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オンライン読書会 モンゴメリ作『青い城』

今年最初の『赤毛のアン』仲間とのオンライン読書会は、モンゴメリの隠れた名作『青い城』で幕開けとなりました。
※関連過去ブログ→『青い城』のバーニイは「ティン・リジィ」に乗っていた『青い城』の「レディ・ジェーン」はモンゴメリ自身の愛車

『青い城』はオールド・ミスと揶揄され自分は不幸だと嘆く29歳の女性ヴァランシーが、余命宣告されたことで一念発起し、人生を変えていく物語。「愛されたい」と願うばかりだった彼女が、自発的に人を愛し行動することで運命の扉を開いていくのですが、その過程がちょっぴり魔法がかっていて、ときにコメディかのように愉快痛快でもあるのが魅力です。

モンゴメリのファンはみな、『アン』は別格として、『アン』以外のお気に入りがそれぞれあることと思いますが、私にとってはこの『青い城』がそれ。(…と、『パット』シリーズも!)
初めて読んだのが13~14歳と多感なときだったので、受けた影響も大きかったのかもしれません。
当時は大人っぽい物語だなあ、と思ったものですが、ある程度の年齢になって読み返すと、まるで少女漫画の原作になりそうなストーリー展開。女の子の憧れであるレスキュー・ファンタジーを満たしてくれて、正体のわからないミステリアスな「彼」が出てきて、結末はあっと膝を打つ大どんでん返し。ティーンになり立てだった当時の私にはたまらなくロマンチックに思えたのでしょうが、あれから30年以上経った今も好みはあまり変わっていない(笑)。
冬の森をさまよう描写にうっとりしたり、歯に衣着せぬ物言いを炸裂させるヴァランシーに思わずいけいけ~!と声援を送ってしまったり。シャープペンシルで引かれた30年前の傍線やメモ書きと、共感する箇所は今もほぼ同じでした。

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現在『青い城』は角川文庫として出ていますが、私の愛蔵書は今や絶版となってしまった篠崎書林のニュー・モンゴメリ・ブックス。自筆で「1985.4.14」と購入年月日が記されているので、14歳の誕生日2日前に買って読んだよう。下の青い本は『青い城』執筆当時の日付が含まれるモンゴメリの日記。読後にそちらを参照して執筆の背景を探るのも面白かったです

読書会では、毎度のことながら皆さんのするどい感想、つっこみが可笑しくて可笑しくて。2時間ずっと笑いっぱなしだったような気がします。
今回再読してさまざまな発見がありましたが、個人的にいちばんの収穫!と嬉しかったのは、原書を読んだら『青い城』の所在地がはっきりスペインと書かれていたこと。(日本語版にはなぜか訳出されておらず…)
それで、バーニイがアルハンブラ宮殿を見せたい、と言うのにつながることも合点がいったし、何より作者モンゴメリが若い頃からワシントン・アーヴィングの『アルハンブラ物語(The Tales of Alhambra)』を愛読しており、いつか訪れたいと願っていた、その想いがこの作品に込められていたこともよくわかりました。

ほかのモンゴメリ作品同様、『青い城』にも心に留めたい素敵な言葉がいっぱいですが、今回とくに印象に残ったのはこの言葉。
やりたいことをやって生きてきた実感のないヴァランシーが突然の余命宣告を受け、このままでは死ねない、心のままに生きたい!と痛切に思い始めるシーン。

ヴァランシーは、死を恨んでいた。生きたという実感もないのに、もう死ななくてはならないとは、いかにも不公平だ。暗闇の時間がすぎていくにつれ、彼女の心の中には反抗の炎が燃えあがってきた。それは、彼女に未来がないからではなく、過去がなかったからだ。
『青い城』谷口由美子訳(篠崎書林)、第8章より


