ジョギング中、いつも通るウォー・メモリアル・ガーデンズ(
The National War Memorial Gardens, Dublin 8)でセレモニーが行われていました。

第1次世界大戦の犠牲者を称えて建設された庭園の、ケルト十字架のモニュメントにて
警備の人に聞くと、第2次世界大戦のVデー(Victory Day=戦勝記念日)だよ、とのこと。
今日8月15日は終戦記念日。そう、日本が降伏した日は、イギリスを含む連合国が勝利した日なのです。
アイルランドは1930年代より中立国を宣言しているので第2次世界大戦に国としては参戦していませんが、当時はまだ英連邦に属していましたから、イギリス軍の一員として戦地に赴いたアイルランド人も少なからずいました。行われていたのはその方たちへのセレモニー。
北アイルランドを含むイギリスでは、Vデーには祝賀&慰霊行事が各地で行われます。イギリスの被支配国だったアイルランドで公式に行われるはずはなく、でもこんなふうにひっそりとやっていた!
会話を交わした警備の人によると、長きにわたりアイルランドを支配し苦しめてきたイギリスの勝利を祝うとは何事だ!という風潮が根強く、過去に行事を妨害されたこともあったとか。そのため宣伝することもせず、軍の関係者のみで毎年静かに行われているとのこと。
メディアも公式に報じることはしませんので、今日たまたまた通りかからなかったら私も知らないままだったでしょう。

アイルランドの軍服を来た人がケルト十字架に花輪を捧げ、(ちょっぴり調子はずれの)トランペットの音がしめやかに鳴り響きました…
第2次世界大戦のVデーは2つあり、ヨーロッパでの戦争が終結した5月8日がVEデー、太平洋戦争が終結した8月15日がVJデー。VEの「E」はヨーロッパ(Victory in Europe Day)、VJの「J」はジャパン(Victory in Japan Day)です。
日本の終戦記念日は、ところ変われば「日本に勝利した記念日」となるわけです。
あの戦争で日本兵が連合軍の捕虜を残酷に扱ったことは、映画の題材にもなり語り継がれています。古くは『戦場にかける橋』、最近ではコリン・ファースと真田広之が共演した『ザ・レイルウェイ・マン(邦題:レイルウェイ 運命の旅路)』などが記憶に新しいところ。数年前、後者の映画を機内で見て号泣し、前にすわっていた人にティッシュを差し出されました…。
以前に読んだアイルランドの新聞記事によると、現アイルランド首相のミホール・マーティンさんの伯父さんも東南アジアで日本軍の捕虜となり、日本兵への憎悪を死ぬまで持ち続けていたそう。マーティン首相のお父さんもそれを聞いていたのでしょう、昭和天皇の葬儀にエリザベス2世女王が参列したことに激怒するお父さんを見て驚いた…と語っていました。(参照→
Micheál Martin’s family history: from old IRA to the British army, The Irish Times - Jan 26, 2015)
戦後75年という節目でもあり、イギリス領である北アイルランドでは、ベルファーストを含む各地で大がかりなセレモニーが行われたようです。
→
VJ Day commemorations taking place across NI, BBC News一方アイルランドではこの日をVデー、すなわち「連合軍が日本に勝利した日」として報じることはまずなく、「日本の終戦記念日」として報じられます。
8月に入ると必ずナガサキ、ヒロシマがニュースになり、今日は閣僚たちが靖国神社へ参拝したことが報じられました。→
Japanese ministers visit Yasukuni Shrine on anniversary of WWII defeat(RTE News)たまたま通りかかって遠巻きで参列してしまったセレモニーですが、終戦記念日にアイルランドの地で、イギリスの勝利を称える儀式に、戦争に負けた国の日本人が参列するとは。これこそ戦後75年のポジティブな重みと言えるのではないでしょうか。
このことにもはや誰も違和感を感じない。これぞ平和だ…と身をもって感じつつ、アイルランド、イギリス、日本のすべての戦争犠牲者のことを想って黙とうを捧げました。
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コメント
hikaru
日頃、終戦じゃない、敗戦の日だと思っていても、VJ dayとしと祝われている事をSNSで目の当たりにすると一瞬、胸を突かれました。
あふれそうになる涙は、どこからくるのか。他国の人の言葉を生で知ることができるいまだから生まれた感情でした。
2020/08/17 URL 編集
naokoguide
私は最初、驚きました。終戦の意味が全く違う、と。
それを歴史として認識しつつ、敵味方をこえて平和を願う日なのかな、と今は思っています。
2020/08/17 URL 編集