新型コロナ禍にスタートした『赤毛のアン』仲間とのオンライン読書会。かれこれ6回を数えるまでとなり、一昨日、カナダ、日本、アイルランドの3か国10名がオンライン上に集いました。
今回のお題は『アンの友達』。アン・シリーズのスピンオフ的な短編集で、作者モンゴメリが過去に発表した短編の中から特に良いと思われるもの12作を集めて1911年に出版されたもの。第一次世界大戦以前の牧歌的なトーンが残る物語集…とお仲間のひとりが言うのを聞いてその通りだなあ、と思いました。
原題は『Chronicles of Avonlea(=アヴォンリー年代記)』。アヴォンリー村にいる(いた)一風変わった、でも才気あふれるあの少女…といったように、アンのことが時おり人々の口の端にのぼったり、アン・シリーズ本編では通行人くらいの端役がここでは主役を張っていたりするのが面白い。
とは言え、子どもの頃は「アンが出てこない作品なんてつまんないっ!」と思っていたので、かなり読み飛ばしていました。大人になってから1、2度読んでいるはずですが、名作『ロイド老淑女』以外はあまり印象になかったので今回かえって新鮮でした。
読みながら、笑った、笑った!どの作品も悲喜こもごも、笑っているうちに、いつの間にか涙が出ていたりして。
『ロイド老淑女』や『めいめい自分の言葉で』は、モンゴメリ自身も晩年に読み返して感動して泣いてしまったそうです!

古い村岡花子訳の新潮文庫。これでも2代目で、子どもの頃から持っている大事な初代は日本の実家に置いてあります。20年前アイルランドに来る時に「アン」仲間のおひとりが「海外に持っていく用」としてシリーズ全巻プレゼントしてくれたもの。読みながら飲み物でもこぼしたのでしょうか、表紙がぶよぶよ(笑)。
今回読んでみて、登場人物について発見したこと。
① 『ショウ老人の娘』に出てくるブリュエット夫人は、『赤毛のアン』でアンを引き取ろうとスペンサーさんちにやって来た、あのブリュエットさんだ!アンが「錐(きり)のよう」と言った人(笑)
② 『オリビア叔母さんの求婚者』のオリビア叔母さんは、『アンの愛情』でリンドさんちの庭の(トマスが好きだった)ジューン・リリーを全部引っこ抜いちゃった人。(リンドさんちを購入したのが未来の夫マクファーソンさんなので)
③ 『隔離された家』の主人公、ピーターと呼ばれるのが嫌なマクファーソンさん(上記と別人)は、『アンの青春』でデイビーの日曜学校の先生でした!
そのほか、カーモディのブレアさんは常連。そして、スローンさんがあちこち出てくるけど、ぎょろ目のチャーリー・スローンの親戚なのかな。
…なんて、アンおたく度を炸裂させて読みふけり、それを「腹心のともの‘むれ’」(新潮文庫あとがきでの村岡さんのことば)と分かち合う喜び!ああ、楽しく幸せなひとときでした。
アイルランド・ネタは本作品には特に見当たらなかったのですが、あえて言えば『ショウ老人の娘』のショウ(Shaw)さんは、その名からアイルランド系でしょうか。
この話もお気に入りのひとつで、ショウさんの幸福論に激しく同感。(日本語は村岡花子訳)
…(ショウ老人は)幸福というものは見つけたときに刈りとらねばならぬということ―その場所に印をつけておいて、もっとつごうのよいときに取りにもどってもむだだ、そのときにはもうないのだから、という貴重な秘密を心得ていた。
He had learned the rare secret that you must take happiness when you find it—that there is no use in marking the place and coming back to it at a more convenient season, because it will not be there then. 次回は来月末、ついに…『赤毛のアン』です!
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