『赤毛のアン』をベースに、カナダCBCとネットフリックスが共同制作したドラマシリーズ
『アンという名の少女(Anne with an "E")』が、9月6日(日)夜11時よりNHK総合で放送されると聞き、ついに私もネットフリックスで視聴しました。
私のアン好きはアイルランド人の親しい友人たちの間でも知るところとなっているので、2017年の本ドラマ配信時より「ナオコ、当然見てるでしょ」と言われ続けてきました。
主役のアン役を演じたエイミーべス・マクナルティ(Amybeth McNulty)がアイルランド出身なので、こちらのメディアでも取り上げられていましたし。
ところが、これはアンを愛する人たちに共通の気持ちかと思いますが、原作が好きすぎて、もしくは「私のアン」のイメージが強すぎて、ちょっとでも違うと拒否反応が…(笑)。日本人だからお米が好きでしょ、と長粒米を出されるとまったく手をつけられない…というのと同じで、「似て非なるもの」こそいちばん受け入れがたいのです。
でも、日本で放送されたらアン仲間みんながその話で盛り上がるだろうから(おそらく突っ込みを入れつつ!笑)、その輪に入れないのはイヤ!と思い、ついに重い腰を上げて見始めたところ…。
『愛の不時着』の不眠不休で16話いっき見…に迫る勢いで、シーズン1の全7話を2日間くらいで見ちゃいました!
3年間も拒否していたくせに、第一話から号泣(笑)。いや~、このアン、私はかなり好き。不朽の名作の中に封じ込まれていたアンが一世紀のときを越え新たな生命を吹き込まれ、再び輝きだした…とでも言いましょうか。
もちろんモンゴメリ原作のオリジナルのアンも十分に輝いているのですが、原作にはないアンの心の闇、葛藤、女性としての成長、自立がリアルに描かれた本作品に「本当のアン」を見たような思いがしたのでした。

このポスターはステキですね。蝶は亡くなった人の魂であるとか、復活のしるしと言われますので「新生アン」のイメージにぴったり。今回のアンは、世界名作劇場のアニメ以来はじめて私のイメージどおりのアンかも!
ネタバレになるので抽象的な表現となりますが、作品の創り手の深い『赤毛のアン』読解が素晴らしいと思いました。原作にズバリ書いていないけれど真実はそうだったかも、ということを恐れず深読みして再現したり、光の子アンのダークサイドや、原作では埋没している社会の闇や弱者をクローズアップしている点にも共感します。
かと言って原作を否定しているわけではなく、名場面、名セリフもちゃんと織り込まれているのがいい。原作どおりのアン独特の言い回しの数々が、
先日の読書会に向けて再読したばかりだったのでより耳に残りました。年配の登場人物がよく言う(おしゃまなアンもときどき言う)「Much obliged」(「ありがとう」のちょっと古めかしい言い方)とか、アンがよく言う「scrumptious」(「すてきな」の意味の形容詞。アン独特の大げさな言葉のチョイス)が頻出したりして、旧知のアン・ワールドとのギャップを巧みに埋めてくれました。
(NHKの放送は吹き替えだそう。どんな訳になるのでしょう)
音楽にもはまりました。オープニング曲の「アヘッド・バイ・ア・センチュリー(Ahead by a Century)」がとてもいいので調べてみると、カナダでは有名なザ・トラジカリー・ヒップ(The Tragically Hip)というオルタナティブ・ロック系バンドの90年代のヒット曲なんですね。
挿入曲にはケルト音楽調の調べもあります。
(サントラが出てました→
オリジナル・サウンドトラック アンという名の少女)
そのほか、ギルバートが冬にステキなアラン模様のセーターを着ている点にも注目。(アイルランドっぽいものがあると取りあえず反応してしまいます・笑)
アン役のアイルランド出身のエイミーべス・マクナルティ(エイミー+ベスなんて『若草物語』をやってもいいような名前!)についてですが、お父さんがアイルランド人、お母さんがカナダ人で、アイルランド北西部ドネゴール県のレタケニー(Letterkenny, Co. Donegal)で生まれ育った女の子です。(現在18歳)
学校に通学せずホームスクーリングで育ち、幼い頃から地元の劇団やアイルランド公共放送のドラマに出演していたそう。
