金曜夜にRTE(アイルランド公共放送)で放送される「ザ・レイト・レイト・ショー(The Late Late Show)」というトーク番組があるのですが、クリスマスが近づくと「ザ・レイト・レイト・トーイ・ショー(The Late Late Toy Show)」(略して、ザ・トーイ・ショー)と名を変えて、子供向けの特番が放送されるのが恒例となっています。
1975年初回放送の長寿番組で(ザ・レイト・レイト・ショー自体は1962年より。「徹子の部屋」より古い!)、クリスマス一色のまるでおとぎの国のようなスタジオで、その年発売の新しいおもちゃが紹介され、公募により選ばれた子どもたちがそれを試してみたり、一芸を披露したり、その年話題となった芸能人やスポーツ選手が登場したりします。
視聴率70%を超える超人気番組で、子どもはもちろん、かつて子どもだった大人たちもある種のノスタルジアから楽しみにしているよう。全国のお茶の間で視聴されるという点では、かつての日本の紅白みたいな位置づけかもしれませんし、「ザ・トーイ・ショーに出るのが夢だったんです」って言う子どもたちを見ると、その昔、「ピンポンパン」のおもちゃの木に猛烈に憧れた自分を思い出します(笑)。
今年のザ・トーイ・ショーは新型コロナ禍のため出演者を減らし、ソーシャル・ディスタンスを維持して先週放送されました。
RTEのウェブサイトでも同時配信され、海外に住んでいるアイルランド人も故郷なつかしさにインターネットで視聴。全世界で170万人が視聴するという記録的な数字を打ち出しました。
番組を通して子どものための団体や施設への寄付を募り、集まった額はなんと620万ユーロ(約7億8000万円)!
これぞアイルランドだなあ、と、この国の思いやりのネットワークにただただ驚愕させられたのでした。
実はこのザ・トーイ・ショー、アイルランド人がどうしてこんなに盛り上がるのか私にはイマイチぴんとこず、これまであまりちゃんと見たことがなかったのですが、今年は家にいるし、放送直前に電話でおしゃべりしていた友人ニーヴが「じゃあね、ザ・トーイ・ショーが始まるから!」といそいそと電話を切ったこともあり(笑)、その流れでテレビをつけたらすっかり見入ってしまいました!
笑いあり、涙あり、ホストのライアン・トブリディーのクリスマス・セーターが素敵、そして、子どもたちを喜ばせようと一生懸命な姿にも心から感動しました。
※名場面や話題いろいろ→
RTEのウェブサイトにて
※ハイライトの見逃し配信→
Toy Show 2020 Top Moments(アイルランド国内でのみ視聴可)
病気を克服した子や、夢に向かって突き進む子が次々に出てきて、どの子にも感動させられましたが、中でも放送後1週間近くたつ今もなお話題となっているのが、アイルランド南部コーク(Cork)に住む6歳のアダム・キング君。
車椅子で登場し、それはまあ愛くるしい笑顔で、手作りの「ヴァーチャル・ハグ」を紹介。170万人の視聴者の心をわしづかみにした真のエンジェルです。

ソーシャル・ディスタンスを保ってのアダム君の「ヴァーチャル・ハグ」。相手に向かって「Hug for You」と書かれたハート型をかかげるのです💓
こちらの動画は、子ども病院で仲良しのホスピタル・ポーター(患者や医療用具を移動させたり運搬する職)のジョンさんがサプライズで登場し、「ヴァーチャル・ハグ」するシーン。きょとんとしながらも嬉しそうなアダム君がかわいくて、何度も見ては癒されています。
そして本日ニュースになった、高齢者施設を慰問する子どもたちの動画。どうやらアダム君の「ヴァーチャル・ハグ」は社会現象となったよう!
ザ・トーイ・ショーの放送後、アダム君に胸キュンとなった人が続出。アダム君に寄せた曲が作られ、複数のイラストや肖像が描かれ、ダブリンの街角には「バーチャル・ハグ」の壁画まで登場しました。

壁画アーティストの女性により描かれた「バーチャル・ハグ」→
Mural inspired by Toy Show's Adam is a gesture of hope (RTE News)より
アダム君の夢はNASAで仕事をすることで、足の骨の病気のせいで宇宙飛行士にはなれないから地上連絡員になりたい、と番組で言ったところ、さっそくNASAから「君のスピリットに感動しました。いつの日か夢を追う我々のチームに迎えるのを楽しみにしています。待ってるよ」といった内容のメッセージまで届きました。
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NASA 'can't wait' for Toy Show's Adam to join team of 'dreamers' (RTE News)
ホストのライアンがロケットになってスタジオで打ち上げのデモが行われました。ライアンに、カウントの仕方を正すアダム君、ロケット打ち上げが大好きで本当によく見ているのでしょうね
すっかり国民的アイドルとなったアダム君ですが、なんと明日の「ザ・レイト・レイト・ショー」に再び出演するそう。
放送を見て感激し、アダム君に「会って話そうじゃないか」とメッセージを送ったカナダ人宇宙飛行士のクリス・ハッドフィールド(Chris Hadfield)さんと番組で対面するのだとか。
足の病気という苦難にもめげず明るく生き抜くアダム君の笑顔が、この新型コロナ禍にあって、多くの人に希望と勇気を与えていることは間違いありません。明日もまたアダム君に会える!と思うと、なんだか元気がわいてきます♪
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