欧州は深刻な第2波の真っただ中にあります。新規感染者数が秋になって急増、欧州全体で第1波のピーク時の4倍になっているとか。
フランス、英国、スペインは相変わらず高い数字で、いったん収まったかに見えたイタリアも再び増えているよう。人口1000万人強のチェコやベルギーでも一日の新規感染者が1万人にのぼるという凄まじい事態となり、ベルギーの保険大臣はその状況を「ツナミのようだ」と言ったそう…。
アイルランドもこのところ、新規感染者数が1000人(人口500万人弱)を超える日が続き、第1波の最高記録を越えてしまいました。死者の数は少ないものの、重篤患者数がじわじわ増えていて、医療機関のひっ迫が懸念されています。

10月16日に公表された、過去14日間の人口10万人当たりの新規感染者数による色分けマップ。アイルランド島も北アイルランドを含む北半分が最高値に色分けされてしまっています
各国で再び制限が強化され、今やヨーロッパ全体が半ロックダウン状態と言っていいでしょう。
アイルランドもその例にもれず、昨晩首相による新たなアナウンスがありました。明日の深夜(10月22日0時)より12月1日までの6週間、アイルランド全土が
現行のレベル3(地域によってはレベル4)から、もっとも厳しいレベル5の制限に引き上げられます。
導入される制限の主な内容を、ニュース報道を参考にまとめてみます。
※参照→
At a glance: What does Level 5 mean? (RTE News)など
・移動は5キロ以内、エクササイズ目的のみ。この範囲内でなら別の一世帯と共にエクササイズをするなどの目的で会っても良い →仕事、介護、チャイルドケア、医療などの目的以外で5キロを超えた場合、罰金が課せれる(詳細は今後発表)
・スーパーマーケットや薬局以外の不要不急の小売店は閉店。床屋、美容院も閉店
・国が定めたエッセンシャル・ワーカー(医療、流通、報道など)以外は自宅からリモートワーク
・他家への訪問は禁止(庭もダメ)
・ひとり暮らしの人、シングルファーザー/マザーは別の一世帯とペアとなり、「ソーシャル・サポート・バブル」となって良い
→後述!・学校、保育施設は開けたまま
・パブ、レストラン、カフェなど飲食店はテイクアウト/デリバリーのみで営業。ダブリンのウェット・パブ(食事を出さないパブ)は休業のまま
・ホテル、ゲストハウス、B&Bなどは開けていてよいが、宿泊を許可して良いのは必要不可欠な仕事に従事している人のみ
・結婚式の招待客は25人まで(年末までそうする)。お葬式の出席者は10人まで
・教会、モスクなどでの宗教の集まりはオンラインで
・博物館、美術館など各種文化施設は閉館のまま。図書館はオンラインでサービスを続けて良い
・屋外の遊技場などの施設は開けておいて良い
・建設現場、ほとんどの製造業は継続してよい
・プロまたはそれに相当するスポーツ、GAA(アイルランドの国技)の国内リーグ、競馬、ドックレースは無観客で継続
・屋外での小中高校生の接触を伴わないスポーツの練習は、ひと群れ15人までで行って良い
・高齢者施設、医療施設への訪問は一部例外を除いて停止
・公共交通機関は定員の25%で運行。スクールバスは対象外
制限強化に当たり、仕事やメンタルヘルスのサポートも拡大させるそう。
9月以降、上限が週300ユーロに引き下げられたパンデミック失業給付金は、350ユーロに引き上げとなり(週400ユーロ以上の収入のある人のみ。それ以下の場合は250ユーロ/203ユーロ)、一時解雇の従業員への補償手当もそれに準ずるそうです。
今回のルールでとくに私の目を引いたのは、孤独になりがちなひとり暮らしの人、シングルファーザー/マザーとして子育てをしている人は別の一世帯とペアを組んで「ソーシャル・サポート・バブル」をつくって良い、という点。厳しい制限下で孤立する人がないように、という配慮かと思います。
「ソーシャル・サポート・バブル(Social Support Bubble)」というのは今回加えられた新しい概念ですが、以前にロンドン在住の知人と話をしたときに、あちらでは同様のルールがあると聞きました。外出中にネコにエサをやってもらうために自宅に入ってもらう、とか、もっとプラクティカルなことのためのルールのようでしたが。
