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トム・クリーンのお墓参りとサウス・ポール・イン

先週末ディングル半島(Dingle Peninsula, Co. Kerry)へ行った際、トム・クリーン(Tom Crean, 1877-1938)のお墓参りをしてきました。

トム・クリーンのことは先日のアイルランド・カルチャー講座の「第一次世界大戦とアイルランド独立」の回で、英愛の歴史の軋轢により長きにわたりその名を伏せられていた英雄のひとり…としてちらりとご紹介させていただきました。
20世紀初頭、イギリス海軍の水兵としてスコット、シャクルトンらが率いた南極遠征に3度にわたり参加。氷上を1500マイル(2400km)歩き、力尽きた仲間のためにさらに35マイル(56km)、18時間かけて単独で助けを求めに行くなどの超人的な活躍で英国王より極地メダルを授与された人物です。
ところが彼が活躍した時代は、独立を目指すアイルランドで反英の気運がピークだった頃。クリーンはメダルをしまい込み、英雄伝を語ることもなく、海軍除隊後は故郷ディングル半島のアナスコウル(Anascaul, Co. Kerry)村のパブの店主として静かな余生を送りました。

トム・クリーンの名は死後半世紀以上経って、英愛の政治的和解が進む中、名誉奪回のごとく知られるようになりました。サウス・ポール・イン(South Pole Inn)と名付けられた彼のパブは、今もお孫さんにより開かれています。→South Pole Inn

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2016年9月撮影のサウス・ポール・イン。先週末通ったときには壁の色がオレンジ色にぬりかえられていました

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入り口には「トム・クリーン 南極探検家」と記載された記念碑が

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内部はまるでトム・クリーン博物館さながら。南極での写真や資料がところ狭しと飾られています

前置きが長くなりましたが、このパブの脇の小道を車で5分程行ったところに、トム・クリーンが眠る墓地があります。
(グーグルマップで「Grave of Tom Crean」で探せます)

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バリナコーティー墓地(Ballynacourty Cemetary, Annagap, Co. Kerry)。暖流の影響を直接受けるカウンティー・ケリーらしく、入り口に南国を思わせるパーム・ツリーが。アイルランドの海沿いでよく見られる木です

この墓地は、アイルランドの一般的な墓地と違い、箱型の霊廟とでも呼びたいような墓が多くあり驚きました。この地域の風習なのでしょうか。
墓碑の家族名を見るに、カトリックとプロテスタントの共同墓地のようにも見えましたが、説明書きもなければ近くに教会もなく、真相はわからずじまいでした。(トム・クリーン自身は地元のカトリックの小学校へ行っています)

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ケルト十字の墓石(右下)の後ろ、写真中央、左の木の後ろにあるのはすべて箱型の墓

そして、トム・クリーンの墓も箱型でした。

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ケルト十字付きではありますが、英雄の墓所としてはいささか殺風景な気も。謙虚だったトム・クリーンらしいのかもしれませんが。奥さんのエレーン、3人娘のうち4歳で亡くなった次女ケイティ、そのほかクリーン一族が眠っていると書かれています

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小雨の降る中、一緒にお墓参りに来てくれたスティーヴン、クリスティーン、ディヴィッド

ちなみに、サウス・ポール・インの向かいの緑地にはトム・クリーンの銅像が立っています。犬ぞりの犬の訓練係だったクリーンが子犬を抱いてたたずんでいる等身大と思われる像。

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こちらも2016年9月撮影。スティーヴンが、隊員たちが子犬を食べちゃった…って言っていたけれどそんな話あったかな。もう一度、クリーンの伝記関係を読んでみなくては

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クリーンが南極探検に参加した3つの船、ディスカバリー、テラノバ、エンドゥランスの名が書かれた碑もあり

この近辺は非常に風光明媚な地で、お墓へ行く人気のない田舎道のドライブも楽しみました。

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naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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