋なんだから、セイヨウタンポポに決まってるのに(笑)
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コメント
chikako
mplant野崎さんのtwitterでこの記事の存在を知りました。
とても面白い(興味深い)話ですね。
>名所旧跡よりも、土地の人々の日常が感じられるような光景がお好き
>「これがいいのよ、こういうのが好きなの」
これには、ウンウン頷けます。といっても私には橋田先生のような文才はありませんが^^;
アイルランドには行ったことがありませんが、とても行ってみたい国の一つなので、「絶景とファンタジーの島 アイルランドへ」も早速ポチリました。
これからもブログを楽しみにしております。
2021/05/03 URL 編集
naokoguide
旅って日常から離脱して夢の世界へ行く…みたいにとらえられがちですが、もしかすると本当は、他人の日常ののぞき見…みたいなことが醍醐味なのかもしれませんね。
橋田先生の、ただ電車が通るだけ…という光景をきゃっきゃして見ておられた姿を思い出して、そんなことを思っています。
団体旅行でいらっしゃるお客様も、地元のスーパーへ行ったり、朝のお散歩で住宅街のお庭を見たりするのがとってもお好きで、そこでの出会いや発見、地元の人とのちょっとした触れ合いは、見学した○○教会や××博物館のことは忘れても、ずっと思い出に残るようです。
「絶景とファンタジーの島 アイルランドへ」をポチリしてくださり、ありがとうございます!ぜひいつかいらしてくださいね!
これからもどうぞよろしくお願いします♪
2021/05/03 URL 編集