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トリニティーカレッジ初の女子学生から120年、ついに初の女性学長誕生

1592年創立のダブリン大学トリニティー・カレッジ(Trinity College Dublin, Dublin 2)。
アイルランド最古の最高学府であり、学生数18000人を抱えるダブリン市街地の中心にあるキャンパスは、街のランドマークとしても親しまれています。
有名な『ケルズの書』のあるオールド・ライブラリーも、このキャンパス内にありますね。

このトリニティー・カレッジで、昨日、創立429年目にして初の女性学長(Provost)が誕生したと報じられました。
3人の学長候補がいずれも女性であったことから、数カ月前より話題になっていました。3名の中から選ばれたのが、こちら、リンダ・ドイル(Linda Doyle)博士です。



860人の学術職員が投票する学内選挙により選ばれ、任期は10年間。「グラフトン通り1番地」の住所が与えられ、キャンパス内にあるニケ神殿を模した「プロボウスト・ハウス(学長の家)」が住まいとなります。
特別な許可で一度だけ内部を見学したことがありますが、素晴らしい調度品の数々でした。(現在はかたちだけで、学長が通年で住むことはないようですが)
年俸は20万ユーロ(約2600万円)と報じられています。
※参照→Trinity College Dublin names Linda Doyle as first woman provost in 429 years(The Irish Times)など

正直言って、これまで女性の大学長はいなかったの?と逆に驚いたのですが、アイルランドは大学教育の場で高い地位につく女性の割合が低く(現在26%)、ジェンダー・バランスが問題視されているのだそう。
ドイル博士はアイルランドで4人目の女性学長となりますが、昨年7月にリマリック大学で初の女性学長が誕生するまでは皆無だったそうですから、この1年ほどで急速に女性が台頭したことになります。
(ちなみにアイルランドにはユニバーシティーが8校、工科大学が14校の、計22の国立大学があります)

ちなみに日本も同様の問題を抱えており、国立大学で初の女性学長が誕生したのは1997年(奈良女子大学)と早いものの、20年以上経った今もあまり増えておらず、現在も1割どまりだとか。
この1年弱でアイルランドが追い越してしまったことになりますね。
※参照→女性学長1割どまり 男性優位の日本の大学(日本経済新聞)

トリニティー・カレッジと言えば、今から120年ほど前、女子学生の入学を頑なに拒んだことで知られる名物学長の話がしばしば引き合いに出されます。
ジョージ・サーモン(George Salmon)学長。1888~1904年、84歳で亡くなるまでの16年間、トリニティーの学長職を務めました。

georgesalmonprovosttrinity
キャンパス内にあるサーモン学長の銅像。すぐ近くに歴史学の父として知られるレッキー(William Lecky)教授の銅像があり、レッキーで歴史学で覚えやすいですね、とお客様にお話したら、じゃあ、サーモンさんは海洋学の先生ですか、とおっしゃった方があり爆笑しました。そうだったら面白いのですが、サーモンさんの専門は数学と神学でした、残念ながら・笑(写真:Attribute to Bjørn Christian Tørrissen - Own work by uploader, http://bjornfree.com/galleries.html

イギリスのケンブリッジ、オックスフォード両大学が女子学生のみのカレッジを創設したのが1869年。トリニティーもそろそろ…ということになるのですがサーモン学長は拒み続け、こともあろうに、「本学に入ろうという女性は私の遺体をまたいで入れ(Over my dead body will women enter this college)」などと言い放ち、この発言がのちのちまで語り継がれることに…。
最終的には1901年、大学評議会で女子の入学を認める票が過半数を超え、サーモン学長も従わざるを得ないことになります。ですから学長職としての最後の功績は、本人の意に反して「女子の入学許可」なんですよね。

奇遇と言いましょうか、それとも執念の勝利と言いましょうか、彼の発言はなんと現実のものとなります。
1904年1月22日、サーモン学長死去。トリニティー・カレッジ初の女子学生となったイザベル・マリオン・ウィア・ジョンストン(Isabel Marion Weir Johnston)さんが故郷のドネゴールからダブリンに到着し、大学の門をくぐったのがなんとその日だったそうですから、まさに「Over my dead body…(私の遺体をまたいで…)」の言葉通りに!
イザベルさんに続いて、その年の終わりまでには、女子の数は数十名にふくれ上がったそうです。

学生どころか学長まで女に認めおって…と、今ごろサーモン学長はお墓の中でご立腹で、21世紀のトリニティー・カレッジを憂いているかもしれません。わしの時にゃ…って声が聞こえてきそう。(笑)
(ちなみに彼のお墓は先日私が散策したマウント・ジェローム墓地にあります)

日本でも津田梅子さんたちのおかげで、1900年に津田塾大学の前身となった英学塾、お茶の水女子大学の前身となった東京女子高等師範学校が相次いで設立されていますので、女子の高等教育が始まったのはアイルランドとほぼ同じ頃ということになりますね。
その後、1913年には、国立大学初の女子学生として、東北帝国大学(現:東北大学)に3名が入学しています。
日本にもサーモン学長のような人、いたのかなあ、きっと、いたのでしょうね~。(日本には今もいるかも・笑)

ちなみに昨日は、トリニティーの女性学長のニュースに続き、「女性が初」という出来事が続きました。
アイルランドでも大変人気のある、伝統あるイギリスの競馬の障害レース、グランドナショナルを、アイルランド人騎手のレイチェル・ブラックモア(Rachael Blackmore)さんが女性騎手として初めて制しました!
馬も騎手も怪我が続出するような激しいレース。ティペラリー出身のレイチェルさん、スゴイ、すっかりファンになりました!
女性騎手が初優勝の快挙 世界一過酷な障害戦、グランドナショナル(AFP BB News)
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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