地域コミュニティーが密なアイルランドでは隣り近所などで物理的・心理的支援をし合うことはある程度自然に出来てきている面がありますが、こうして政府が名言することで精神的な負担が軽減され、安心感が増すように思います。
昨日のミホール・マーティン首相のスピーチでも説明がありましたが、感染ゼロにするための国境封鎖や、免疫獲得というアプローチはアイルランドにとって現実的ではなく、アイルランドは経済を出来る限り開きつつ、ワクチンが出来るまでウィルスと共存していくという方針を固めています。
NPHET(政府の公衆衛生チーム)のレベル引き上げの提言を受けつつも、レベル3で踏ん張ったのはそのせいでしょう。しかし効果が表れず、苦渋の決断で厳しい制限に踏み切ったといった様子が昨晩の首相の話しぶりからうかがえました。
その後の記者会見でのマーティン首相の発言を見るに、ウィルスとの闘いはまだまだ先は長く、来年いっぱい続くと考えているようでした。感染拡大が急増した過去2週間、NPEHT(政府の公衆衛生チーム)がレベル引きあげを提言しているのにどうしてすぐにしないの?とか、これでは緩すぎるのでは?(その反対の意見もあり)といった疑問や批判がさかんに出ていましたが、経済が立ち行かなくなったり、メンタルヘルスへに影響を及ぼすことを考慮して、政府は制限引き上げや解除のタイミングを慎重に計っているのだなあ、と理解できました。
今、半ロックダウン状態にして感染をおさえ、12月になって解除することを目標とすれば、クリスマス商戦にまだ間に合う!ということも狙いとしてあるようです。
あさってから再び半径5キロの暮らし。
5月の頃、2キロから5キロになって嬉しかったことが思い出されますが、解除が進んでいくときに比べ、その逆は辛いですね…。
今朝友人ディヴィッド&クリスティーンからメールが入り、
「ナオコのサポート・バブルはうちだからね。いつでも来てね!」
…と。思わずウルッときてしました。
ひとり暮らしなのにまったく孤立した気分になっていないのでこんなふうに言ってもらって申し訳ないくらいですが、こういうことを言ってくれる人がまわりにいるから孤独になっていないんですよね。本当に、言葉に出来ないほどありがたい。

秋の天候が安定していたため今年のアイルランドは紅葉黄葉がとくに鮮やかですが、あっという間に散り始めています。黄金の落ち葉を踏んでジョギング中…
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コメント
Naoki Wada
アイルランドは再びコロナの感染が増加して、半ロックダウンの状態のようですね。このコロナとの闘いが来年まで続くかと思うと、気が重いです。
東京の感染者数は一進一退ですが、街中の賑やかさはコロナ前に近くなっていて、大学でも対面授業が再開されました。
欧州から見ると、東京の街の様子にきっと驚くと思います。
最近の仲間内での話題は、インフルエンザの予防注射を打つか、打たないか、といったことで、秋が深まりインフルエンザが流行しだした時にコロナと症状が似ているので区別ができず、医療現場が混乱することを危惧しています。
とにかく、ナオコさんも、心身ともにお大事にお過ごしください。
2020/10/20 URL 編集
naokoguide
そうなんですね、インフルエンザ、こっちではコロナで精いっぱいで話題にもなっていない。
かなり温度差ありますね。でも、日本は欧州から比べたらコロナなんかないに等しいくらい少ないので、それでもみんなマスクをしていることがスゴイと思う。だから少ない、と考えるべきなんでしょうが。
こちらは制限強化することでのメンタルヘルスへの影響…ってことをすごく言っていますが、日本は厳しい制限してないのに、コロナでの死者より自殺者の方が多い。同じウィルスに対しての、国によって地域によっての対応や考え方、ウィルスの影響で起こることの違いが浮き彫りになりますね。
Wadaさんもどうぞお気をつけてお過ごしください。いつもありがとうございます!