死ぬことに悔いが残るのは、「未来がないからではなく、過去がなかったから」!
これには言い得て妙!と深く共感。とくに今、コロナ禍でまるで未来がないかのように言われがちですが、明日のために生きるのではなく、今日のため、今という一瞬のために生きることをしている人は、不安も恐れもないはずです。
素敵な時を重ねる、想い出を重ねる。そんな生き方をしていきたいな、とあらためて感じさせてくれたヴァランシーの(モンゴメリの)ひと言でした。
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コメント

miwako

読書会、楽しかった〜。
ありがとうございました。

篠崎書林の「青い城」、記憶をたどると私が入手した(買ってもらった)のは、15才です。
やっぱり影響受けるよねー。
たまらんよねー。
何度も読む年頃だわ(笑)

同じ時代にニューモンゴメリブックスを読みふけっていた仲間がいて幸せです(*^^*)

naokoguide

miwakoちゃんへ
こちらこそありがとうございました!
楽しかったね~♪

ニューモンゴメリブックス、いいよね!
なんてたってサイズがいいし、シンプルな装丁も好き。お小遣いで少しずつ買ってたから、全巻そろえられないうちになくなっちゃったのが心残りです。

やっぱりmiwakoちゃんも私と同じ頃に読んでいたのね、うふふ、嬉しい♪
「もつれた蜘蛛の巣」がどうしても面白くなくて、挫折した気がする。いま読んでみたら面白いと思えるかな~。

Pearl

naokoちゃん、

読書会、おつかれさまでした。
ブログでも続きを楽しめて嬉しいです。

あとね、ブラーニー城のこと、読書会でみんなと話していて
本当にあの時行かれて良かったな、としみじみ思いました。
コロナ禍の今となっては、衛生的にも色々大雑把だったことですら何だかいい思い出です。
ブラーニー城なんて、直子ちゃんが連れて行ってくれなかったら絶対行かれなかったと思うので本当に感謝しています。

誕生日だからと背景を素敵なお花の背景に変えてくれていたのも嬉しかったです。
いつも盛り上げてくれてありがとう。
これからも鋭い考察と楽しい解説をお願いします。

naokoguide

Pearlさんへ
こちらこそ、楽しいひとときをいつも本当にありがとう!
読書会がおわったあと、ベンジャミンおじさん問答集を作っておくべきだったーって後悔(笑)。ジェーンを読み始める前に、その部分だけ抜き書きしようかしら。(ウラPearl集みたいになりそうで、怖い…笑)

ブラーニー城の写真を準備してミニ・プレゼンして下さったPearlさんには大感激でした!
今回の読書会のハイライトだったので、ブラーニーの石のことだけ別途ブログに書きましょう、と昨日書いている途中で寝てしまったので、これから続きを書いて完成させます!
皆さんが最初にアイルランドに来てくださったのがもう20年近くも前なんて嘘みたい。アフター・コロナのブラーニー城がどうなるか、興味津々になってきました(笑)。

アンナム

私もこのお話仲間にいれて!
昨日Mさんと電話で読書会の話題になった時、ブラーニー城に連れて行って
いただいたことを懐かしく語り合い、大笑いでした。
本当にあの時連れて行っていただきよかった!としみじみ二人で感謝したのよ。
Pearlさんが写真を用意してくれたのであの時のことがよみがえり、またまた大笑い。
楽しかったわね。
この読書会のおかげでずっとしまってあった思い出も共有できました。
「青い城」は”私のモンゴメリ”のなかでは影が薄かったけど、上位に浮上してきました。読書会のおかげです。

naokoguide

アンナムさんへ
アンナムさんも入ってくださって嬉しい♪
Mさんにもお話くださったんですね、旅の思い出をこうして共有できるのはなんとも幸せなことですよね。
Pearlさんの周到な準備のおかげで、あの写真を見せていただいてさまざまな記憶がよみがえりました。最上部へのぼる最後の部分で手をついてのぼったときのアンナムさんのこと、列に並んでいた時にキスするか迷っていたK美さんのことも。
またご一緒に旅をさせていただきたい!って心から思いました。
非公開コメント

naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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