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「聖ブリジッドの十字架」の由来と風習

Beannachtai lá Fhéile Bríde!
(=Happy St. Brigid's Day!=ハッピー・セント・ブリジッズ・デー!)

本日2月1日は、昨日、5世紀のスーパーウーマン!としてご紹介した「聖ブリジッドの日」。
夕方のニュースでは、キルデアの聖ブリジッドの泉に地元の人が次々訪れる様子が報じられました。

そして、昨日のブログでも触れたように、聖ブリジッドは近年ますます女性の権利や活躍のアイコンとされつつあるようですね。
各国のアイルランド大使館・領事館も率先して、「聖ブリジッドの日」を彼女のレガシーの継承者として活躍するアイルランド人女性を称える日、としています。



昨日ご紹介しきれなかった「聖ブリジッドの十字架(セント・ブリジッズ・クロス=St. Brigid's Cross)」について。

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キルデアの聖ブリジッド大聖堂(St Brigid's Cathedral, Kildare, Co. Kildare)内部に飾られていたもの(2019年5月撮影)

私たちがよく知るラテン十字架は横棒に比して縦棒が長いですが、こちらは縦横が同じ長さの十字架。
王の死に際に呼ばれた聖ブリジッドが、床に敷かれていたイグサを拾い集めてこのような十字架を編み、それを用いて異教徒だった王を死の間際に洗礼し、神の御許へ送ったとの故事に由来しています。

ですので、写真にようにイグサで編まれたものがオリジナルですが、今やこの形自体がシャムロックやハープなどと並ぶアイルランドを象徴するデザインとして、装飾品やアクセサリーなど工芸品としても知られるようになりました。

私もいくつか持っていて、家のあちらこちらに飾ったり掲げたりしています。火事を除ける、戸口に掲げるとその下を通る人に福が来る、キッチンに置くと家内安全…など、厄除け効果があると言われています。

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我が家のクロスのひとつ。イグサではなく麦わらに似せた素材ですが形は聖ブリジッド・クロス♪

古代ケルトの暦では2月1日を「インボルク(Imbolc)」と言い、日本の立春に相当する春の始まりとされます。
その昔、春になり牧草地にイグサが生えてくると、それを集めては夏の野良仕事に使う籠などを編んだそう。この十字架は慣れれば5分位で編めるようなシンプルなものなので、作業の合間に編んだようです。
つまりは、春の訪れを祝うのに用いるアイコンでもあったのでしょう。

最近知ったのですが、「聖ブリジッドの十字架」は1960~95年の35年間、日本のNHKに相当するアイルランドの公共放送局RTE(アイルランド放送協会)のロゴに用いられていました。

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1961年のロゴ。これが創立時のものと思われます。ロゴというより、そのまんま(笑)(c)Design Research Group

St Briged Crossrte_ident-1980
1980年のロゴ。だいぶディフォルメされてきました。(c)Design Research Group

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そして、1987年のロゴ。かなりモダンに進化!(c)RTE Archive

馴染みのデザインとは言え、宗教色があることが徐々に問題となってきたのでしょう。1995年、惜しまれつつも姿を消しました。現在のロゴは「RTE」の文字をデフォルメしたシンプルなものです。
※参照→The evolution – and disappearance – of Brigid’s cross in RTÉ’s logo(RTE News)

ブリジッド信仰の厚い地域では、女子修道院建設時のブリジッドと布(ショール)の伝説にちなみ、2月1日前夜に窓辺に布を置く風習があると聞きます。それを目印にブリジッドが各家を訪れ、布に触れてくれるそう。
翌朝、布が広がっていたら幸運、縮んでいたら今年は良からぬことが起こるかもしれないので注意!
21世紀の今も、この風習が続いている地域はあるのかな?
ブリジッドは病気治癒の聖人でもありますから、今年は特にコロナを患っておられる方々の一刻も早い回復、さらにはパンデミック収束を願って布を置いた人もいたかもしれませんね。

※聖ブリジッドに関する過去ブログ
「ケルトのマリア様」聖ブリジッドは5世紀のスーパーウーマン!(昨日)
キルデアの聖ブリジッド大聖堂(2016年6月)
グラストンベリーの聖パトリック礼拝堂(2017年7月)
クロンドーキンの聖ブリジッドの井戸(2016年5月)
うるう年のロマンス?(2008年2月)
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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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