オーディションで1800人の候補者の中からアン役に抜擢され、華々しくメジャー・デビューしたものの、ドラマのトレーラーが公開されるや否やオンライン上で容姿に関する意地の悪い批判にさらされたそうです。当時15歳だった彼女は相当ショックだったようですが、心配させまいと親には言わず、「演技を見てもいないのにひどい!」と断固として立ち上がり、シーズン2配信に当たってのインタヴューでは「私の演技を好まない人がいても仕方ない。でも、してしまった演技を変えることは出来ないし、私に批判を向けても無駄なのでやめてください」ときっぱり言っているのが素晴らしい。エイミーベス演じるアンの繊細さや強さは、彼女本人のものでもあったんですね。
→
‘The comments were just so nasty towards me - it really hit me’ – Anne With an E star Amybeth McNulty on dealing with criticism online(Independent.ie)
シーズン3をもって終了した本ドラマに続き映画も2本撮り終えているエイミーベスは、女優としての道を着実に歩んでいるようです。新作のうちの一作は『
Maternal』というスリラー映画で、なんと1985年の映画『赤毛のアン』でアン役を演じたミーガン・フォローズ(Megan Follows)が監督をつとめているというから驚き。ミーガン自らがエイミーベスを気に入って起用したそうで、新旧2人のアンの夢の共演シーンもあるのだとか。(新型コロナ禍の影響でしょうか、公開はまだ未定のよう)
ミーガン・フォローズのアンを見たのは中学生が高校生のときで、実写のアンを見るのが初めてだったので印象に残っています。数年前、
アイルランド西部のアッシュフォード・キャッスルで、NHK-BSなどで日本でも放送されたドラマ『REIGN(邦題:クイーン・メアリー 愛と欲望の王宮)』のロケ現場に遭遇、出演者にカトリーヌ・ド・メディチ役のミーガンの名前を見つけ、アンとニアミスだ~と大興奮しました(笑)。
残念ながらミーガンはその日はいなくて会えなかったのですが。
…とここまで書いてからシーズン2を見始めたら、原作とあまりにも乖離していくので、『風と共に去りぬ』における別の作者の続編『スカーレット』を読んだ時のような気持ちになっています。
このまま見続け大丈夫なのだろうか、このドラマ。シーズン2、3を観たら、私の感想も変わるかも…ですが、さてどうなるでしょうか。(笑)
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コメント
草野めぐみ
でも今日のブログを読んで、ドラマで観られる!と知りました。
今週末からなんですね!!!楽しみ、しかもアン役の女優さんがアイルランド出身と聞いてますます興味を持ちました!!!
今から忘れないように録画予約します笑
今から楽しみです😆
2020/09/03 URL 編集
naokoguide
このドラマ、とてもいいです。ぜひお楽しみに♪
でも原作とは違う部分も多いので、お時間のある時に小説も読んでみてください。私は村岡花子さんの訳で親しみました。
そして、手っ取り早いお勧めは、1979年の世界名作劇場アニメ。最近日本で再放送されていたそうですが、これ、DVDを買うと高いんですよ。ところが最近、全50話すべてYouTubeにあるのを発見してしまいました。しかも英語のサブタイトル付き。(こっそりシェアします↓)
https://www.youtube.com/watch?v=i7jtG0T1qTg&list=PLZj8Ng7r6i0xGAglZgdtpT_1VXwGzcaO4
この春あまり出かけられない時期に毎日見ては、ごーごー泣いていました(笑)。
ドラマのアン見たら、また感想聞かせてくださいね!
2020/09/03 URL 編集
Yama
次回の読書会のテーマが『アンの青春』だと聞きました。
アンのアワテモノの性格が良くわかる「ドリー事件」のあのドリーがどんな牛さんなのか。
アドレスを知らないのでNaokoさんに直接メールが送れません。私のHPに「ドリーのページ」を作りました。
http://kemanso.sakura.ne.jp/ireland.htm
2週間ほどサーバーに置いておきます。
さて、残るはジンジャーですね。
9月6日 台風の日
そのせいで『アンのいう名の少女』の放映は延期されました。カナシイ。
2020/09/06 URL 編集
naokoguide
ドリーのお話し、ありがとうございます!