2020/10/20 URL 編集
fairy
3月4月頃に比べると何となく人々の緊張感も緩んでしまっていると最近は感じていました。笑
学校は閉鎖しないのは有難いです。我が家は実際学校に通っているのは中学生の末っ子と、実験のクラスの為に週に1回だけキャンパスへ行く大学3年の長女だけです。
やっとLeaving certの結果も出た次女は年内は全てオンラインでキャンパスにも行けず気の毒です。(DCUに入学しました!)が、すでにオンライン飲み会は開催したとか。笑
これからやって来る暗くて寒くて長い冬。。。コロナと一緒にメンタルの方も気をつけて過ごしたいですね。
2020/10/20 URL 編集
草野めぐみ
アイルランドの第2波は予想以上に大きなものなんですね💦
昨日ネットのニュースでもEU初の全国再封鎖へというタイトルで紹介されていました。
北海道もこのところ感染者が増えていてこれから雪の季節になったらどうなるのだろうと、話していたところです。
まだまだ行ったり来たりの状況が続そうで、考えると落ち込んでしまいます。
とはいえ、山下さんがブログで紹介されていたケルティッククリスマスコンサートも12月に行われますし、楽しいことに目を向けて気持ちを上げていきたいです。
アイルランドもだいぶ寒くなってきてますよね。山下さんも、体調には気を付けてお過ごしくださいね。
2020/10/20 URL 編集
naokoguide
ほんとに、振り出しに戻る…ですよね。そして、これが新型コロナというものなんだ、と実感を強めました。
おそらくワクチンが普及するまで、厳しくしたり緩めたりを繰り返していくのでしょう。
そういうものだと割り切って、気を付けるべきところを気を付けながらやり過ごした者勝ちかな…と思っています。
とは言っても、若い方々にとっては青春は2度と戻ってこない。私たちの1~2年と彼らの1~2年は意味が異なりますよね…。
キャンパスに行けない大学生活なんて。オンライン飲み会、じゃんじゃんして発散して欲しいです。
お互いに気を付けて、こんな中でも楽しく過ごしましょう!
2020/10/20 URL 編集
naokoguide
ヨーロッパの中では人口当たりの新規感染者がもっと多い国もたくさんありますが、病床数が少ないアイルランドは、その部分に自信がある国より早めの対策を取る必要があります。
新型コロナ対策でほかの病気の検査や治療があとまわしにされている現状もあるようですので、医療崩壊を防ぐためにはこの方法しかないよう。
そうですね、こんな中でも楽しいことは結構あるものです。なくしたものではなく、今「在る」ものを愛おしんで暮せば良いだけのこと。
北海道も秋が深まる頃でしょうか。どうぞお気をつけてお過ごしください。私も元気でいます!
2020/10/20 URL 編集
北の国からSHIGE
また、巣籠もりですね。
でも、Naokoさんにはディヴィッド&クリスティーンさん始め、お茶やランチ、ハイキングやスイミング、そしてカヤックにオンライン読書会と、色々と誘ってくれる素晴らしいお友達が、大勢いますね。
これも、Naokoさんの人徳の賜物と思います。
日本以上にコロナ禍で大変なアイルランド。
でも、私達をむしろ元気づけてくれるNaokoさんのブログを拝見していると、こちらまで気持ちが明るくなってきます。
どうぞ、お身体大切になさり、これからも宜しくお願いします‼️
2020/10/21 URL 編集
naokoguide
日本語のメディアでもニュースになったようですね。どうやらアイルランドは欧州の中で、いち早く制限レベルをもっとも厳しいレベルに引き上げたようです。と言っても、制限の度合いや内容が各国により違うので、移動制限だけをとって言うことはできないと思いますが。
この、制限が厳しくなったり緩まったりを繰り返し、生活のリズムが変化し続ける暮らしは、私のように毎日同じ時間に出勤するといったルーティンがそもそもなく、日々違うアジェンダで生きてきた者には向いているのかもしれない、と思い始めました。
5キロですが、それが意外と巣籠もりでもないんですよ(笑)。普段のジョギングコースはすっぽりその中に入りますし、5キロ内でエクササイズ目的になら出ていいです…と言われると、外に出るためにエクササイズするみたいなことになって、ジョギング人口がかえって増えたりするのが面白いです(笑)。
ほんとうに周囲の人たちには助けられています。よくまあ私に付き合って仲良くしてくれるなあ、と本当に感謝しかありません。
私こそ、SHIGEさんご夫妻にはいつも励まされています!こちらこそ今後もどうぞよろしくお願いいたします!
2020/10/21 URL 編集