一昨日『アン』仲間とのオンライン読書会があり、今回のテーマは『アンの愛情(Anne of the Island)』(以下、『愛情』)でした。
私がアン・シリーズ中、『赤毛のアン』に次いでもっとも多く読んでいると思われる一作。読みながら、ああこのセリフ知ってる!という場面が実に多く、人生のモットーとしているアレコレは『愛情』のウケウリだったのね、と出典を忘れて我が血肉となっていたことは自分でも驚くほどでした。
シリーズ3作目となる本作で、アンはプリンス・エドワード島からカナダ本土ノヴァスコシアの大学生となります。新しい環境で、少女から大人の階段を登り始めるアンの戸惑いやときめきがあふれんばかり。さらにはアンのロマンスも。
田舎の中高生だった私は、こういう大学生活を送りたいわ~、こんなロマンチックな恋愛をしたいわ~と、痛切な憧れを抱いてページをめくっていたものです。
前回の
『アンの青春(Anne of Avonlea)』から、SpotifyのオーディオブックとKindleの電子書籍で原書を耳と目で読む!という方法が気に入っていて、今回もそれをしてから翻訳を読みました。
『愛情』は引用やほのめかしも多く、『青春』に比べて英文が難しくなったような印象を受けました。
『愛情』が出版されたのは1915年。作者モンゴメリ41歳の年で、『青春』の出版から6年の年月を経ています。その間にモンゴメリは結婚し、故郷のプリンス・エドワード島を離れカナダ本土オンタリオ州へ居を移し、出産、死産を経験。敬愛する英文学者ゆかりの地を訪ねてイングランド、スコットランドへハネムーンに出かけたのも、第一次世界大戦が勃発し戦時下に突入していったのもこの期間でした。
人生の歯車が大きく回転していく中で、ひとりの女性として、いち作家として、一段階深いところへ到達したのではないでしょうか。幼な友達の死に直面して語られるアンの(きっとモンゴメリの)死生観や、大人になることへの気だるい嫌悪感みたいなものは、自分がアンの年頃だったときには読み取れていませんでした。
She felt very old and mature and wise—which showed how young she was.
たいそう年をとり円熟し、賢くなった気持がした―ということは、彼女がいかに若いかを示していた。(第29章、村岡花子訳)
…とモンゴメリが示唆するとおり。
聖書や文学作品からの引用も実に広範囲にわたっており、巧みな仕掛けが散りばめられていて、モンゴメリの教養や見聞が前作以上にあふれ出ているように感じました
アイルランド・ネタも多いです。新たな大発見もありました!モンゴメリへのケルト思想への傾倒も色濃く表れています!
それについては後日またご紹介出来たら…と思っていますが、『アンの愛情』と言ったら、やはりこの子たちなしでは語れませんね。

じゃ~ん、ゴグとマゴグ、アイルランド・バージョン!
アンが女友達と4人で暮らす「パティの家」に鎮座する、陶製の犬。右がゴグで左がマゴグ、ここ、大事です(笑)。
松本侑子さん訳のカバー絵のとおり、白地に緑の斑点、鼻も耳も緑…がゴグとマゴグの基本形ですが、私の子たちはアイルランド生まれなので緑の斑点の代わりにシャムロックが散りばめられています☘
かれこれ20年前、バンラッティ・キャッスル民俗村(
Bunratty Castle & Folk Park, Co. Clare)の陶器屋さんで出会いました。
私のゴクとマゴクへの執着の歴史は長く(笑)、90年代にドイツでも一匹購入しています。
日本のサチコさんのお宅に長年イソウロウさせていただいているマゴグなき、ひとりぼっちのゴグについては、ゴグとマゴグとは何ぞや、という話とともに過去ブログをご参照ください。→
「アン」の通信発送会と、ゴグとマゴグのこと最後にアンの言葉を。アン・シリーズをはじめ、子どもの頃から愛読している物語の世界に立ち返るといつも、この言葉が脳裏に浮かびます。本は永遠の友であり、いつでも帰ることの出来る心の故郷ですね。
I feel as if I had opened a book and found roses of yesterday, sweet and beloved, between its leaves.
本を開いたら、きのうのばらがやさしく、愛らしく、ページの間にはさまっているのを見つけたという気持よ(第21章、村岡花子訳)
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コメント
ハタ坊
オランダあたりの船乗りの家には、「ゴグとマゴグ」が窓際に飾ってあって、
外向きに飾ってあれば、船乗りの亭主が在宅中。
内向きなら、出航していて留守(逆だったかも)の印なんだとか。
ということは…(笑)。
NHKらしからぬ話になりそうでしたが、
番組では奥様が海軍士官で、
旦那さんが、笑いながら説明してくれていました。
何の気なしに見ていた番組で、
「あっ、『ゴグとマゴグ』だ~」と思って、びっくり。
海洋国ならではのエピソードですよね。
きっと、ヨーロッパからカナダへ船と一緒に伝わった物なのでしょう。
番組を見直して、もう一度確認してみようと思っています。
2020/11/01 URL 編集
naokoguide
うわ~、それ、すごい話ですね!
ゴクとマゴク、思いがけないことで大活躍(笑)
イギリス生まれのゴクとマゴク、世界のいろいろな場所に出没し、その土地の風習となる…みたいな。
面白い話をシェアしてくださり、ありがとうございます♪
2020/11/01 URL 編集