読書会にご参加の皆さんにもシェアさせていたきますね。
ジンジャー。いったいどんなオウムなのか。私の中ではカラフルな色のイメージだけど、そんなこと書いてあったかしら。読み返してみます!
2020/09/07 URL 編集
草野めぐみ
アンという名の少女、見ました!!!
コメントにあったように、先週末のNHKでの放送が1週伸びてたので(その時にはなぜかわからなかったのですが💦)
結局ネットフリックスで字幕で観ました。
とてもよかったです。本当に面白く、1話から号泣でした笑
赤毛のアンも、せっかくなのでとネットで本も購入し、これから読もうと思っています。
これから毎週日曜の夜が楽しみになりました(#^.^#)
2020/09/08 URL 編集
naokoguide
ほんと、よく作られたドラマで感心しますよね。プリンスエドワード島の赤土の崖の景色なんかも素晴らしいですし。
私はシーズン2に入り、見る速度ががぜん落ちました(笑)
原作とあまりにかけ離れていて、アンも私の知らないアンすぎてちょっとついていけなくなってきた…。カスバ―ト家はともかく、バリー家なんかもう別モノで…笑
雇人のジェリーと、ギルバード見たさになんとか見続けている感じです。シーズン1が良かった…
2020/09/09 URL 編集
Naoki Wada
ドラマの感想は最後まで観て観ないと分かりませんが、主役のエイミーべス・マクナルティ(Amybeth McNulty)の、青い瞳が印象的でした。アイルランド出身ということですが、私が訪れてきたアイルランドの西海岸で出会った少女たちの瞳の色と同じでした。挿入曲もアイルランド調のものが多く、良いですね。
これから毎週日曜日の夜が楽しみです。
2020/09/13 URL 編集
naokoguide
そうですね、アイリッシュ・ブルーの瞳。さすが、Wadaさん、着眼点がプロですね!
アイルランド西海岸にああいう瞳と面差しの少女、よくいますよね。
エイミーべスはお父さんがアイリッシュ、女の子はお父さん似になることが多いから、いかにもアイリッシュの外観を受け継いだのかなあ、って思って観てました。
これからWadaさんとドラマの感想をシェア出来そうで嬉しいです♪
2020/09/15 URL 編集
Naoki Wada
じわじわとこのドラマの反響があるようで、私のFBの友達の幾人かが書き込みをしていました。
私としては、ストーリーも面白いのですが、画面に映っている食事風景や家具や衣装などに興味を持ってみています。「神は細部に宿る」という諺がありますが、良い映画やドラマは、それらに手抜きがないからです。
ところで、原作者のLucy Maud Montgomeryのルーツはどこだろうとふと思って調べたら、父方はスコットランドという説があることが分かりました。
http://www.malpicos.sakura.ne.jp/HomePage/Surnames/M-O/Montgomery.html
今後も、このドラマを色々な見方で楽しみたいと思います。
2020/10/07 URL 編集
naokoguide
そうですね、時代ものドラマはそういう部分も見どころですよね。
アンに関して、19世紀末のカナダの片田舎の生活様式を本当によく描写しているのは、1979年のアニメです。最近再放送が行われていたようですが、私も数十年ぶりにあらためて見返す機会があり、感動しました。
作者のL.M.モンゴメリは父方も母方もスコットランドからの移民の子孫です。原作ではアンもマリラ&マシュウもみな、スコットランド系として描かれています。
次回お会いした時には、Wadaさんとたっぷりアン談義できそうで楽しみです♪
2020/10/08 URL 編集
きみちゃん
すごくいいと思う!
みんなのトラウマ「マリラ、ブローチをなくす」事件も、
アンがあそこまでやれば納得だ。いいぞいいぞ!
2020/10/20 URL 編集
naokoguide
ははは、みんなのトラウマに爆笑。確かにそうかもしれませんね・笑。
いいぞ、いいぞ~に私も一票!
でも、シーズン2にはくじけています…
2020/10/20 URL 編集