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片山廣子『燈火節』と聖ブリジッドつながり

『赤毛のアン』のお仲間ユカさんがSNSで思いがけず片山廣子のことを話題にされていて、なんだか懐かしくなり、昨晩は久しぶりに廣子のエッセイ集『燈火節』(月曜社)を読みふけってしまいました。
歌人として知られた片山廣子(1878-1957)は、「松村みね子」のペンネームでシングやイェイツ、グレゴリー夫人などアイルランド文学を翻訳し、大正から昭和初期にいち早く日本に紹介した女性。日本文学が好きな方は、芥川龍之介が詩に詠んだり、堀辰雄が小説のモデルとした女性として聞いたことがあるかもしれません。

もう15年程前になるでしょうか、廣子の実妹のお孫さんであり『片山廣子全歌集』(現代短歌社)の編纂者である秋谷美保子さんご夫妻とお仲間の皆さんのアイルランドの旅をご案内させていただき、その後も懇意にしていただいています。廣子が訳したイェイツやグレゴリー夫人ゆかりの地へご一緒し、故人のエピソードを聞けたことは、今思えば大変貴重なことでした。
そして、私の好きな『赤毛のアン』の翻訳者である村岡花子さんと親交があった人でもあり、村岡さんが外国文学の翻訳を始めるきっかけを与えたのが片山廣子であった…とも聞いています。
(なぜ、NHKの朝ドラ『花子とアン』に出てこない!というのが私の不満・笑)

秋谷さんとのご縁もあって、一時期、片山廣子にとても興味を持って、東京・大森の「馬籠文士村」を訪ねて廣子の足跡をたどったり、800ページから成る分厚い『燈火節』も夢中で読んだりしたのですが、時が経って内容もうろ覚えとなり、ページを開くのも久しぶりに。

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最近デジタルで読めるものは出来るだけそうしていますが、こういう本は本の形で「財産」として所有していたい。『燈火節』は新編が出版されているようで、アマゾンのプレビューによると新編もちゃんと旧仮名遣いのままだそう。素晴らしい!

おそらく最初に読んだときは、私自身の知識が浅かったので印象も薄かったのでしょう。あらためて紐解いてみると記憶していた以上にアイルランドやケルトについての考察が多く、何より驚いたのは、表題作の「燈火節」という短いエッセイが聖ブリジッドについてだったこと。
ここ数日、2月1日の「聖ブリジッドの日」にちなみ当ブログにそのことを連投していたので、あまりのタイミングの良さにびっくりでした。
「ケルトのマリア様」聖ブリジッドは5世紀のスーパーウーマン!(1月31日)
「聖ブリジッドの十字架」の由来と風習(2月1日)

「燈火節」の冒頭はこのように始まっています。

先日読んだ話のなかに燈火節(キャンドルマス)といふ字が出てゐた、二月の何日であつたか日が分からないまま読んでゐたのを、今日辞書で探してみると、燈火節二月二日、旧教にては、この日に蠟燭行列をなし、一年中に用ひる蠟燭を祓ひ清むる風習あるを以てこの名あり、とあつた。先日読んでゐたのは聖女(セント)ブリジツトの物語で、彼女は二月に生れた人で、古いゲエルの習慣では、聖ブリジツトの日に春が来ると言つて、ちやうどこの燈火節の日に春を迎へる祝ひをしたものらしいが、特に蠟燭だけではなくブリジツトはすべての火を守る守護神でもある。…
(『燈火節』、片山廣子/松村みね子・著、月曜社・刊、「燈火節」より、()内表記は本文ではルビ)


なんと「燈火節」とは「キャンドルマス」の訳語だった!
それを約15年ぶりに読んだのが昨日2月2日、まさに「キャンドルマス=燈火節」その日。あまりの偶然に鳥肌が立ちました。

「キャンドルマス」とはクリスマスに産まれたイエスが生後40日目に神に捧げられたことを祝うキリスト教の歳時で、2月1日の「聖ブリジットの日」と、いずれも春の訪れを祝う日として同一視されがち。
廣子はそのことを言っているのですが、グレゴリー夫人やフィオナ・マクラウドといったアイルランド女流文学者の作中に登場する聖ブリジッドのイメージを伝え、それは前キリスト教時代の「詩と火の女神ブリード」でもあったと前置きした上で、「遠い西の国にむかし生れた二月のむすめブリード」に実に瑞々しい筆使いで想いを寄せているのです。
巻末の鶴岡真弓さんの解説がこれまた素晴らしく、廣子がなぜブリジッドに魅かれたのか、それは自分に重ねていたから…という考察にもいたく感激しました。
(ちなみに片山廣子も「燈火節」に近い2月10日生まれ)

そして、昨日のブログに、春になって小鳥たちが帰ってきたようだ…と書いたのものの、鳥の生態として本当に正しいのか疑問でしたが、その答えもちゃんとありました。
フィオナ・マクラウドが「浜辺の聖女ブリジッド」と書いているように、海鳥が帰って来て、小鳥のさえずりが聞こえるようになるのは聖女ブリジッドがやって来る前兆、すなわち春の訪れということで良いのだそう。
オイスターキャッチャー(ミヤコドリ)など海鳥は、ギルブリード(ブリードの僕)と鳴くと書かれていました。
昔の人は聞こえる鳥のさえずりさえも、なんとまあロマンチック♪

片山廣子の『燈火節』収録の「燈火節」はデジタル書籍で読むことが出来るようです。(そのほかの多くのエッセイも)
灯火節 Kindle Edition(アマゾン)
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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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